英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

用意周到冒頭注意

2007-11-26 | イギリス
クリストファー・プリースト
「双生児」


既に様々な書評が出てきている本書ですが、出来ることなら何の先入観も持たずに読んで欲しい小説です。舞台は第2次世界大戦前半のイギリス。時の首相は挙国一致内閣を率いるチャーチルです。大戦に先立つベルリンオリンピック。そしてそれらを眺める現代も。時代の証言としての手記、手紙、議事録等の第一次資料を読み解く形で進行する物語ですが、途中突然足元がぐらつく眩暈に似た読書体験が味わえます。様々な仕掛けが埋め込まれたこの作品、ジャンルの型に読み手が嵌めることなく自由に読み進めることで様々なラストを作り出せるのかもしれません。
巻末の大森望氏の解説は丁寧で読みこぼした謎を復習することができます。
余計なお世話ですが、ルドルフ・ヘスのエピソードに関しては事前に知っとかれた方がこの作品は楽しめるかと・・・。

ルドルフ・ヘス
ナチス副総統、1941年5月10日停戦講和のため単独スコットランドに飛来、イギリスは申し出を無視、ロンドン塔に幽閉、戦後ニュルンベルク裁判で有罪、終身刑、1987年服役中に自殺 
替玉説、暗殺説等ミステリーに満ちた生涯であった



読了後、表紙と裏表紙の絵を見比べると、再び不思議な感覚が味わえます。


ちょっと「日の名残り」も思い出しました。

紅葉狩り2007

2007-11-26 | 日常

3連休は良いお天気でした。金曜日、家では誰も日頃の勤労に感謝してくれないので、3時ごろから娘を誘って宮島にお散歩です。電車と船で気軽に世界遺産に行けるのが唯一我が家の立地の良さ。それにしても紅葉のピークとあってすごい人の数でした。対岸の宮島口周辺は車で大渋滞・・・・。毎年恒例ですが、観光バスもなかなか近づけない有様です。こういう日は広電かJRに限りますね。
島に渡る船は2社あります。広電系の松大汽船かJRの連絡船。料金はいっしょですが、それぞれにメリットがあります。松大汽船は広電とのセット1日乗車券が使えてお得ですし、最短距離で結んでいます。JR船は旧国鉄最後の連絡船で行きの航路が大鳥居の正面を通るという見せ場があります。
島に渡っても出たい人と入りたい人で大混雑です。焼牡蠣の店や人気の紅葉饅頭屋の前は長い列、列・・・。人を掻き分け掻き分けようやく紅葉谷に辿りつく状態でした。今年の紅葉はちょっと控えめで地味な印象。もう1週間は楽しめそうです。写真は・・・・、デジカメの中にメディアを入れ忘れて・・・撮れませんでした。
日曜日は更にポカポカ。お弁当持って岩国です。錦帯橋を渡って岩国城下一帯は公園として整備され紅葉の名所としても知られています。特に点在するイチョウの木がなかなかキレイでした。ロープウェーで城にも登り、観光気分も楽しんだ1日でした。

写真は岩国・吉香神社の銀杏↑と
岩国城天守閣から眺めた錦帯橋↓


ブレナム宮殿

2007-11-22 | イギリス

ブランディングズ城とは違いますが、貴族のお住まいとして有名なのが「ブレナム宮殿」。オックスフォード近郊、ウッドストックの外れにあるこの宮殿はウィンストン・チャーチルの生家としても知られており、世界遺産にも登録されています。
私達が訪れたのは2000年の春。バスツアーを使っての訪問でしたから長時間の滞在は叶いませんでしたが、そのスケールには圧倒されました。建物の裏に広がる花があふれる庭園も素敵なのですが、その向こうに広がる見渡す限りの風景の素晴らしさに感動します。静かな湖、そこに浮かぶ小島、なだらかに広がる丘陵、点在する林、草を食む羊達・・・・。それらはなんと全てが人工的に計画され作られたもの、造園家ケイパビリティ・ブラウンの手になる典型的な風形式庭園だと後で聞かされてまたまたびっくりしてしまいました。
桂離宮に代表される日本庭園が、限られた空間の中で自然を創造しようとする精神だとするならば、自然そのものに手を加えて理想的な自然を力ずくで再現しようとする発想自体に唖然としてしまいます。
飛行場がいくつも入りそうな庭を眺めて、少年チャーチルはどんな野望を廻らしていたのでしょうか。ちなみに彼は勉学は相当弱かったようですが。
事前に申し込めば湖でのフィッシングも体験できるとのこと、敷地内には現在遊園地もあり、家族で1日楽しめる施設となっています。

