弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(商標)】「マツモトキヨシ」音商標(4条1項8号)

2021年08月31日 08時51分51秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
曇り空、やや湿気多めな@湘南地方です。

今日は8月31日=ヤサイの日。
お昼は野菜多めのランチにしようと思います。

さてさて、今日はこんな記事

(朝日新聞DIGITALより引用)
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「マツモトキヨシ♪」の音商標認める 節目になる判決か

ドラッグストア「マツモトキヨシ」のテレビCMなどで使われるフレーズを音の商標として出願したものの特許庁から拒絶され、マツモトキヨシホールディングスが提訴していた裁判で、知財高裁(大鷹一郎裁判長)は30日、マツモトキヨシ側の主張を認める判決を言い渡した。

…(中略)…

 知財高裁は判決で、ドラッグストア「マツモトキヨシ」が全国的に著名で、フレーズも広く知られていることから「言語的要素からなる音から、容易に連想するのは、ドラッグストアの店名」「当該音は一般に人の氏名を指し示すものと認識されるとはいえない」などと判断した。
(以下略)
============================
(引用終わり)

この裁判は、「審決取消訴訟」と言われるもの。
マツモトキヨシが特許庁に商標登録出願
→審査段階で拒絶(登録を認めない)
→拒絶査定不服審判を請求も、拒絶審決(登録を認めない)
→審決に対して手続的又は実体的な瑕疵があるとして知財高裁に提訴→審決の取消を認める判決(☚今ここ)
ここから特許庁に差し戻されて、改めて審決がなされることになる。

問題となっている出願は、こちら
音声も再生可能。

今回取り消された審決の要旨は、以下の通り。
(1)拒絶の根拠条文は、商標法第4条第1項第8号。
 『マツモトキヨシ』を氏名とする者が現存することが認められるから、本願商標は、他人の氏名を含む商標といわなければならず、かつ、その他人の承諾を得ているものとも認めることができない。
 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(2)上記に対する請求人主張としては
 本願商標を構成する言語的要素に係る「マツモトキヨシ」が、請求人又はその子会社の商号の略称及び同子会社が経営するドラッグストア、スーパーマーケット及びホームセンターの店舗名を表すものとして本願指定役務の需要者、取引者の間で広く知られ、著名な表示になっており、当該店舗名を想起させる状況にあることから、特定の者の氏名を認識し得る状況にはない
 というもの。
(3)これに対して原審決では、
 商標法第4条第1項第8号は、出願人と他人との間での商品又は役務の出所の混同のおそれの有無、いずれかが周知著名であるということなどは考慮せず、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称」を含む商標をもって商標登録を受けることは、そのこと自体によって、その氏名、名称等を有する他人の人格的利益の保護を害するおそれがあるものとみなし、その他人の承諾を得ている場合を除き、商標登録を受けることができないとする趣旨に解されるべきもの

判決文を読んでいない(まだ裁判所HPにアップされてない)ので詳細どのような判断なのかはわからないのだけど、
周知著名性が一定程度を超えると、人格権保護に優先する、という建付けとも取れる。
或いは表記によって特定の個人を想起させるものでない場合には適用されない場合もある、という趣旨なのか。
いずれにしても、これまでの8号の運用からは変更になる。

人格権をないがしろにするつもりはないけれど、この変更が定着するなら個人的には歓迎。
できれば個人の氏名だけでなく法人の名称についても同様にゆるやかな適用にしてもらえると、実務上はありがたい。
ある意味この条文だけ登録要件(拒絶理由)の中では毛並みが違うというか、
“いやそんなん登録認めても誰も文句言わへんやん”みたいな状態がまま起きていたので。


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