連日様子見に行き自殺未遂発見 付き合い4年、相談相手
静岡市葵区の民家で先月22日夜、自ら命を絶とうと睡眠薬と酒を飲み、倒れていた70代の男性を、同区羽高の民生委員寺田雄司さん(72)が発見、男性は一命を取り留めた。悩みを抱えていた男性を気にかけ、連日様子を見に行っていたことが早期発見につながった。首都圏などで孤立死が相次ぐ中、地域の絆が男性を救った。
男性の生活に変化があったのは、3月中旬だった。同居していた女性とトラブルがあり、女性が出て行ってしまったという。
一人暮らしになった男性は、寺田さんに「寂しい」と、相談を持ちかけるようになり、酒量が増えた。「危ない」と感じた寺田さんは、毎日朝と夜に男性宅に足を運ぶようにした。
3月22日夜、寺田さんが男性宅を訪れると、普段、明かりがついている部屋が真っ暗だった。胸騒ぎを覚えた寺田さんは、1階のベランダを乗り越え、窓から室内をのぞくとあおむけに倒れている男性が見えた。窓には鍵がかかっておらず、室内に入ると、男性は意識もうろうとした状態だった。寺田さんが近くにいた人に救急車を呼ぶよう頼み、男性は一命を取り留めた。
寺田さんは「本当に良かった」と振り返るが、「熱心に相談や見回りをしても、孤独死や自殺を察知するのは難しい。毎回救える訳ではない」と語る。
寺田さんは、自治会の役員などを務めていたこともあって、8年前から同区の民生委員として、市から委託を受けて高齢者らの訪問や見守りをする活動をしており、現在は静岡市葵区麻機地区で約300世帯を受け持つ。救助された男性とは4年ほど前から付き合いもあり、普段から日常生活などについて相談を受けていたという。
少しでも多くの人の話を聞くために、寺田さんの手帳には訪問予定などがびっしりと並ぶ。聞いた内容や、訪問時の状況についてはファイルに記録し、次の訪問時に役立てている。
寺田さんは「今は隣に誰が住んでいるかもわからない時代。内向的になって悩みを抱え込んでしまう人も多い」とし、「地域や周囲の人で見守り合うことが大事」と力を込めた。
静岡中央署の山田真二副署長は「小さな変化に気付き、通報という適切な措置を取って頂いたことに感謝している」と話しており、同署は27日、寺田さんに感謝状を贈る予定だ。