ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングやメールカウンセリングなどをやっています

河合隼雄『子どもと悪』1997・岩波書店-「いい子」が自立をするために必要な「悪」を考える

2024年12月31日 | 河合隼雄さんを読む

 たぶん2016年ころのブログです

     *   

 ユング派の河合隼雄さんの『子どもと悪』(1997・岩波書店)を再読しました。

 もう何回目になるでしょうか。

 1997年の本ですから、かれこれ20年くらい読んでいることになります。

 何回読んでも、いろいろと考えさせられる本ですし、河合さんの本の中でもじーじが大好きで重要な本の一冊だと思います。

 内容は、悪と創造、盗みの意味、暴力と攻撃性、うそと秘密、秘密と性、いじめ、子どもをとりまく悪、などなど。

 いずれも、子どもの成長や自立をめぐって、「悪」の大切さを考察しています。

 ここでいう「悪」とは、人間が自立をする際に、ギリシア神話の中で、神さまから「火」を盗んだことに象徴されるような意味での「悪」です。

 そして、それは、子どもが神さまならぬ親から自立をするときに必要なものを意味するようです。

 そういえばかつて「いい子」だった(?)じーじにも、いろいろと心当たりがあります(?)。

 河合さんは、「いい子」のさまざまな問題を指摘し、「いい子」が親や教師などにとっての「悪」を経験することで、本当に成長し、自立をすると述べます。

 そして、「悪」の重要性と、おとなが「悪」を排除せずに、それらを見守る大切さを説きます。

 なかなか難しいことですが、じいじになったじ-じにはとてもうなずける点です。

 おとなが子どもに、じぶんたちにとって「よい」ことだけを求めすぎると、弊害が大きいことは、ようやく世の中の人々もわかりかけてきたのではないかと思います。

 おとなが理解をもって、長い目で子どもたちのいろいろな試行錯誤をゆったりとした気持ちで見守っていけたらいいなと思います。        (2016?記) 

     *  

 2018年秋の追記です 

 子どもの自立、おとなの成熟には、「悪」の問題と同じくらいに「秘密」の問題も大切だと思われます。  

 このことは精神分析でも重要なテーマで、土居健郎さんや藤山直樹さんなどが魅力的なお考えを述べられています。

 いずれご紹介できればと思ってます。        (2018.10 記)

     *

 2022年秋の追記です

 精神分析の藤山直樹さんが『続・精神分析という営み』の中で、「秘密」と「はにかみ」について述べていて、おとなへの道を理解する参考になります。       (2022.10 記)

     *

 2024年のご挨拶です

 本年もたいへんお世話になりました。

 ありがとうございました。        (2024.12 記)



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河合隼雄・中沢新一『仏教が好き!』2003・朝日新聞社-仏教・科学・哲学を考える

2024年12月09日 | 河合隼雄さんを読む

 2015年のブログです

     *

 河合さんと中沢さんの仏教と臨床心理学に関する対談の本ですが,10年ぶりに再読しました。

 河合さんはユング心理学を基本に臨床心理学全般を深めたかたですが,晩年は仏教,特に,華厳経にも関心をもたれていたようです。

 本書はそんな時期の河合さんが宗教学者の中沢さんに仏教全般に関する講義をお願いし,それを臨床心理学の観点から深めたものと言えます。

 内容は多岐にわたりますが,西洋哲学と仏教,キリスト教と仏教,深層心理学と仏教,医学と仏教,科学と仏教などなど,どれもお二人の真摯な対話が続きます。

 10年前には読み落としていた点がいっぱいあり,とても刺激になりました。

 じーじもさらに謙虚になって,もっともっと勉強を深めなければならないと思いました。       (2015.6 記)

     *

 2021年6月の追記です

 久しぶりに再読をしました。

 読み返してみると、お二人の間ですごく深い内容が話されています。

 駄洒落好きだった河合さんが中沢さん相手にとても楽しそうに対談をされていますが、内容は深いです。

 今回もいろいろと学ぶところが多かったのですが、印象に残ったのが井筒俊彦さんの存在。

 一神教と仏教を貫く宗教のあり方とでもいうのでしょうか、宗教の本質について述べられているように思われました。

 井筒さんの本はじーじも好きで何冊かは読んでいますが、さらに読み返したほうがいいように感じました。

 新しい刺激をさらにもらえる、とてもいい本です。       (2021.6 記)

