~聴覚障害6級~

話せる。歌える。
聞こえているけど聞き取りにくい。
感音性難聴者が適当に呟きます。

ロンドンオリンピックと佐々木あやみさん

2012年07月28日 | 雑記
今朝、生中継でロンドンオリンピックの開会式の一部をテレビで観ました。

各国の先頭に、パジャマ姿のイギリスの子ども達が着いていたんですが、
みんな補聴器を付けていることに気付きました。

私が観れなかった部分では、国家を歌うパジャマ姿の聴覚障害者の子ども達と、
世界的パッカーショニストの聴覚障害の女性が、ドラムを披露とのこと。

日本の文化との違いを感じましたね。


その件でツイッターを辿ってみた(調べてみた)ら、
中途失聴のろう者で、現在もNHK「ワンポイント手話」キャスターや、手話イベント団体「しゅわっとつばさ」代表代行を務める
佐々木あやみさんと言う方のところに辿り着きました。

佐々木さんのツイとブログをざっと拝見させていただいたところ、
私の普段思っている、感じていること、書きたかったことの全てが文章になっていて、今、感動中です。

佐々木あやみさんのブログ

これから、少しずつ紹介していきたいと思います。


今日は、佐々木さんの最近のツイで、思わずお気に入りに入れてしまったものを紹介します。

文章は、多少加工しておきます。

佐々木さんの色んなツイをまぜこぜに書きとめてあります。




聞こえない人がみんな手話ができるわけではありません。

実際のところ全聴覚障害者のうち、手話が使えるのは2~3割です。

ずっと聞こえていて突然聞こえなくなった人や、
子供の頃から聞こえなくても、普通学校で育ったため手話を知らない人も大勢います。

地域差が大きいですが、聞こえる人向けの手話講座は、入門から手話通訳者レベルまで充実しているけれど、
聴覚障害者向けの手話講座は、ほとんどが入門レベルまでで、
手話の分からない聴覚障害者が手話を本格的に学べる場所は少なかったり、地域によっては全くないこともあります。

ろう協会員でない聴覚障害者は手話サークルには入れないという地域もあるんです…。


自分の意志ではどうにもできない身体的なことについて叱責されたり体罰を受けたりっていう出来事は、
すごく些細なことでもかなりハッキリと記憶に残っている。

根に持ってるとか言うんじゃなくて、その時の悔しさと言うか理不尽さと言うか、そういう気持ち。


聞こえないのに推測で返事するのが悪い、と言うご指摘は至極正論ですが、
聞こえない・聞こえにくい人にとって「推測」は会話の1つのスキルです。

本当は推測などせず全部聞きたいけれど、
実生活では推測で補わないとコミュニケーションが成立しない状況がとても多いのです。

音声会話をする聴覚障害者の大多数に共通しているのは、
「音声だけで全部理解しているわけではない」ということです。

わずかに細切れに聞き取れる音、口形、表情、前後の話の流れなどから、
聞こえない部分を推測で補って埋めながら会話しているんです。

特に軽~中等度難聴の人の聞き間違いに「聞こえないなら分かったフリするな!」というのもよく聞くのですが、
あれは聞こえたフリをしているわけではないんです。

物凄く頑張って聞いたら本当にそう「聞こえた」んです。

どれだけ頑張っても、健聴者のように「ちゃんと、全部」は聞こえないんです。

本当は、一番ちゃんと理解したいのは聞こえない本人です。

でも、聞き返すたびに露骨に嫌な顔をされたり、筆談を頼むと「もういい」と言われたり…

そんなことを1日に何度も何度も繰り返してると心が折れて、
なんとか聞き返さずに終わらせたいと思う時もあるんです。

それをどうか、責めないでください。




まず、手話について。

以前、私もこのブログに手話に対しての気持ちを綴ったことがあります。→ココ

私が何故、手話を習わないのか。

覚えようとしないのか。

たぶん、健聴者には理解できないでしょう。

でも、中途で手話を習得している佐々木さんが代弁して下さいましたね。

私のような聴覚障害は、手話を本格的に学ぶ場所がないこと。

健聴者と対等には学べないこと。

ろう協会から排除されていること。

どこにも行き場がないんです。

無理に習わなくても、自分らしく快適な暮らしができればいいんじゃないかと。

場面場面で、少し不便なことはあるけれど、
障害があるからって、別に不幸ってわけではないんですから。


それから、聞き取りのことについて。

私の言いたいことの全てを代弁して下さってますね、佐々木さん。

正にその通りです。

聞くことに対して、本当に頑張っているんです。

それでも、聞き取れなかったり、聞き間違いをしたり。


そのへんのもっと詳しいことを、佐々木さんはブログに綴って下さっています。

文章は多少加工しておきます。




補聴器をつけて、声で会話をしている人のほとんどは、
実際には声だけで聴いて会話ができているわけではなく、
話の流れや口の動きを読み取って、頭をフル回転させながら話をしています。

正直、ものすごく疲れます。

聞こえる人から見れば、「少しでも聞こえるほうが良いだろう」と思うかもしれませんが、
私は難聴~失聴とたどってきて、「少しだけ聞こえる」という状態の時が、気分的には一番しんどかったです。

