ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

樋口有介『魔女』2004・文春文庫-女性はみんな魔女なのです(?)

2024年11月22日 | 樋口有介さんを読む

 2018年のブログです

     *   

 またまた有介ワールドにひたってしまいました。

 樋口有介さんの『魔女』(2004・文春文庫)。

 久しぶりの再読です。

 女性はみんな魔女なのだ!という小説です(?)。

 まあ、半分は冗談ですが、半分は真実かもしれません(?)。

 女性は本当に怖いですよ。

 さて、本書、就職浪人中の青年と青年の元彼女の妹とのお話。

 元彼女の死因をめぐって、二人が活躍をします。

 彼女の妹というのが、不登校児なのですが、ある理由があってのことで、それがラストで判明します。

 元彼女は、付き合っていた人物によって、さまざまな印象を抱かせる複雑な性格で、このあたりは映画の「羅生門」を思い出させるような内容です。

 多重性人格と虐待、それも虐待とはまったく無関係のような人物が絡んでいたりしていて、質のいいミステリーが展開します。

 青年と元彼女の妹の淡いラブロマンスも素敵で、まさに有介ワールドが堪能できます。

 ミステリーの謎解きも面白い小説ですが、じーじにはそれよりも、青年の成長や温かさがこころに染み入りました。

 こういう青年時代を送りたかったな、というかすかな反省も伴ないます。

 とてもいい青春小説かもしれません。

 少しだけエッチな場面(?)もありますので、20歳以上の人に読んでもらいたい青春推理小説です。       (2018.11 記)

 

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樋口有介『雨の匂い』2007・中公文庫-おとなへの愛憎に冷静に対峙する青年を描く

2024年10月28日 | 樋口有介さんを読む

 2018年のブログです

     * 

 なにか面白そうな小説はないかな?と本棚を眺めていたら、隅っこのほうに樋口有介さんの『雨の匂い』(2007・中公文庫)があったので、再読しました。

 2007年の本で、読むのはかなりしばらくぶりなので、たぶん2回目です。

 当然(?)なかみもほとんど忘れていたのですが、読んでみるととてもおもしろく、2日で読んでしまいました。

 少し暗い小説なので、60歳を過ぎた今のじーじにはちょうどいい小説なのですが、11年前のじーじには少し暗すぎて、本箱の隅に置いたのかもしれません。

 暗い小説です。

 有介版『悪霊』かもしれません。

 主人公の男子大学生が、癌で入院中の父の看病と在宅療養中の祖父の介護をするという、それだけでも暗い設定ですが、しかし、主人公はそれを淡々とこなし、そういう中でも女友達らと淡々とつきあって、有介ワールドの青春物語が進行します。

 しかし、父親と別れた母親が登場をして、金を無心するあたりから物語は暗転してきます。

 母親だけでなく、バイト先のいいかげんなおとなやその他のいやなおとなも登場して、淡々と生きている主人公を脅かします。

 そして、物語は『悪霊』の世界に。

 もっとも、こういう暗さは、今の年取ったじーじにはなじみのある(?)世界で、違和感はありません。

 むしろ、こんな中にこそ、人生の真実はあるのだろうな、と思います。

 生と死、生きることの苦しさと辛さ、切なさ、そして、生きる意味、などなど、考えることや感じることはたくさんありそうです。

 ストーリーを追うだけでなく、余白に漂うものを丁寧に感じることに意味があるのかもしれません。

 今、この時、この年齢で、この小説を再読できてよかったな、と思います(主人公は男子大学生ですが、若い人はもう少し年を取ってから読んだほうがいいのかもしれません)。      (2018.10 記)

 

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樋口有介『風の日にララバイ』(新装版)2013・ハルキ文庫-柚木草平シリーズの「原点」の作品らしいです

2024年10月23日 | 樋口有介さんを読む

 2024年10月のブログです

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 樋口有介さんの『風の日にララバイ』(新装版・2013・ハルキ文庫)を久しぶりに読む。