     *

 2023年3月の追記です

 数学教師からスタートし、軍国主義や精神主義への反発から、徹底的に科学性、合理性を追求された河合さんが、仏教に興味を持たれたことはとても面白いなあと思います。

 真の意味での宗教性に触れる何かを感じられたのかもしれません。       (2023.3 記)

 

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河合隼雄『私が語り伝えたかったこと』2014・河出書房新社-河合隼雄さんの「熱い」思いに学ぶ

2024年11月24日 | 河合隼雄さんを読む

 2014年のブログです

     *

 河合隼雄さんの最新刊『私が語り伝えたかったこと』(2014・河出書房新社)を読みました。

 河合さんの晩年のインタビューや講演,論文などを集めた一冊です。

 一言で感想を述べると,「熱い」です。

 静かに,穏やかに,また,いつものようにユーモラスに語っていらっしゃいますが,中身はとても「熱い」です。

 その「熱さ」は熱いことで有名な山中康裕さんよりも「熱い」かもしれません(山中さん,すみません)。

 もっとも,河合さんは若い時から熱かったと思います。

 それでないとあんなに臨床心理学に命を懸けられないと思います。

 河合さんはそれで命を縮められたような気もしています。

 しかし,男の生き方としては最高なのかもかもしれないとも思います(勝手なことを言って,河合さん,すみません)。

 河合さんの渾身の語りを受けて,じーじも力不足な一年寄りながら,心して生きていきたいなと改めて思いました。      (2014.4 記)

     *

 2024年11月の追記です

 日本の臨床心理士の制度は河合さん抜きには語れないでしょう。

 スクールカウンセラーの制度もそうですね。

 その後、公認心理師の制度も政府主導で発足しましたが、独立性と質の高さの担保という観点からみると、臨床心理士にはかなわないでしょう。

 河合さんの貢献にはすごいものがあると思います。        (2024.11 記)

 

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河合隼雄・谷川俊太郎『魂にメスはいらない-ユング心理学講義』1993・講談社α文庫

2024年10月04日 | 河合隼雄さんを読む

 2021年10月のブログです

     *

 河合隼雄さんと谷川俊太郎さんの『魂にメスはいらない-ユング心理学講義』(1993・講談社α文庫)を読みました。

 文庫本で読むのは初めて。

 単行本は1979年に朝日出版社から出ていて、じーじは家裁調査官になってすぐに買って読み、すごく勉強になりました。

 以来、何回か読ませてもらったのですが、引っ越しなどのせいか、いつの間にか行方不明になってしまいました。

 最近、また読んでみたくなり、本棚をあちこち探したのですが、例によってやっぱり見つかりません。

 それで清水の舞台から飛び降りる覚悟で(おおげさかな?)、この文庫本を購入しました(奥さんには内緒です)。

 読んでみると、やはりすごい本です。

 谷川さんの質問が、詩人の立場からの深い質問ばかりですごいせいもあるのですが、それを河合さんがユング心理学にそってわかりやすく説明されて、その結果、お二人が、こころのあり方について見事に深く語りあっておられます。

 有名な箱庭療法を初めとして、ユング心理学のいろいろな考え方を学ぶのに最適ですし、初学者が学習を深めるきっかけにもなりそうです。

 印象的だったのは、河合さんがユング派の資格を取りながらも、ユング教徒にはならないと話されているところで、臨床家は教条的になってはならず、常に創造的でなければいけないのだろうな、と改めて思いました。

 いずれまた、再読をして、理解をさらに深めたいと思います。      (2021.10 記)

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 2024年1月の追記です

 この本を読むと、お二人の予断のない、真摯な対話の様子に、感激させられます。

 すごい人たちは、分野を超えても、本当にすごいんだな、とこころから思います。      (2024.1 記)

 

