2024年2月のブログです
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村上春樹さんの『はじめての文学 村上春樹』(2006・文藝春秋)を久しぶりに読む。
この、はじめての文学、シリーズ、日本のいろいろな作家さんが、自分の短編から子ども向けの短編を選んだシリーズで、よしもとばななさんや川上弘美さん、浅田次郎さん、などなど、じーじも大好きな作家さんが並ぶ。
そして、ふりがながいっぱい。
本書は、村上さんが選んだ自選集で、有名な「カンガルー日和」や「かえるくん、東京を救う」などが入っている。
もちろん、それらも堪能させてもらったが、今回、じーじの印象に残ったのは、「シドニーのグリーン・ストリート」と「沈黙」の二つ。
「シドニーのグリーン・ストリート」には、羊男と羊博士が出てきて、羊博士のハチャメチャぶりがすごい。
しかし、中身の一部には、とてもシリアスな考察も含まれていて、考えさせられる。
きっと、子どもたちは、すぐにはわからないかもしれないが、10年後くらいに、その大切さに気づくかもしれない。
「沈黙」は村上さん自身が解説で、とてもストレートな話で、自分の作品の中では特殊な色合いのもの、だが、個人的な色合いの持った作品なので、入れたという。
村上さんの小説の問題意識の一つだと思われる、現代社会における人間の無責任さとその怖さや破壊性などを描いている、とじーじには思われる。
読んでいると、現代を正直に生きることのたいへんさや困難さなどを考えさせられるが、少しの勇気や救いにも思い至って、よい作品と思う。
子どものための短編集ということで、楽しく読める作品が多いが、村上さん特有の暗い(?)作品やよく考えると怖い(?)作品もあり、子どもたちには大きな贈り物かもしれないし、おとなたちにも貴重な贈り物だ。
いい短編集が読めて、幸せな数日間だった。 (2024.2 記)