チャイナ・ミエヴィル「都市と都市」
腰巻帯の「カズオ・イシグロ絶賛」に負けて購入。
不思議な世界観に頭がくらっとする。2つの都市国家「ベジェル」と「ウル・コーマ」は隣り合う位置関係にあるのだが、その国境は単純なものではない。それぞれがモザイク状に、織物の縦糸・横糸のように組み合わされた国境を形成してるのだ。完全に分離されたエリアもあるが、多くのクロスハッチされたエリアであれば、一つの通りを両国が日常的に共有している。かといって両国民が共存している訳ではない。ベジェル人はウル・コーマ人を、その車を、建物を見てはいけないのだ。その逆もしかり。両国民は生まれたときから隣国を「見ない」ことを徹底的に教育される。それを破ることは「ブリーチ」行為と見なされ、謎の絶対権力「ブリーチ」によって排除される。この恐怖が国境を維持しているのだ。
ベジェルで発見された女性の遺体。捜査を担当するボルルに遺体が隣国から運ばれたという情報が入る。これは「ブリーチ」なのか。そして次第に見え隠れする、もう一つの都市国家「オルティーニ」の伝説。ウル・コーマにある遺跡発掘現場には何が隠されているのか。
クロスハッチされた通りで、両国の行きかう車、人々が混ざり合う現実の中で、自国民しか「見ない」ということがあり得るのか? デジカメでその通りを撮影したらどうなるのか? あり得ない、あり得ない・・・・。 でも、「見ない」ということは、ひょっとして・・・。繰り返される宗教対立、カースト制などの階級制度、今も続く北朝鮮やシリアの現実なんかも・・・。
お話はすこぶるハードボイルド。
チャイナ・ミエヴィルはイギリスのファンタジー、SF作家
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