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河合隼雄『カウンセリングの実際』2009・岩波現代文庫-河合隼雄さんのカウンセリングに学ぶ

2024年09月29日 | 河合隼雄さんを読む

 2011年のブログです

     *

 河合隼雄さんの『カウンセリングの実際』(2009・岩波現代文庫)を再読しました。

 引越しのドサクサなどで原本の『カウンセリングの実際問題』(1970年・誠信書房)が行方不明となっていましたが、文庫本で再読できました。

 この本は、娘が大学生の時、カウンセリングのレポートの参考文献に図書館から借りてきて、なかなかいいセンスをしているなと感心をしたことがありました(その娘も結婚し、孫が生まれ、今ではじーじはじいじと呼ばれています)。

 前置きが長くなりましたが、今読んでもとてもいい本です。

 息子さんの河合俊雄さんが解説で書いておられますが、若い時の河合さんの体当たりのカウンセリングの詳細がわかりますし(ここまでするのかという驚きもあります)、受容するためには理解しなければならないという言葉など、最近の議論を先取りして考察している鋭い部分もありました。

 これからも大切な一冊になると思われる河合さんのすばらしい本だと思いました。          (2011.7 記)

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 2023年2月の追記です

 娘が大学生の時、河合さんの本を借りてきたのですが、カウンセリングのレポートをなかなか書けずに苦戦をしていたので、じーじがワープロで、こんな感じで書くといいんじゃない?と下書きをしてみました。

 すると、娘はなんと、その下書きをまったく書き直しもせずにそのまま提出してしまいました(もう時効だと思うので、大学の先生がた、お許しください)。

 幸い、D評価ではなかったのでなんとか面目がたちましたが、あぶない瞬間でした(?)。 

 よい子のみなさん、宿題は自分でやりましょうね。           (2023.2 記)

     *

 2024年3月の追記です

 じーじの孫娘たちは宿題の作文が苦手で、じーじの家に来ると、いつもママと苦戦しています。

 じーじが、あんなことやこんなことをああいうふうに、こういうふうに書けばいいんじゃないかい、と話しても、うーん?、とうなっています。

 やっぱり下書きをしないとだめなのかなあ(?)。     (2024.3 記)

 

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河合隼雄『河合隼雄のカウンセリング入門』1998・創元社-河合隼雄さんのカウンセリングに学ぶ

2024年08月28日 | 河合隼雄さんを読む

 2011年のブログです

     *

 河合隼雄さんの『カウンセリング入門』(1998・創元社)を読みました。

 なぜか読みそびれていて、しかも実際の講演は1965年~68年に行われたもので、河合さんがユング研究所で資格を取って間もなくの時期の講演ということになります。

 ちなみにじーじは1977年に今の家裁調査官の仕事について、河合さんの『コンプレックス』や『ユング心理学入門』などを読んでカウンセリングの勉強を始めましたので、とても懐かしい感じがしました。

 じーじはその後、家族療法や精神分析、遊戯療法と興味の範囲が広がっているのですが、最近、なぜかまたユング心理学に興味が出てきているところで、この本も興味深く読みました。

 じーじ自身は最近は逆転移や投影同一化などという概念について考えることが多いのですが、この本で河合さんはほとんど理論的なことはおっしゃらないで、実際にロールプレイでカウンセリングのあり方を示されたり、質問の聞き方そのものや質問内容のまとめ方などを示すことで、カウンセリングの実際を具体的に示そうとされていて、とても新鮮な刺激になりました。

 理論も大事だけれども、カウンセリングや心理療法を具体的に示すことができるということは本当に力のある人でないと難しいと思います。

 読んでよかったですし、今後も大切な一冊になるだろうなと思いました。      (2011.6 記)

     *

 2021年6月の追記です

 何でもそうかもしれませんが、具体例を示すということはとても大切で、かつ、なかなか難しいことだと思います。

 事例研究会でも、その点が大切になりますが、いざ、それを実行するということになると、かなりの力量がないとできません。

 さらに力をつけていきたいと思います。     (2021.6 記)

 

