F.W.クロフツ「樽」
1920年の作品。
ロンドン、テムズ河の港に大きな樽が一つ荷揚げされる。その樽からは大量のソヴリン金貨と女性の死体と思しきものが・・・・。荷が出されたのはパリ。その樽が何処かに消え去る・・・・。
物語は大きく3部に分かれています。第1部は樽とそれを受取る謎の人物の登場。そして消えた樽の回収。第2部はスコットランド・ヤードの警部とパリ警視庁の警部による合同捜査。そして容疑者の逮捕。第3部は容疑者の弁護士と彼の調査を手伝う私立探偵による真犯人探し。
登場人物の心理描写や性格描写、個々のエピソード関連を完全なまでに排除した進行の中で最初から最後まで緊張感を保ちながら事件に向き合えます。
当時のロンドン、パリ間の交通体系の状況もよく理解でき、完璧なまでのアリバイ工作が後半徐々に崩されていく過程が見ものです。