写真は裏から眺めた宮殿。庭に面してカフェもありアフタヌーンティーも楽しめます。

ブレナム・パレスのホームページ→

大荒れ!ブランディングズ城

2007-11-20 | イギリス

日曜日の夕方、いつもの様に「ちびまる子ちゃん」と「サザエさん」を何気なく観ていて、ふと気付きました。「携帯電話が出てこない・・・」
ちびまる子は昭和40年代後半の設定ですから当然ですが、サザエさんも磯野家の中は昭和のままの姿です。廊下に置いてある電話は、ダイヤル式の黒電話ですね。磯野家の家電品はスポンサーの関係上かつては明らかに東芝製のものが描かれてましたけど、最近の作品ではその辺も曖昧になっているように思われます。車もパソコンもFAXもない家庭、かたや6人家族と7人家族。時間を止めた2つの家族に我々は癒されながらも次の日からの憂鬱な週明けに向けて逃避場所を求めるのでしょうか?
時間が止まった逃避場所と言えば・・・・・・・
P・G・ウッドハウスの作品も私にとってはある意味逃げ場所。どっぷりスープに浸かった時にどっぷり読み浸ると、あらら奇跡の回復・・・・・なんですね。

P・G・ウッドハウス
「ブランディングズ城の夏の稲妻」

国書刊行会からの新しいウッドハウスシリーズはブランディングス城もの。
先発の文芸春秋刊「エムズワース卿の受難録」が短編集でしたが、こちらは待望の長編となっています。愛すべきエムズワース卿の城には毎度の如く様々なトラブルメーカー達がこれでもかと集っております。世の貴族社会を震撼させる暴露本を目下執筆中のギャリー伯父さんに、階級の壁を乗り越えて劇場のコーラスガールと恋に落ちてしまった甥っ子ロナルド・フィッシュ。そして城の秘書と密かに婚約中の姪っ子ミリセントに、女帝レディ・コンスタブル・キーブル・・・・・。これにかつて追い出された城に戻ろうと画策する前秘書バクスターが加わり、さらにチャンピオン豚エンプレスが行方不明になって、城は大騒動に!
城の中、ロンドンでもと騒動は拡大し続けるこのお話。雷鳴とどろく夜に明かされる事実とは・・・。そしてエムズワース卿の下した決断?とは・・・・。
広大なブランディングズ城の庭園風景とコーラスガールのスー・ブラウンがとっても魅力的。そして破天荒なギャリー伯父さんもいい味をだしています。

文庫から出直しな!

2007-11-13 | イギリス
グレッグ・ルッカ「天使は容赦なく殺す」

原題は「A Gentlman's Game」
この手の表紙デザインってのは、これまでどちらかというと苦手だったんですけど、食わず嫌いはいけません。どこに至福の時が眠っているか分からないんですから・・・。ということでさっそく実食!です。 主人公は英国秘密情報局(Secret Intelligence Service、略称:SIS)の課長タラ・チェイスです。いわゆる「殺しのライセンス」を持つ女。
ロンドンの地下鉄で3ヶ所同時に起こったテロ。英国は即断で報復をタラに命ずる。9.11以降の微妙な国際バランスのハザマで暗躍する各国のインテリジェンス。これは新しいタイプの007か?期待が持てる!
・・・・・・・・・あら?ら? 物語はとってもスピーディーに展開!でも、なにか、文字が多い割りには何故か満たされないお腹・・・・。結局最後までこの印象が拭えないままに読了となりました。冷徹な殺しのテクニックと美貌を兼ね備えた主人公。その素性は今後のシリーズの中でもっと明らかになるのでしょうが、肝心のプロットが淡白というか・・・・。
パディントン駅を使った脱出作戦が良かっただけに残念です。
自爆テロを行う側の論理も今ひとつ説得力に欠けているように思えました。
読んでみてあらためて値段の高さに感じ入りました。

秋の寄鍋

2007-11-07 | イギリス

20世紀イギリス短篇選(下)

