英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

オープンエアが気持ちいい季節に

2007-03-30 | イギリス

すっかり暖かくなって、暑いぐらいの毎日です。オフィスではいきなり冷房を入れる始末。日本はいつからか夏と冬だけの季節になっちゃったようです。
ともかく気候が良くなると外に出たくなりますね。
ロンドンには大きくて奇麗な公園がいっぱい。ハイドパークにケンジントンガーデンズ、グリーンパークにセントジェームズパーク、リージェントパークにホランドパーク・・・・・。この季節、手入れされた花たちも魅力です。太陽が出て、空が澄み渡るとロンドンっ子たちは我先に日向ぼっこに出向きます。オフィス街でもちょっとした芝生を見つけては寝転ぶ人たち・・。かつて長谷川如是閑が「公園に転がる無数の死体」と評した光景がいたるところで見られます。



公園を散策する時は「木の実」をお忘れなく。木立の中で胡桃やピーナツなんかを手にしていると、どこからか小さな視線を感じるはずです。そのまま知らんぷりをしていると、小さな彼らがやってきます。最初は離れた所に投げた木の実を受取りすぐに木の上に駆け戻りますが、そのうち警戒心が解けると手から直接受取ってくれますよ。ただし、塩の付いたものは止めたほうがいいでしょうね。血圧に悪いから。

イタリア語でしゃべらナイト

2007-03-26 | イギリス
ジョン・グリシャム「大統領特赦」

外国語を短期間でマスターする方法って・・・・あるのでしょうか?有名なのは、トロイの遺跡を発見したシュリーマンの勉強法。ネイティブを雇い入れひたすら会話するというもの。ただ彼には、金持ちになって遺跡を発掘したいという尋常でない「情熱」があり、これでかなりの言語をものにしたのです。
本書の主人公バックマンはワシントンで凄腕ロビイストとして鳴らした人物。彼も突然イタリア語の習得が必要となり、イタリアへ行くことに。ネイティブの教師を雇っての勉強三昧なのですが、ちょっと普通の語学留学とはちがいます。毎日の食事は土地の有名レストラン(毎回違うレストラン)に連れていってもらい、お代はタダ。イタリア人の先生の報酬もタダ。費用を負担するズポンサーは「CIA」。つまり国費留学ってわけ。で、イタリア語を勉強する理由が、「命を狙われている」ってこと。風光明媚な街に暮らし、美味しい食事を楽しみ、魅力的な先生に習い、世界中の名うての暗殺者が命を狙って来る・・・。これで上達しないわけがない。
前半はまさにイタリア語初級講座とボローニャの街のグルメと観光ガイドブック。後半突然走り出し、ノンストップでエンディング・・・ってお話ですかね。
随所に「なんでよ?」がいっぱいのストーリーですが、グリシャムの面白さは出ています。でも法廷物がやっぱりいいよね。

ロンドンが舞台としてほんのちょっと数ページ出てきます。ある男がCIAに頭を轢き潰されちゃうってだけですが。

ハゲタカのエンディング

2007-03-19 | イギリス

最近ちょっとはまっているのが、NHKでやっているちょっと骨太な経済ドラマ「ハゲタカ」。
エンディングの曲が妙に耳に残るのです。誰の音楽なんだろうと目を凝らして見てみると・・・・。作詞・・・「エミリ・ブロンテ」・・と書いてある。「まーた大それた芸名つけちゃって、どこの若造かいな?」、でもやっぱり気になる・・・。ってことでNHKのHPを覗いて見ると・・・・、ありゃー、ご本人でした。「エミリ・ブロンテ」さんでした。1841年、23歳の時に作った詩「Riches I hold in light esteem」なんだそうです。壮大な曲想と印象的な映像と相まってドラマのエンディングをうまく演出しています。


