英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

紳士になるとは・・・・

2012-01-30 | イギリス

 

チャールズ・ディケンズ「大いなる遺産」

1860~61年にかけて発表された「大いなる遺産」。この時代になると貴族階級の凋落と相まって、身分無き平民がある日突然地位を手に入れてしまうといったストーリーが、まんざら絵空事では無くなってきます。法曹関係者や医者、教師といったプロフェッシュナルな職業人たちや、銀行や新興の工場で管理業務に就く者たち・・・が、新しいミドルクラスを形作っていき、下層にいる者たちも一攫千金を夢見て新大陸に渡ったりと、上昇志向が社会の中にうごめく事に。
さて、謎の人物から莫大な遺産を贈られることとなった主人公のピップは、紳士となるべくロンドンに旅立つのですが・・・。この紳士という概念、何度調べてみてもしっくりこないんです。身分、風貌、所作、アクセント、教養、趣味、財産・・・、イギリス庶民にとって何をもって紳士と言うのか・・・、うーん難しい。カズオ・イシグロの「日の名残」で執事のスティーブンスが旅の途中、紳士と間違われて否定しないという場面がありましたね。(次の日、ばれてしまうのですが) 
ディケンズらしい濃いキャラもたくさん登場しますが、私が気に入ったのは、ジョン・ウェミック。弁護士ジャガーズの事務所で働く事務員であるが、きわめてON・OFFのはっきりした人物なんだな。昼間冷徹かつ、しゃかりきに働き、定時過ぎれば一転良き家庭人となり、ピップの味方となってくれるんです。

 

 


このミス3位ですが・・

2012-01-27 | イギリス

 

 皆川博子「開かせていただき光栄です」

 

18世紀のロンドン、外科医ダニエルが教える解剖教室を舞台に繰り広げられる死体ゴロゴロサスペンス。
筋も良く練られているし、当時のロンドンの情景も上手く描かれている。スコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)の前身たるボウ・ストリート・ランナーズの存在などが興味深い。そして何より読みやすい。でも、何か違和感が・・・・。
どう言ったらいいのかなあ・・・、どうしても登場人物が金髪の鬘を被った日本人に見えて仕方が無いし、それぞれが順番にきちんと大声で台詞を言っているというか・・・、そう、演劇を観ている感じなのです。だから、分かりやすいし、スピーディーで面白いのですが・・。

 

 

 

 


ダルジール警視のデビュー

2012-01-19 | イギリス

高校時代、ちょっとだけラグビーをやっていた。
新入生を勧誘する手作りポスターの写真が妙にかっこよかったのだ。
初めて練習を見学に行くと決めた放課後、
たまたま私の後ろの席にいたMくんに「部活どこに入る?」と聞いてみた。
「弓道部にしようかと・・・」
「そっか、俺はラグビー部を今から見に行くんよ」
「ラグビー部!?、へー、俺もちょっと付いて行こうかな・・」
と、いう流れでグラウンドで見学していると、
Mくんの目が真剣になって来て・・・、
「俺、ここに入る!」
「えっ!弓道部って言ってたくせに・・」
その日、二人揃って入部・・・。
ポジションは、本当はバックス希望だったのだけど、既に満席ということで
フォワード、ロック候補ということに。Mくんも同じくロック候補だ。
練習は・・・・・、楽しかったな。
高く蹴り上げられたボールをキャッチしてのダッシュ・・・
一瞬自分が風になった気がした。
屈強なフロントローの太腿に頭を挟まれてのスクラム、
耳がいつまでもピリピリした。
セービングの特訓・・・・
左右の太腿上部には、いつもハンバーグのようなカサブタが出来ていた。

1年後、学業においてまったく落ちこぼれてしまった私は已む無く退部・・・
退部したからって成績が良くなる訳でもないのであるが・・・
Mくんは学業と部活をりっぱに両立し、東大に進学。
人生いろいろ男もいろいろなんですよ。

レジナルド・ヒル「社交好きの女」

ヒルの処女作です。ダルジール警視&パスコーシーリーズの第1作です。
事件の舞台はラクビークラブ。被害者はかつての天才スタンドオフとしてイングランド代表候補にもなったプレイヤーの奥さん。第一発見者となった旦那がまず容疑者として取調べを受けるのですが・・・。
ダルジール警視はかつてこのクラブのメンバー。知人だらけのクラブメンバーを調べていくうちに、いびつな人間関係が見え隠れしてくる。
それにしてもヒルの描く殺人現場はダルジールのお馬鹿ぶりに比べ、けっこうえぐい。今回も額を鈍器で潰されているといるという設定です。
ちょっと暗めな情景描写は発表年1970年の雰囲気なのか。