先日の釣りの帰り。
有料道路の料金所の数百メートル手前で娘に小銭箱を渡す。
こちゃまぜの小銭箱から必要な分の小銭を取ってもらう。
娘の渡す小銭を見もせず右手で受け取る。
そのまま握り締める。
料金所で車を止めると係りのおじさんに渡しかける。
手の感触で小銭の数が多いように感じる。
手を半開きにして中をのぞく。
銀色に光る小銭が三枚ある。
一枚多い。
料金は200円なのになぜに三枚?
二枚は50円硬貨なのか?
いや、違う。
小銭に穴が見当たらない。
私は手の平を下にして、料金所のおじさんに二枚だけを渡す。
手品みたいに一枚は手の中に残したままにする。
おじさんにはその一枚は見えていない。
私は正面を向いたまま、助手席の娘に押し殺した声で、
「300円やったろ」
という。
娘は無言。
かわりに料金所のおじさんが、優しく答える。
「200円でしたよ」
私は何事もなく車を走らせる。
数分後に理解する。
あのとき、料金所のおじさんには私の声がこう聞こえたはずだ。
◆
男が料金所の前で車を止める。
小銭を握り締めた手を差しだす。
手の平を下にして100円玉二枚を私の手の平に落とす。
不愛想に男はいう。
「300円やったろ」
多くやりすぎただろう、と因縁をつけてくる。
私はにこやかに答える。
「200円でしたよ」
男は車の前方を見たまま目を合わそうともしない。
こちらを無視したまま車を走らせる。
なんて無礼なやつなんだ。
◆
と、想像しながら運転していたら可笑しくて可笑しくて涙がでてきた。
私はそこまで無礼な人間ではないぞ。