下巻は戦後発表作を中心とした構成。この時代となると様々な出自の作家が登場し、これまた様々な人生の断片を描いてくれています。
読み応えがあったのは「女だけの旅」。貨物船に旅客として乗り込んだ女2人組みのお話です。開放的でエキゾチックな船旅の途中での不器用な男女の駆け引きなんかがあったりして印象に残りました。ちょっと調べてきたら、貨物船には12人までなら旅客を乗せてもいいという規定があるそうです。専門に貨物船ツアーを扱うエージェンシーもあるみたい。
「蠅取紙」はちょっとぞっとする話。「欠損家庭」は現代のイライラ感を上手くあしらった作品。善意が悪意にすりかわるドライな出来事が描かれます。「再開」は別れた男女がとあるレストランで再開するしっとりとした作品。

「あいつらのジャズ」ジーン・リース
「確実な人生」ショーン・オフェイロン
「この四十年」ノーら・ロフツ
「レディだけの旅」オリヴィア・マニング
「届かない花束」ウィリアム・サンソン
「蝿取紙」エリザベス・テイラー
「豪華な置時計」ミュリエル・スパーク
「愛の習慣」ドリス・レッシング
「欠損家庭」ウィリアム・トレヴァー
「再会」マーガレット・ドラブル
「別れられる日」スーザン・ヒル

三瓶山の休日

2007-11-05 | 日常

先週末は家族で三瓶山に。北の原キャンプ場のケビンにお泊りです。2年前に一度利用したことのあるこのケビンは、設備も清潔で(特にトイレとお風呂)値段も手頃。2段ベットとロフトがあり、それだけで娘は大興奮。朝晩はさすがに冷えるのでテントサイトの利用者はまばらでしたが、それだけに静かな自然の中でのひと時が楽しめました。夜はもちろんバーベキュー。そういえば去年もこの時期寒いバーベキューをやってたような・・・。
次の日は北の原、姫逃池周辺を散策です。誰もいない朝の草原を歩いていくと、「ススキの迷路」という看板が・・・。一面に生えたススキの群生の中に小道を作って迷路にしたものだそうです。期間限定・無料の迷路です。初級コースと上級コースに分かれています。で、初級コースは楽々クリア。次は上級なのですが・・・・・・、かなりの面積がありそうです。看板にも基本20分程度と書いてあります。私が躊躇していると、娘が「行くよ!」の一声で中に飛び込んでしまいます。上級コースはススキの背も高く、だんだん方向感覚も無くなってきます。所々にある松の木が違うはずなのに同じに見えたり、何度も後戻りしたりしていると娘の顔が真剣になり、だんだん緊張して来ているようです。「もし、このまま出られなかったらどうする?」「うぇーん!」てなことを言いながら歩いていると、突然ゴールに出ました。時間は18分でした。ちなみに後から付いて来ていた家内は初級コースの中で遭難していました。5分後無事救出。



と、時計を見ると、時間は11時をまわっています。実は今回の三瓶詣でには別の目的がありました。それは「蕎麦」を食べること。三瓶自然館サヒメルの裏口前、フィールドセンターの中に間借りしているお店「はないかだ」がその目的の蕎麦屋です。2年前にたまたま訪れて食した蕎麦が本当に美味しくて以来行く機会を狙っていました。4月から11月の土日祝の昼のみの営業で、メニューは「ざる」(650円)と、とろろ(750円)の2種類だけといたってシンプル。でも挽きたて打ち立ての蕎麦が味わえます。細切り蕎麦の1本1本が艶々としており、喉越しの良さが格別です。今回も丁寧に蕎麦を出されているなあと感心しました。娘もここを憶えており、「おいしいおそばやさん」との格付けを与えています。
食後は車で移動して西の原へ。ここは三瓶エリアで一番開けた空間で、高原に来た!という実感が湧く所です。人も多く、皆、太陽の皆お弁当を広げて楽しんでいます。ここで娘は馬に乗りました。(800円) 観光地の馬って、ちょっと不潔だったりぼったくりだったりしますが、ここの馬は身ぎれいで、おじさんも親切でした。まあ、娘はずーっと乗ってられると思ったらしく、「短すぎー・・」と不満を漏らしてはいましたが・・・・。



お次はぐるっとまわって東の原へ。ここには三瓶スキー場があります。シーズオフの今は観光用にリフトだけが営業しています。これに乗って三瓶連山のひとつ太平山の展望所へ登りました。ここからは外を向けば中国連山が一望出来ますし、内を向けば男三瓶、女三瓶・・とかつての巨大火山の名残りが雄大に目の前に広がります。ここまで来ると麓ではまだまだだった紅葉もちょうど見頃となっていました。
家に帰れば、さすがにお疲れ・・・。久しぶりに「遊んだ!」休日でした。