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河合隼雄・南伸坊『心理療法個人授業』2002・新潮社-レベルの高い心理療法入門の本です

2024年07月18日 | 河合隼雄さんを読む

 たぶん2017年のブログです

     *   

 河合隼雄さんと南伸坊さんの『心理療法個人授業』(2002・新潮社)を再読しました。

 これもかなりの久しぶりでしたが、とても面白かったですし、勉強になりました。

 河合隼雄さんが先生で、南伸坊さんが生徒役で、南さんがとてもいい生徒で、素朴で適切な質問を発して、河合さんの本音をどんどん引き出しています。

 勉強になったところは、たくさんありましたが、一つめは、突然の自殺予告や自己臭の唐突な訴えなどで、カウンセラーを驚かせたり、びっくりさせる患者さん。

 いずれも、慎重な対応が求められますが、そのうえで、河合さんは、そういう形でしかものが言えない患者さんや直接、カウンセラーを攻撃できずにそういう形をとる患者さん、と理解して接していければいい、と述べられます。

 臨床現場では確かにそういう場面がたまにあって、初心者の時はあわてますが、しかし、大きなチャンスでもあって、大事な場面だろうと思います。

 二つめは、このところ、このブログでも話題に出ている転移と逆転移、恋愛性の転移・逆転移の問題(カウンセラーとクライエントさんが、過去の人間関係を心理療法の場に投影すること、でいいと思うのですが…)。

 逆転移はなかなかたいへんですが、カウンセラーがうまく自己分析をできればチャンスになる、といいます。

 また、恋愛性の転移は心理療法には必要なことですが、それを終了させることのほうが難しく、河合さんは、ひとやま越えたような感じですね、と穏やかに話せるような感じがいい、と述べられます。

 三つめは、妄想の問題。

 これも中井久夫さんの本などでよく話題になりますが、河合さんは、妄想はたいへんですが、だからといって、ただ薬でなくしてしまうことに疑問を呈します。

 妄想にもそれなりの役割があるかもしれず、了解不能といわずに、了解できる部分を増やしたい、と述べます。

 そういえば、中井さんも薬で妄想を減らす際にすごく慎重だったことを思い出しました。

 大家の治療には、本当に細心の細やかさと注意深さと患者さんへの深い愛情があるのだなと思い知らされます。

 とても勉強になる一冊でした。

 また、南伸坊さんの描く河合さんのマンガもとても楽しく堪能できました。           (2017?記)

     *

 2020年11月の追記です

 妄想の積極的な意味を教えてくださったのが、中井久夫さんと河合さん。

 症状を薬でとるだけに慎重なのが、中井さんと木村敏さん。

 いずれも、臨床からの深い観察とこまやかな治療がすごい人たちだと思います。      (2020. 11 記)

 

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河合隼雄・村上春樹『村上春樹、河合隼雄に会いに行く』1996・岩波書店-こころと魂を語る

2024年07月17日 | 河合隼雄さんを読む

 たぶん2016年ころのブログです

     *   

 先日、河合隼雄さんと吉本ばななさんの対談を読んで面白かったので、こんどは河合隼雄さんと村上春樹さんの対談である河合隼雄・村上春樹『村上春樹、河合隼雄に会いに行く』(1996・岩波書店)を久しぶりに読んでみました。

 先の河合隼雄さんと吉本ばななさんの対談の中で、ばななさんがこの本を挙げて、春樹さんがめずらしく子どものよう、と言わしめた本です。

 1996年の発行で20年以上も前の本ですが、この本は何回読んでも古さを感じさせずに、いつもたくさんの刺激を受けます(しかも、今回気づいたのですが、発行元がなんとあの岩波書店なんですね。村上さんの本で岩波から出ているのはこの本くらいではないでしょうか)。  

 じーじにとってもとても大切な本で、愛読書の一冊です。

 何回も読んでいるので、付箋とアンダーラインでたいへんなことになってる本ですが、さすが岩波書店、小ぶりな造本にもかからず、しっかりとした造りで、今も読みやすさを保ってくれています。

