アラン・ベネット「やんごとなき読者」
原題は「The Uncommon Reader」
女王様が読書にはまったら?はたしていかなることに?というお話。
ある日、いつものように宮殿内で犬の散歩を行っていた女王は、厨房入り口に横付けされた移動図書館に遭遇します。話の成り行きから本を貸してもらうことになったのですが・・・・。
女王様が「読書」をする。こう聞いて別段不思議はないのですが、英国君主たるもの何事もバランスが大切なのです。つまりある一つのことに執心することは、例えそれが趣味の領域であっても王室運営の中で秩序を乱すこととなるのです。そう女王はすべてのものと均等な距離を置かなくてはならないのです。
公務そっちのけで「読書」の喜びに目覚めた女王に、まわりの御付の者たちはドギマギ。中にはアルツハイマーの兆候か!と心配する輩も。首相にいたっては、会うたびに「本」を勧められるものだから迷惑至極・・・。
お馴染みの作家たち、作品たちもたくさん登場!(もちろん知らない作家もぞろぞろ) 女王の普段の生活、国民との近しく会話する時間などなどが、抑制の効いたユーモアで語られていきます。主題はもちろん「読書」がもたらす「喜び」。女王自ら「本の前では誰もが平等」 と感じる場面が印象的です。
作者アラン・ベネットは映画にもなった「英国万歳」を書いた劇作家。
「読書」が皆からどうも歓迎されていない、と悟った女王が下した結論とは・・・。最後のオチもなかなかに良いです。
新井潤美さんの解説も背景を理解できるうえで楽しかった。何故、女王はオースティンの世界を楽しむことが出来ないか? イギリスの高貴な身分の方々は、どうして自分を知的には演出しないのか? こうやって見ると、あながちウッドハウスが描くおバカな高貴な人々も、まったくの虚構ではなく、リアルな存在として感じられますね。
たとえ、家に未読の本が大量にあったとしても・・・・この本は「買い!」です。