ドラマのHP→

St Patrick's Day

2007-03-16 | イギリス
明日はアイルランドにキリスト教を布教した聖人パトリックを記念した日。世界中のアイリッシュがパレードでお祝いをします。パレードの始まりはNYだそうですが、日本でも表参道をはじめ各地でやるみたい。
私も01年、たまたま上京していた表参道でこのパレードを見物しました。スポンサーのギネスが振舞うスタウトを飲みながら、アイリッシュの女の子にシャムロックのワッペンを胸につけてもらっての見物でした(パレードは緑色の物を身につけることがキマリ)。その次の日、なんと私は自宅の前で段差2センチに足をとられ足首を骨折するはめに・・・・。痛かったなあ! ポキッ!って音がしたもんな。そのままエレベータのないマンションを4Fまで呻きながら上がって・・・・・。その日から4週間のギブス生活でした。今でもこの日が来ると左足が疼きます。

会社のすぐ裏にアイリッシュパブがあります。ケルト音楽を聴きながら生ギネスが飲めます。あー、のどが渇いて来ました。ギネスが飲みたくなって来ました。仕事なんてやってられるか!
おーい!みんなギネス飲みにいかなーい!緑色の物持って・・・。


日本でのパレードは→

ラストブック(ドラゴンも出るよ)

2007-03-13 | イギリス

マシュー・スケルトン「エンデュミオン・スプリング」

過去、現在、未来の全ての知識が収められた「最後の書(ラストブック)」をめぐる物語。その本を手に入れれば世界を征服することが可能になるという。
15世紀末マインツの街、グーテンベルクの印刷工房に恐ろしい装飾がされたチェストが持ち込まれる。その中には、摩訶不思議な紙が入っていた・・・。現代のオックスフォード、少年ブレークはセントジェローム学寮の図書館で突然本に噛み付かれる。その本を開いて見ると・・・何も書かれていない・・・いやブレークにしか見えない文字が・・・・。
ブレークは妹とともに本の謎を解き明かすことに。
クライマックスはボドリアン図書館地下書庫。何キロも続く迷宮のような書棚を抜けてブレークは何にたどり着くのか。(ちょっと「薔薇の名前」を思い出したり・・)
引き裂かれたものが一つになろうとする力と、微妙な関係にあるブレークの両親なんかが絡み合っちゃうんですけど、最後はちょっとあっけない。これでは単に稀覯本の蒐集のために異常な行動をとる学者の話になってしまうのでは・・・。せっかく世界を征服できる本だったら、ちょっと使ってみても・・・。それは次回作ってことでしょうか。うーん、「指輪物語」の展開になってしまうのか?

グーテンベルクが後世に残した功績、それは金属活字の発明と刷りに適した油性インキの開発、そして均一に圧がかかる印刷機を作り上げたことなんですが、何よりも最初に「聖書」をその技術で印刷したということが大きいと思います。それまでの写本を凌ぐ美しさで聖書を作り上げたことで教会や金持ちの指示を得ることができ、それゆえ今でもその一部(50部足らず)が現存するということが可能となったのでしょう。

初めに、ことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった


ボドリアン図書館はオックスフォード観光の目玉でもあります。
作中出てくるボドリアン図書館のショップのHP


ウォレス・コレクション

2007-03-07 | イギリス

「ゴッホは欺く」は貴族の美術コレクションをめぐるサスペンスでしたが、その貴族のコレクションがどのくらい凄いかを体験できる美術館がロンドンにあります。ショッピングゾーンとして有名なオックスフォードストリートの北側、巨大百貨店セルフリッジの裏手にあたる閑静な地区にある「ウォレス・コレクション」がそれ。サー・リチャード・ウォレスの個人コレクションを、氏の死後未亡人が遺言によって国に寄贈したというもの。館がそのまま国立の美術館として運営されています。だから入場料は無料。ナショナルギャラリーやテートと違ってこぢんまりしていますので、隅々まで堪能することができます。こぢんまりしていると言ってもコレクションは膨大なもの。18世紀フランス絵画が中心ですが、陶磁器、甲冑、武器、装飾品など多岐に渡っています。絵画ではルーベンスやベラスケス、レンブラント、そしてフラゴナールの「ぶらんこ」などを観ることができます。この「ぶらんこ」っていう主題、実はけっこうエッチなんですね。でもフラゴナールの絵はそのことを感じさせない素晴らしさがあります。
建物自体もなかなか立派。エントランスホールの正面にある階段などは、今でも着飾った貴婦人が降りてきそうな感じです。一番奥の部屋はこれまた広い。夜な夜な大きなパーティーが開かれたのでしょうか。家具や調度品がそのまま残されてる部屋もあり、かつての上流階級の場所に浸ることができます。
一方こんな場面も。私たちが行った時はちょうど地元小学生のグループが見学に来ていたのですが、彼らに説明するガイドがなかなか愉快なのです。ある絵画を1人のガイドが説明している時に、その絵に描かれた人物と同じ格好をした別のガイドが隣の部屋から飛び込んで皆を驚かしたりと(もちろん一般の我々もびっくりしちゃうのですが)けっこう芸が細かく退屈などさせません。
限られた日程でロンドンを訪問すると、どうしても大きな博物館、美術館から足を運んでしまいこういった小さな美術館は時間切れ・・・ってなりがちですが、是非ここは計画に入れられて損はない場所かと思います。なんたって空いています。