 もの忘れがひどくなっているじーじにはめずらしく、ところどころ覚えている箇所もあって、懐かしく読み進めました。

 今回印象に残った一つめは、河合さんの発言で、心理療法において、言いたくないことは言わなくていい自由を保証をすることの大切さ。

 このところ、他の臨床家の本でも同じようなことを読んでいて、とても重要だなと思いました。

 二つめは、現代の人々は素朴で稚拙な「物語」を求めがちである、というお二人の指摘。

 毎日のニュースを読んでいると、頷けます。

 三つめは、深くていい小説や物語は、書き手の意図を超える、という村上さんの発言。

 ご自分でも「どんな意味が秘められているのかわからない」とおっしゃり、河合さんも同意されます。

 四つめは、安易な暴力否定の中に潜む根深い暴力性の問題。

 オウムや戦争の現象を見て、お二人は憂います。

 この他にも、興味深いお話が満載です。

 よろしければ、ご一読ください。     (2016?記)

     *

 2020年11月の追記です

 稚拙な物語を求める、というところで、じーじは昨今の、go to なんとか、を連想しました。

 政府によるあやしい大義名分、安ければいいという国民、しかも、それを税金から…。ひどいもんです。     (2020. 11 記)

 

 

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河合隼雄・吉本ばなな『なるほどの対話』2005・新潮文庫-こころと魂を語る

2024年07月14日 | 河合隼雄さんを読む

 たぶん2016年ころのブログです

     *   

 先日、吉本ばななさんの『キッチン』を再読してとても面白く読めましたので、こんどは河合隼雄さんと吉本ばななさんの対談『なるほどの対話』(2005・新潮文庫)を再読しました。

 この本もかなり久しぶりで、中身はかなり忘れてしまっていたのですが、予想どおりにとても面白く読めました。

 河合さんがカウンセリングの時に「はあ、なるほど」というあいづちを打つことからこの本の題名がついていますが、まさにその雰囲気で対談は続きます。

 内容は多岐にわたりますが、いずれもなかなか深く、読み応えがあります。

 生き方や人生については現代日本のあり方に警鐘を鳴らす内容が多いですが、堅苦しくはなく、肩の力を抜いて読むことができます。

 そして、むしろ、そういう本の読み方や生き方がいいのかもしれないなと思わされます。

 面白かったのは吉本さんの小説の書き方で、小説は生き物だから制御できない、何かが生まれてくるのを待つ、などと述べており、これは村上春樹さんの発言と重なって、とても興味深く感じました。

 深い内容の小説は、やはりこころや魂の深い部分に耳をすまさなければならないようですし、これはたいへんな作業だなと思われました。

 河合さんはこれらを受けて、カウンセリングも頭で考えて受けても駄目で、もっと深いところからの動きに従わなければならない、といった趣旨のことを話されます。

 じーじなどにはまだまだよくわかっていないとても深い世界なのだろうなと感じさせられました。

 しかし、そうはいっても、生きていかなければなりません。

 時代に流されずに、なにが大切かを吟味しつつ、ひとりひとりのつながりに生かされつつ、生かしつつ、誠実に、しかし、楽しみながら生きていきたいなと思いました。      (2016?記)

     *

 2020年11月の追記です

 小説やカウンセリングで、頭だけではなく、もっと深いところからの動きを大切にしなければならない、という指摘には、今もさらに深く頷けます。

 そういうことを大切にできる人間になりたいなと思います。     (2020. 11 記)

     *

 2023年12月の追記です

 深いところからの動きを大切にしなければならない、ということは本当に大切なことだと思います。

 精神分析のフロイトさんやビオンさんは、そのための貴重な工夫をたくさん述べているのだなあ、と改めて思います。      (2023.12 記)

 

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河合隼雄『「老いる」とはどういうことか』1997・講談社+α文庫-老人のちからを考える

2024年06月20日 | 河合隼雄さんを読む

 2019年のブログです

     *

 河合隼雄さんの『「老いる」とはどういうことか』(1997・講談社+α文庫)を再読しました。

 この本もかなり久しぶりです。

 読売新聞に連載されたコラムが本になったものですが、気楽に、楽しく読める本です。

 河合さん流のジョークが満載で笑いながら読みましたが、しかし、とても大切なこともいっぱい述べられていて、前回、チェックした部分も含めて、いつの間にやら、付箋とアンダーラインだらけになってしまいました。