 単行本は、文庫本の解説によると、樋口さんの3冊目に書かれた小説で、樋口さんの有名な柚木草平シリーズより早いが、出版社の都合で柚木草平シリーズより遅れて1990年に刊行され、柚木草平シリーズの「原点」というべき作品らしい。

 確かに、主人公は柚木草平を彷彿させる中年男子であるし、『風の日にララバイ』という題名も、口に出すと少し恥ずかしい気がするほど若々しいが(樋口さん、ごめんなさい)、内容はなかなか素敵だ。

 本の帯には、39歳、子連れ、バツイチ、無職、-ときどき探偵、とあるが、いい味を出している小説だ。

 あらすじは例によって書かないし、探偵小説なので書くのはルール違反と思うので遠慮するが、別れた奥さんが殺され、娘の名誉を守るために真相を探るくたびれた中年男子の物語、というところだ。

 相方に、柚木草平シリーズに出てくる小高直海という小生意気な女の子(直海ちゃん、ごめん)を思い出させる女子大生が登場するなど、樋口さんらしい物語でもある。

 あらすじはなんとなく記憶にあったような気がしたが、読んでみると、だいぶ違っていたし、小説の細かい描写がやはり樋口さんらしくとても素敵で、楽しく読ませてもらった。

 やはりうまい小説家だなあと思う。

 おとなの生きる辛さと哀しさと小さな喜びといったものと若者の元気さや無邪気さなどがうまく書けていると感心する。

 そういえば、小説家は時代を感じるカナリヤみたいな存在だ、と言われるが、ここでも同性愛が出てくる。

 柚木草平シリーズでは面会交流がテーマの一つになっているし、樋口さんは本当にカナリヤちゃんだったのかもしれない(?)。

 何回読んでも読みごたえのあるおとなの作家だなあと改めて思う。

 秋の日にいい時間を過ごさせてもらった。      (2024.10 記)

 

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樋口有介『八月の舟』1999・ハルキ文庫-高校男子のやるせなさ、切なさ、不安を描く

2024年09月25日 | 樋口有介さんを読む

 2021年8月のブログです

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 樋口有介さんの『八月の舟』(1999・ハルキ文庫)を久しぶりに読みました。

 何度か読んでいるのですが、感想文は初めて。

 高校生のやるせなさや切なさ、不安などが淡い恋と一緒にうまく描かれています。

 主人公は母子家庭で育つ男子高校生。

 高校生にしてはニヒルな人生観を持っていますが、好きな女の子にラブレターをうまく書けないでいて悩むという、高校生らしさ(?)もあります。

 例によってあらあすじはあえて書きませんが、不良の親友やその女友達、その周りの同級生やおとなたちとのやりとりが、軽妙でかつ少しだけ哀しいです。

 解説の諏訪来人さんが、樋口さんの小説は、世の中の人間はすべてが努力をしても成功するわけではないが、でも悪いことばかりでもないと励ましてくれる、と述べておられますが、うまい表現だと思います。

 ここには、努力をすれば必ず報われる、という安直な人生観を否定し、しかし、頑張ればそれなりのことはある、という実直な人生観があるようです。

 そして、かなわないことへの哀しみ、やりきれなさ、失望などが避けられないことも経験します。

 これらが、硬直な人生論でなく、すてきな物語として美しく語られるところが魅力です。

 文句なしに面白く、そして、少しだけ哀しい小説です。 

 暑い夏にも、清涼な読書ができて幸せです。      (2021.8 記)

 

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樋口有介『風少女』1993・文春文庫-本の帯に、さわやか青春ミステリー、とあります

