「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」
原題は「The Iron Lady」
「~の涙」なんて副題は不要に思うのだが・・・。
認知庄を患い、行動を監視されるマーガレット・サッチャー。夫デニス氏の死もいまだに受け入れられずに過ごす日々。時折思い出すのは、あのダウニング街10番地での生活。
食料品屋の娘として生まれたことによるコンプレックスをばねに、オックスフォードで化学を専攻。保守党議員として政界進出し、旧態依然の男社会の中で頭角を現していく。国民の支持を失った保守党を変えるべく打って出た党首選挙。そしてイギリス発の女性首相に上り詰める。彼女の主張は明確だ。2本足で立てる者は立ち上がりなさい!仕事が出来る者は働きなさい!弱者を切り捨てるかの言動に周囲も国民も慄然とするのだが・・・。彼女を救ったのはフォークランド紛争。軍事的なメリットがないと戦争回避を勧める合衆国国務大臣に対し、彼女は言い放つ。日本が真珠湾を奇襲した時、米国はハワイを見放したのか!人命に代えてでも英国領土を守らなければならないと主張し続け、多大な犠牲を払って勝利に導くのだ。彼女の支持率は急上昇。70%を越えることに。しかし、彼女のカリスマ度が増すたびに、周囲は次第に彼女と距離を取るようになるのだ。
私が初めてロンドンを訪れた時、ちょうど彼女が首相となって10周年の時であった。その日(5月4日)のテレビはどれも特集番組で、そっくりさんが登場したり、マペット版サッチャーが登場したりと大騒ぎだった。彼女の陰で時に愚鈍な亭主として描かれるデニス氏であるが、彼女の一番の理解者であり、支持者であったのは言うまでもない。
デニス氏にプロポーズされたマーガレットは応える。私は茶碗を洗って終わる人生をおくるつもりはない。それでもいいのか?
デニス氏の死を受け入れたのか、彼の遺品を整理したマーガレット。近所の子どもたちの声が聞こえる午後、彼女は一人お茶を飲む。そして静かに茶碗を洗うのだった。
サッチャーが行った政治がどうだったか?についての掘り下げは一切無し。ひたすらメリル・ストリープの演技力(特に声)とメイクに力点を置いた作品でした。
サッチャーの80年代。海を渡ってフランスの大統領はミッテランだった。アメリカではレーガンだ。強い指導者の時代だった。