 例によって、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 まずは、何もしないでいるだけの老人の意味ということ。

 河合さんは、青年や中年があれこれと走りまわるのは、実は生きることへの不安をごまかすためではないか、と喝破します。

 そんな時に、何もしないが、確かに存在をしている老人が大切になる、とおっしゃいます。同感です。

 次に、趣味に熱中するのはいいが、遊びを忘れないことが大切、と述べます。

 やはり、遊びやゆとり、が大切なようで、遊びの意義を再考しました。

 さらに、マザーテレサさんを紹介されます。

 思いどおりにいかない時や苦しい時にどうされますか?と問われて、マザーテレサさんが、祈ります、と述べたことを紹介され、祈ることの大切さを述べます。

 じーじは、ここを読んで、中井久夫さんが、患者さんに薬を渡す時に、効きますように、と祈るというお話を思い出しました。

 すごい人たちは、共通する何かを身につけておられるんだなあ、と感心をしました。

 じーじも、もっともっと、謙虚に、生きていきたい、と思いました。     (2019.9 記)

     *

 2023年秋の追記です

 祈ることの大切さ、というところで、じーじは、人間の限界、ということを連想しました。

 世の中、お金や教育でなんでも可能、という幻想に満ちていますが、どんなにお金があっても、どんなにいい学校に入っても、それで幸せになれるとはかぎりません。

 そういうものの大事さを否定はしませんが、それだけが目標になってしまうのは間違いでしょう。かえって危ない気がします。

 お金や教育の限界、さらには、人間のできることの限界を見すえたうえで、そんな万能感を排して、謙虚に生きていくことが大切になりそうです。 

 さらに、不安をごまかすために躁的に行動している現代人、との指摘も鋭いと思います。

 不安から目をそらさずに、不安を直視して、わからないことに耐えていくことが重要になりそうです。     (2023.9 記)

 

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河合隼雄『青春の夢と遊び-シリーズ・生きる』1994・岩波書店-おとなになる苦しみ

2024年06月01日 | 河合隼雄さんを読む

 2019年初夏のブログです

     *

 河合隼雄さんの『青春の夢と遊び-シリーズ・生きる』(1994・岩波書店)を再読しました。

 これもかなりのひさしぶり。おそらく40代に読んで以来、20数年ぶりかもしれません(河合さん、ごめんなさい)。

 しかし、なかなかいい本でした。

 そして、今のじーじにも十分、刺激的でした。

 本書は、人生について臨床心理学的に考える本が多い河合さんが、当時、唯一、青春期についての本がない、と編集者に指摘をされて書いたというもので、なかなか力が入っています。

 河合さんの青春期は戦争中で暗かったといいますが、河合さんでもなんとなく苦手なテーマがあるんだな、と改めて河合さんに親しみが湧きました。

 さて、印象に残ったことを一つ、二つ。

 まずは、青春の「春」について。

 春というとなんとなくおだやかなイメージが湧きますが、実は、死と再生の真っ只中で、おそれ、や、すさまじさ、の時期であると指摘されます。

 そういえば、精神科の患者さんが春に体調を崩されるかたが多いのですが、それもなんとなくうなずけます。

 二つめは、おとなになる時の苦しみについて。

 河合さんは、村上春樹さんの『羊の冒険』や『ダンス・ダンス・ダンス』をひかれて、思っても、口に出してはいけないことがある、それができるのがおとなになること、と指摘されます。

 また、今江祥智さんの『牧歌』をひいて、人には言っていいことと悪いことがある、そのあやまちを償えるのは創造的な行為を通してだけである、と述べます。

 ここの人生観はすごいなと感動をしました。

 そして、創造といえば遊び、というくらい密接ですが、遊びは一方で死に近く、危険なものでもあることも指摘されます。

 このところ、村上春樹さんを読んでいたのは、おそらくこのあたりのことと関係があったかもしれず、生きることの苦しさや辛さ、哀しさや、その一方での、小さな喜びを感じることなどをぼんやりと考えていた気がします。

