血液型診断といえば、性格占いを思い浮かべる人が多いだろう。しかし意外にも、血液型によってがんになりやすかったり、感染症にかかりにくかったりする傾向が研究によって分かってきた。将来的には血液型に合わせた健康法が出てくる可能性もある。
◇遺伝子が関係か
「A、B、AB型の人はO型に比べ、膵臓(すいぞう)がんになりやすい」。2009年、こんな衝撃的な論文を米国国立がん研究所が発表した。約10万人を8年間追跡調査したもので、膵臓がんのなりやすさはO型に比べ、B型は約1.7倍、AB型は約1.5倍、A型は約1.3倍だった。
その後、この論文を裏付ける研究が米国の別の研究機関やイタリア、中国の研究でも明らかになった。詳しい根拠は分かっていないが、血液型を決める遺伝子の働きが関係していると推測されている。
また、「O型は血栓症になりにくい」との報告もある。米ハーバード大医学部関連医療機関の「ダナ・ファーバー研究所」の発表(10年)によるとO型に比べ、A、B、AB型は静脈にできた血栓が肺動脈に詰まる肺塞栓(そくせん)症になるリスクが約1.5倍も高かった。
さらに、O型は感染症のマラリアに強いといわれる。マラリア患者が多い赤道付近の東南アジアや南米の地域の先住民にO型が多いのは、マラリアに打ち勝って生き延びてきたとみられるからだ。
一方で、O型は胃や腸など消化器系潰瘍(かいよう)には弱いという研究結果がスウェーデンなどから報告されている。
全般的に言えば、O型が有利といえそうだが、生まれ持った血液型を変えるわけにもいかない。何か予防策はあるのか。
世界中の文献を調べ、血液型と疾患に詳しい永田宏・長浜バイオ大学バイオサイエンス学部教授は「B型の人が膵臓がんになりやすいといっても、もともと膵臓がんは多くないので、あまり神経質になる必要はない」とする。その上で「血栓が生じやすいA型とB型の人で中性脂肪が高かったり、高血圧だったりした場合は、早めに生活習慣の改善を試みるといった程度の注意があればよいのでは」と話す。