ジョー・ウォルトン「暗殺のハムレット」
「英雄たちの朝」のラストから数ヶ月後のロンドン。大きな権力に屈することを余儀なくされた刑事カーマイケルは、ハムステッドの住宅街で起きた爆発事件を担当することに。
一方、高貴なる家柄を捨て舞台女優としての成功を目指すヴォイオラにある配役のオファーが。それはシェークスピアのハムレット。従来の解釈を大きく変え、ハムレットを女優が演じるというその興行は、先の陰謀で首相となったノーマンビーとヒトラーを招いての舞台となることとなった。秘かに進行する暗殺計画。そして、時代の運命に翻弄される女優ヴォイオラと彼女の姉妹たち。前作の盛り上がりが決して弛緩することなく緊張感を保ちながら物語は進行。ヒトラー登場、そして舞台の開幕と相成ります。
だいたい3部作的な構成では、中間部分が概して退屈ずる傾向が多いですが、今回は良い意味で裏切られました。
個人的な秘密を上層部に握られ、権力に抗う選択肢を全て奪われたカーマイケルが、逆に権力に近づいて秘密警察(イギリス版ゲシュタポ)に参加する件も面白い。
劇場、演劇界の描写も細かく、ハムレットの演出も楽しめます。
シリーズ最終巻も読むべし!