ロイヤルオペラ、ラ・トラヴィアータ(椿姫)。2009年6月18日、ロンドン、ロイヤルオペラにて。
Verdi: La Traviata
Renee Fleming: Violetta
Joseph Calleja: Alfredo Germont
Thomas Hampson: Giorgio Germont
Antonio Pappano: Conductor
ロイヤルオペラのラ・トラヴィアータ初日を観た。
帰宅後の今も、「Di Provenza il mar, il suol」が頭の中で流れ続けている。トーマス・ハンプソンは良かった。p(ピアノ)でも会場全体に通る声が羨ましい。端正な顔立ちも素敵。ジョセフ・カレヤもなかなか。一幕目の「乾杯の歌」がもう少し盛り上がればよかったけれど(この歌の最近の基準がパバロッティ、というのが災い?この曲だけを聴けば良いけれど、あんな「ぱんぱん」なアルフレッドはない)。彼は最後感激していたようだった。ルネ・フレミングも二幕目からどんどん調子を上げたように見えた。やはり初日の一幕目は緊張するものなのだろう。
全体的に、皆演技が達者だ。二幕目で父親がアルフレッドを突き倒すところなど、役者顔負けである。また、ヴィオレッタが椅子に倒れこむところも、思わず「あ、危ない」と声が出てしまいそうになる。ルネ・フレミングは、一幕目は少し品がなく(高級娼婦というのは品があるものと思うが、舞台を分かりやすく(結局娼婦なのよ、と)するにはこれでよいのかもしれない)、二幕目は貞淑そうで、三幕目になるとすっかり病人、と完全に役を体現していた。素晴らしい。
二幕目は、父親がヴィオレッタの屋敷を訪れ、ヴィオレッタを説得し、アルフレッドを説得し、夜会でアルフレッドがヴィオレッタに賭けで儲けたお金を投げつけ、そこへ父親が現れ、と盛り沢山だ。また、二幕目は字幕を読むと絶対に泣くので、今日は字幕は無視して音楽と演技に集中(イタリア語が分からなくて良かった)。斜め前の老紳士は二幕目から最後まで泣きっぱなし。いいけれど、洟をかむのは静かにね。
三幕目、死の間際に、アルフレッドと父親がヴィオレッタの元に駆けつける。死んでしまうのだから意味がない、と感じるか、愛する人に死を看取られて幸せ、と感じるかは見る人次第だろう。しかし、ヴィオレッタの幻覚を客席も共有しているのではないか-即ち、カーニバルの様子も、アルフレッドと父親がやってくるところも、実はヴィオレッタの死に際の幻覚で、実際はAnnina(女中)だけに見取られて亡くなったのでは?なんて考える私は相当現実主義者?