2024年09月15日 | 樋口有介さんを読む

 2021年8月のブログです

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 またまた樋口有介さんを読んでしまいました。

 本棚の横に積んであった『風少女』(1993・文春文庫)。

 だいぶ前の本です。

 年寄りのじーじがご紹介するのは少し恥ずかしかったのですが、とても面白かったので、ついパソコンに向かってしまいました。

 このところ有介ワールドにはまってしまっていて、ずっと読んでいるのですが、さすがに感想文を書けるのは、限られます。

 おそらくは、単に面白いだけでなく、生きることの切なさや哀しみが感じられるからではないかと思うのですが、そういう分析はなかなか難しいです。

 主人公は男子大学生。

 あらすじは例によって詳しくは書きませんが、昔のガールフレンドが亡くなり、なぜかその妹と一緒に亡くなった事情や周辺をさぐることになります。

 若い人には若いなりの悩みや苦しみ、嫉妬やねたみが出てきて、なかなかたいへんです。

 そこのところを、ちょっとしたユーモラスな語り口で包み込む樋口さんの筆はとてもいいです。

 苦しい人生も、少しのユーモアの力で、なんとか進めそうな感じ。

 真面目一方ではなく、不真面目の力、遊びの力を感じます。

 このあたりの感じ、うまく伝えるのが難しいですが、よかったら読んでみてください。

 年取ったじーじでも、生きていることは悪くはないな、と思えるような、少しだけ元気をもらえる小説です。      (2021.8 記)

 

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樋口有介『少女の時間』2019・創元推理文庫-なぜか素敵な女子が大勢出てくる小説です

2024年08月01日 | 樋口有介さんを読む

 2019年のブログです

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 樋口有介さんの『少女の時間』(2019・創元推理文庫)を読みました。

 この本も旅先の旭川の本屋さんで買いました。

 久しぶりの有介ワールドです。

 そして、柚木草平シリーズの11冊目。

 あいかわらず、とても面白く、そして、少しもの哀しいです。

 樋口さんがめずらしく書いているあとがきに、重い内容だから、ユーもアを大切にしたい、とあるとおりですが、これは樋口さんのデビュー作から一貫している特徴だと思います。

 これこそが有介ワールドの真骨頂なのでしょう。

 今回もあらすじはあえて書きませんが、いろいろな人物が登場し、それぞれがとても魅力的です。

 そして、生きていることが少し哀しいです。

 美女も大勢登場しますが(?)、美女も美女なりに悩んでいます。

 また、面白くって、ところどころにユーモアが効いていますので、この本も電車の中で読むのは危険です。

 哀しくなったり、笑ったり、唸ったり、忙しい本です。

 旅先でも、いい本を読めて、幸せです。      (2019.7 記)

 

 

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樋口有介『遠い国からきた少年』2018・中公文庫-美人シングルマザーが社会の悪を暴く痛快小説です

2024年05月31日 | 樋口有介さんを読む

 2018年のブログです

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 樋口有介さんの『遠い国からきた少年』(2018・中公文庫)を読みました。

 またまた樋口有介さんの小説、このところ小説ばかり読んでいて、専門書はほとんどほったらかしで、反省の日々です。

 今回の小説は、弁護士事務所の美人シングルマザー調査員(本の帯には、美脚調査員とあります)が活躍をする推理小説。

 この美人シングルマザー調査員は、少女時代にある事件から女子少年院に入り、そこで産んだ息子を女手一つで育てているという設定。

 息子を食べさせるためなら汚い手も使いますが、生きていく哀しさを十分に知っているゆえに、辛い人生を生きている人の哀しみもわかる人物です。

 美人なのに、とにかく痛快、料理は息子のほうがうまいのですが、何かとお母さんぶって笑えます。

 ユーモアと哀しさで、世の中の悪に怒りまくります。

 怒りの対象はさまざまですが、たとえば、少女アイドルグループで金儲けをしているおとな、容赦がないです。

 さらには、アフリカの子どもたちを救う寄付金で儲けているおとな、こちらも容赦ないです。

 北朝鮮の脱北者の問題も絡んで、事件は複雑、かつ、哀しく、しかし、主人公は粘り強く、絡まった糸を解いていきます。

 おもしろいです。そして、痛快です。

 小説だなー、とは思いますが、読後感は悪くありません。

 ちなみに、文庫本の解説は奧田瑛二さん。

 型破りですが、楽しい文章を読ませてくれました。     (2018 記)

 

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樋口有介『11月そして12月』2009・中公文庫-カメラマン志望男子とマラソン女子との切ない恋愛物語です

