時、うつろいやすく

日常のたわいもない話…
だったのが、最近は写真一色になりつつある。

「300円やったろ」

2013-06-07 00:15:21 | 釣り

先日の釣りの帰り。

有料道路の料金所の数百メートル手前で娘に小銭箱を渡す。

こちゃまぜの小銭箱から必要な分の小銭を取ってもらう。

娘の渡す小銭を見もせず右手で受け取る。

そのまま握り締める。

料金所で車を止めると係りのおじさんに渡しかける。

手の感触で小銭の数が多いように感じる。

手を半開きにして中をのぞく。

銀色に光る小銭が三枚ある。

一枚多い。

料金は200円なのになぜに三枚?

二枚は50円硬貨なのか?

いや、違う。

小銭に穴が見当たらない。

私は手の平を下にして、料金所のおじさんに二枚だけを渡す。

手品みたいに一枚は手の中に残したままにする。

おじさんにはその一枚は見えていない。

私は正面を向いたまま、助手席の娘に押し殺した声で、

「300円やったろ」

という。

娘は無言。

かわりに料金所のおじさんが、優しく答える。

「200円でしたよ」

私は何事もなく車を走らせる。

数分後に理解する。

あのとき、料金所のおじさんには私の声がこう聞こえたはずだ。

                  ◆

男が料金所の前で車を止める。

小銭を握り締めた手を差しだす。

手の平を下にして100円玉二枚を私の手の平に落とす。

不愛想に男はいう。

「300円やったろ」

多くやりすぎただろう、と因縁をつけてくる。

私はにこやかに答える。

「200円でしたよ」

男は車の前方を見たまま目を合わそうともしない。

こちらを無視したまま車を走らせる。

なんて無礼なやつなんだ。

                   ◆

と、想像しながら運転していたら可笑しくて可笑しくて涙がでてきた。

私はそこまで無礼な人間ではないぞ。

 

コメント (2)
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