どういう経緯でこの本を買ったのか忘れてしまった。
『蛇の形』という奇なるタイトルに惹かれたのか。
アマゾンの書評に乗せられたのか。
それとも、児玉清、一押しの作品だったからなのか。
いずれにせよ、私の好みからは大きくかけ離れていた。
まず、登場人物が多すぎる。
20年前のお近所さんたちと主人公のお友達関係。
いかにもとるに足らなそうな登場人物ばかりなので憶える気にならない。
それなのに、その多くが最後の最後まで筋書に大きく絡んでくる。
まあ、絡んでくるというよりも・・・なのだが(謎)。
そして、なによりも主人公が好きになれない。
主人公のしつこさに辟易する。
20年も前の一見どうでもよさそうな事件を永遠と追い続ける女主人公。
正義を貫くとはいえヘビのような女である。
あんたが一番異常だろうと思いたくなるくらいに執念深い。
当然ながらそんなネチネチとした582ページにも及ぶ追及劇など楽しめるはずがない。
と、いやいやながらも読み進めていくと、これが意外とよく出来ている。
正確には、意外と、ではなく、すこぶるよく出来ている。
最後まで好きにはなれないが、最後まで技量の高さに感服させられる。
この作家は単に技巧だけではなく、実際にも凄まじい饒舌家なのではないだろうか。
セリフの文章力が突き抜けている。
嫌味なほどに卓越している。
★★★☆