2024年03月29日 | 樋口有介さんを読む

 2023年3月のブログです

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 またまた有介ワールドに浸ってしまった。

 樋口有介『11月そして12月』(2009・中公文庫)。

 マラソン女子とカメラマン志望の主人公の切ない恋愛物語。

 青春だなー。

 しかし、有介さんはうまいな、と思う。

 文章も物語も…。

 七十近いじーじが読んでしまうのだから、すごい。

 じーじもこんな恋愛をしてみたかったなあ、と思ってしまう。

 「きみに会ってから、毎日練習をしていた」

 「大人になることを?」

 どう?この会話。すごいでしょう?

 二人の出会いからしてとても素敵だが、それは読んでのお楽しみ。

 物語は、不倫をしていた姉の自殺未遂や父親の浮気発覚などで、家庭内のごたごたに巻き込まれる主人公と、将来を嘱望されていたのに人間関係からマラソンをやめてしまった女の子とのさり気ない恋愛を描く。

 もっとも、有介ワールドだから、深刻なテーマのわりに、雰囲気は暗くなく、姉や父親の困ったちゃんぶりは面白いし、主人公と女の子のつきあいはまどろっこしくて、ういういしくて、楽しい。

 読んでいて楽しいし、読後感もすがすがしい。

 まさに有介ワールドだ。

 いい時間をすごせて幸せな1週間だった。    (2023.3 記)

 

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樋口有介『横浜ではまだキスをしない』2018・ハルキ文庫-本の帯に「ザ・青春ミステリーの登場」とあります

2024年01月22日 | 樋口有介さんを読む

 2018年のブログです

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 樋口有介さんの『横浜ではまだキスをしない』(2018・ハルキ文庫)を読みました。

 すごーく面白かったです。

 久しぶりに有介ワールドを堪能しました。

 じーじは樋口有介さんの小説が大好きですが、世間的にはどうなのでしょう。

 じーじにとっては、村上春樹さんと先日ご紹介をした東直己さん、そして、樋口有介さんの3人が現代日本の小説作家のベスト3ではないかとひそかに思っています。

 3人とも文章がうまいですし、お話は一見、軽妙ですが、なかみはかなり深いです。

 その人間観察、表現、ストーリー、内包している物語、男女のありかた、などなどは、とても読んでいて小気味よい感じがします。

 さて、本書、久しぶりに樋口さんのデビュー作『ぼくと、ぼくらの夏』(第6回サントリーミステリー大賞読者賞受賞作)を思い出させるような男子高校生が主人公の青春推理小説です。

 樋口さんには柚木草平シリーズという私立探偵ものの小説があって、これもとても面白くて、いい小説シリーズですが、それにひけをとらないくらいの推理小説になっていて、あらすじはあえてご紹介しませんが、最後までどきどきしながら読み進められます。

 登場人物は、樋口さんお得意の、それぞれに魅力的な老若男女で、人間観察がなかなか深いです。

 何より読後感がすがすがしいです。

 生きることの哀しみがしみじみと胸にせまっていますが、しかし、生きることはやっぱりいいな、と思わせてくれる、いい小説です。

 若い人だけでなく、中年や老年の人生にややくだびれてきた人にもぜひおすすめの一冊です。  (2018 記)

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 2020年6月の追記です

 先日、息子がじーじの本棚から、樋口有介さんの本を何冊か持っていきました。

 息子もファンのようです。

 ちょっとだけ、うれしかったです。  (2020.6 記)

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 2021年夏の追記です

 最初の時に書き忘れたのですが、この小説の重要な登場人物(?)のひとりが幽霊と共存しているネコちゃんで、この彼女(?)がいい味を出しています。

 小説ですからね、許されますよね(?)。

 なかなか存在感のあるかわいいネコちゃんです。

 そういえば、樋口さんの『窓の外は向日葵の畑』(2010・文藝春秋)にも幼なじみのかわいい幽霊が出てきますね。

 樋口さんは若い女性だけでなく、幽霊もお好き(?)なのかもしれません。  (2021.8 記)

 

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