東京家族
これは小津作品の普遍性を確かめる実験映画だったのかもしれない。
想像していた以上に小津の「東京物語」を丁寧にトレースしている。医者を営む長男の家でのやりとり、長女のパーマ屋、・・・。台詞や場面設定は時に現代とのギャップを大いに感じさせるが、それは計算されてのことであろう。映画はそもそも作り物である。小津が描いたかつての東京も相当な作り物であったはず。
後半の島でのシーンは、ロケ地を知っている者としての期待値が高かっただけに、単に間借りしているだけに見えてしまった。ラスト近くの周吉が形見の時計を紀子に渡す場面、さすがに原節子の艶かしさと必死さを超えることは出来なかったが、それは誰も求めていないこと。島の学校の先生が自転車でこけてしまう・・・、山田監督らしさが少し見えてほっとした。
小津安二郎は「世界の小津」だ。そして、山田洋次監督は「日本の山田」になった。
それにしても観に来ている老いたおばさま連中のマナーがねえ・・・
お茶の間でテレビを観ているような感じで、いたるところでおしゃべりしている・・・
それが耳が遠いもんだから、ひそひそ声が大きくなっちゃって・・・。 回転焼きを席の前後で回しているし・・・、トイレが近い人も多いもんだから、後半となると席を中座する人が続いたり・・・。
観客席を今度は映画にしてみると面白いかも。
夜の観覧車を眺める場面で、周吉が映画「第三の男」を語る。彼らが観にいったという広島の東洋座は、八丁堀に約100年近くあった松竹系の映画館でした。この映画館も2008年に閉館しました。