 いい本が読めて、幸せです。     (2019.6 記)

 

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河合隼雄『対話する生と死-ユング心理学の視点』2006・だいわ文庫-心理療法を深める

2024年05月13日 | 河合隼雄さんを読む

 2019年春のブログです

     *

 河合隼雄さんの『対話する生と死-ユング心理学の視点』(2006・だいわ文庫)を再読しました。

 これもかなり久しぶりで、小さな文庫本なので、本棚の片隅にあったのを見つけて読んでみました。

 しかし、中身は充実していて、いい勉強になりました。

 さすがは河合さん!です。

 今回、特に印象に残ったところを一つ、二つ。

 一つめは、治療者の私が、もう一人の私としての病者を自覚すると、病者の心の中のもう一人の私としての治療者が働きはじめる、ということ。

 深い言葉です。

 転移・逆転移を表現しているとも言えそうですし、患者さんの自己治癒力の発現の機序を語っているようにも思えますし、さらには、もっと深いことがらを表現しているようにも思えます。

 たぶん北山修さんも同じようなことを話されていて、もっともっと考えてみたいな、と思いました。

 二つめは、治療者が安定してそこにいることの大切さ。

 治療者が患者さんを理解しつつ、そこに一緒にいることの重要性を説きます。

 これはもう、精神分析でもさんざん話題になっていることがらですね。

 三つめは、心理療法において練習を積むことの大切さ。 

 鍛えたうえでこそ、とっさに出てくることが理にかなう、と述べます。

 そして、苦しくても頑張りぬく姿勢が大切で、いい気になると駄目なことが多い、と警告をされます。

 一般、初心者向けの本ですが、丁寧に読むと、かなり奥深い、いい本だと思います。

 さらに、謙虚に、勉強を続けようと思いました。     (2019.4 記)

     *

 2020年11月の追記です

 練習を積むことの大切さは、他の世界でも同じでしょうが、心理療法でもいろんな方が強調されています。

 まずは基本を身に付ける、型を究める、などなど。

 そのうえで、土居健郎さんのいう、出たとこ勝負、が重要になるのかもしれません。    (2020.11 記)

 

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河合隼雄・谷川俊太郎・大江健三郎『日本語と日本人の心』2002・岩波現代文庫

2012年01月29日 | 河合隼雄さんを読む

 2012年のブログです

     *

 河合隼雄さんの本ですが、なぜかしばらく読みそびれていて(単行本は1996年発行とのことで、実に16年前のことです)、ようやく読みました。

 とてもおもしろかったです。

 特に3人によるシンポジウムが秀逸です(谷川さんの司会ですが、大江さんを少しおちょくりながら、河合さんを尊敬している感じがとてもおもしろく思いました)。

 話題は日本語の翻訳のこと、小説のこと、心理療法のこと、それを含めた創造性のこと、無意識と意識のことなど、多岐にわたります。

 村上春樹さんも話題にのぼっています。

 3人の真摯な思考と幅広い興味、鋭い探究心がすばらしいなと思いました。     (2012.1 記)

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河合隼雄・茂木健一郎『こころと脳の対話』2011・新潮文庫

2011年07月15日 | 河合隼雄さんを読む

 2011年のブログです

     *

 河合隼雄・茂木健一郎『こころと脳の対話』(2011・新潮文庫)を読みました。

 単行本が出た時に読みそびれていまして、今回初めて読みました。

 とても面白かったです。

 茂木さんが箱庭を置くのも面白かったですし、河合さんがタクシーに乗ると、運転手さんが身の上話を始めるというエピソードもとても面白かったです。

 願わくば、茂木さんにあと何回か箱庭を置いて欲しかったですし、河合さんのカウンセリング中の脳波も見てみたいと思いました。

 この課題はユング派の人たちに残された宿題のような気がしました。

 みなさん、頑張ってくださいね。

 楽しみにしています。     (2011.6 記)

 

 

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