「まったく聞こえないわけじゃないんだから、頑張って聞き取らなきゃ」
という重圧を常に感じていた時が、一番しんどかった。

常に音を気にして、自分の耳鳴りにまで神経を尖らせ、「聴こえる存在」でいることに心を砕き、
それでもやっぱり聞こえなかったり聞き間違えたりして落ち込んで…。




私のしんどさを代弁してくれる人に出会えた感じで、感動しています。

そうです。

全く聞こえないわけじゃないから頑張らなきゃと言う重圧。

全く聞こえないわけじゃないんだからいいじゃない的な考え。

声だけで会話しているのではなく、頭をフル回転させて会話する。

疲れるわけです。



そして、私のような感音性難聴の聞こえ方についてのエントリーは、実に素晴らしい。




そもそも感音性難聴の場合、補聴器をつけても言葉の聞き取りはあまり改善しません。

中でも、中枢性難聴の場合は特に語音弁別が極端に悪いのが特徴で、
補聴器をつけてもほとんど聞き取りが改善しないことも多いです。

「補聴器なのになんでちゃんと聞こえないんだよ?」
という疑問については、こちらをご覧ください。→聴覚障害者の聞こえの可視化


健聴者の聞こえ方。




伝音性難聴者の聞こえ方。




感音性難聴者の聞こえ方。




感音性難聴者が補聴器を付けた時の聞こえ方。





感音性難聴は、音が小さくなるだけでなく、音を識別する機能が失われたり低下している状態です。

つまり、「か」という音が「か」ではなく「あ」に聞こえたり「く」に聞こえたり、
歪んでただのノイズにしか聞こえなかったりします。

水の中に潜って、外の音を聞いている状態に似ているとも言われます。

補聴器を付ければ大きくなりますが、音の歪みが矯正されるわけではなく、
また不要な騒音までもが増幅されるので、決してクリアに聞き取れるわけではありません。

ラジオの電波がものすごく悪い状態で、音量だけを上げて聞いている状態や、
カラオケのマイクがキィ~~ンとハウリングしている状態を想像すると分かりやすいかもしれません。


「聞こえない人に話しかけたら振り向いた。なんだ聞こえてるじゃないか」と言う方がいらっしゃいますが、
【聞こえる】と【聞き取れる】とはまったく別物です。




聞こえてないこと、聞き取れていないこと、手話ができないことなど、
普段、何となく人から責められているような疎外されているような気分になってしまうのが、
コミュニケーションにおける感音性難聴の特徴・特性だと思います。

佐々木さんの発する文章全てが、それを代弁して下さり、気持ちもわかって下さる。

佐々木さんのような素晴らしい方には、ファンが沢山ついていらっしゃるようなので、
佐々木さんとお知り合いになろうとは思いませんが、
一方的にファンとして、佐々木さんに着いていきたいと思いました。

まずは、NHKの佐々木さんの出演番組を観ることから始めよう(笑)。

NHKワンポイント手話→NHK-Eテレ 日曜夜7:25~7:30 レギュラー出演中。

ドラマの中の手話

2012年07月12日 | 雑記
春クールドラマ・フジ火10「37歳で医者になった僕」では、
すず役のミムラさんが、失語症と言う役柄のため、始終、手話で演じていました。

すずの恋人役の草なぎ剛さんや、研修医仲間役の水川あさみさんも、
すずとの会話ではところどころ手話を取れ入れていました。

すずは、聴力は普通ですが、声が出ない設定だったので、
手話が読み取れない人には、筆談での演技でした。

撮影中、その手話指導をしていたのは、「手話あいらんど」さん。

「医者僕」手話指導チーム

「手話あいらんど」さんの代表者なのかな、
手話通訳士・コーディネーターである南瑠霞(みなみるるか)さんのブログに、
撮影期間中、撮影のこと、台詞を手話で表現するその深い想いなどを、
いつも綴って下さっていました。

手話を使用する撮影の際は、健聴者で手話通訳士の南さん他、あいらんど所属の聾者の方とともに、
全ての撮影に同行していたそうです。

ドラマの撮影は、朝5時集合で深夜まで撮影と言うスケジュールで、
それこそ、寝る時間もないほどなので、かなりハードだったとか。

ドラマに関する南さんのエントリーは、「医者僕」のカテゴリーにまとめられています。→ココ

打ち上げにも参加させていただけたそうで、とても楽しい現場だったとか。


そして、今クールドラマ・テレビ朝日深夜「ボーイズ・オン・ザ・ラン」で、
「手話あいらんど」さんが手話指導をするとのことで、初回を観てみました。

「ボーイズ・オン・ザ・ラン」手話指導チーム

下ネタ満載の深夜ならではのコメディドラマで、どんなシーンで手話が登場するのかと思っていたら、
平愛梨さんが、話せるけど聞こえない役どころでした。

今のところ、健聴者側が筆談をしているシーンで、
それを平さんが話してコミュニケーションを取っていました。

平さん演じる役どころが、ボクシングジムのトレーナーでアクションばっちりのめっちゃ強い女性。

13歳の時に聴覚を失っているが中途失聴者のため、言葉はそれなりに流暢であると言う設定のもよう。


「医者僕」では、聞こえるけど話せない、
「ボーイズ~」では、話せるけど聞こえない。

つまり、私のような聴覚障害者は、「ボーイズ~」の方の方が、自分と重ねられるかもしれませんね。

話せるけど聞こえないって方が、聞こえるけど話せないよりも、
話せる分、元気に見えるな~と、ドラマを通して客観的に思います。

「医者僕」のすずは、本当に病気を患っている役だったこともありますが。

よくよく考えたら、私なんかは超健康体で、外見も元気そうで、
電話口でさえも「いつも元気だよねぇ」と必ず言われますからね。

言わなければ、障害者だと誰も思わないでしょう。

残っている聴力で、歌や音楽やドラマなど、まだまだ楽しめるのも幸いです。

若い頃やっていたギターやピアノも再開したいな~なんて漠然と考えています。

夏はコンサート、秋はミュージカルを観に行く予定です。

楽しみなことがある毎日は幸せですね。