P・G・ウッドハウス「エッグ氏、ビーン氏、クランペット氏」
1940年に出された同名短篇集にマリナー氏もの数篇をボーナストラックとして加えた編集となっています。
筋書きは、今さらながら強烈な新鮮さはありませんが、短篇故の小気味良い展開で有閑紳士達のドタバタ劇をストレス無く楽しませてくれます。今回のお楽しみは、バーティーの悪友としてジーヴスものに登場していたビンゴ氏の活躍?でしょうか。他のウッドハウス作品では珍しい妻帯者としての男の悲哀があわせて描かれます。悠々自適な生活であれど、奥さんに財布を握られて万年金欠なビンゴ氏。3度のメシより好きな賭け事の軍資金を調達するため、日夜奮闘努力を継続中です。
巻末にある、英国ウッドハウス協会初代会長の寄稿文「本当のドローンズ・クラブ」も面白かったです。社交の中心としての「クラブ」の意外な使われ方が笑ってしまいます。ウッドハウスの描くジェントルマンたちは、あながち虚構の人物たちではなかったのですね。
クラブと言えば、ホイッグ党急進派の拠点となった「リフォーム・クラブ」(増改築クラブじゃないですよ・・・)なんかが有名です。ベルヌの空想科学小説(このくうそうかがくしょうせつっていう言い方が好きです)「80日間世界一周」のお話は、このリフォーム・クラブでの賭け事からスタートするのです。