オフィシャルサイトは→


マイルが貯まるサスペンス

2007-03-06 | イギリス

ジェフリー・アーチャー「ゴッホは欺く」



アーチャー久々のサスペンス物です。今回のお題はゴッホの自画像。
登場人物は・・・・、サザビーズを解雇され今は銀行で美術コンサルタントを務めるアンナ、その彼女を監視下に置くFBI特別捜査官、印象派コレクションを持つ金持ちに不当な債務を押し付け、担保として絵画を巻き上げる悪徳銀行家フェンストン、そして独裁国家の暗い影を引きずる殺し屋・・・。
事件はイギリス、ナポレオン戦争以後爵位を継承している貴族の館で女性当主が首を掻き切られて殺される場面から始まります。日を同じくしてNY、ワールドトレードセンタービルでは、アンナがフェンストンから突然首を言い渡され、その直後・・・ボストン発アメリカン航空11便がノースタワーに激突する・・・。そこからノンストップでスリリングな追いかけっこが始まります。
いやー、移動距離が半端じゃありません。
NY→カナダ→ロンドン→※■△●〒→香港→東京→※■△●〒→ロンドン→NY→ロンドン
マイレージサービスのマイルがどんどん貯まります。時差ぼけにもなりそうです。
本当に面白くその日の内に読了したのですが・・・・・
ノースタワーからの脱出場面、リアルに描かれており前半部分を引き締めているのですが、その後が、何か重みが少し足りないような・・・。お酒で言えば、ちょっと端麗すぎなんですね。もう少し絵画コレクターに関するドロドロした話とか、某独裁者政権時代の蜂起の話とかの密度が増すと作品の「コク」がもっと出たのかもしれません。それと有力絵画コレクターとして出てくる日本の鉄鋼会社の社長さん、ちょっと格好良すぎじゃないでしょうか。こんな経営者っていないでしょう。

いずれにせよ「お帰りなさい!アーチャー!」です。

「黒丸」って何?

2007-03-05 | イギリス
ロバート・ルイス・スティーヴンソン
「宝島」

子供時代の本棚に確かあった(福音館版)はずなのですが、読んだ記憶がありません。どうも冒頭で挫折していたようです。
少年ジムとその母親が営む宿屋「ベンボー提督亭」の場面がけっこう長く続き、子供ながらに退屈したのでしょうか・・・。
ジムが宝島の地図を手に入れる経緯が書かれたこの前半と、実際に宝島で「宝」を手に入れる話が書かれた後半と大きく2つの場面で物語は構成されています。最初から「宝」を狙い、昔の仲間と乗組員として船に乗り込んだ海賊シルヴァー。片脚でありながら松葉杖を屈指して健常者以上に飛び回ることが出来、残忍さの中にもジェントルな素顔を併せ持つ彼のキャラクターが何よりも魅力となっています。そしてジムの八面六臂の活躍!
戦闘場面はけっこうリアルかつ残酷に描かれており、大人の鑑賞にも堪ええます。
「宝」があっさりと発見されるのがちょっと拍子抜けですが、児童文学の「古典」として押さえとく必要があるでしょう。
ジョン・フォード監督の映画「わが谷は緑なりき」で、末っ子ヒューの本棚にこの「宝島」が置かれていましたね。