弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【♪ぽん、ぽぽぽぽん】「音」の商標と、文字商標の音声的使用【←侵害になるの?】

2012年11月22日 08時39分19秒 | 実務関係(商・不)
産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会 (あー長っ!)
の第30回議事要旨がアップされていたので一読。

報告書案については、議事要旨を眺めている限り
色々とツッコミが入っているようなので、今回はコメントはスルー。

ちょっと「おっ?」と思ったのが、
「文字商標の音声的使用について」(コレの「資料2」)

ポイントを列挙すると、以下の通り。

① これまで「商標の『使用』」とは、その商標を商品に付する等の行為
  (商標法2条3項各号の行為)をいうものであった。
  したがって、
  ・ラジオ広告で商標を音声として流す行為
  ・街頭で商標を読み上げて宣伝する行為
  (いわゆる「文字商標の音声的使用」)
  などは、いずれも商標の使用には当たらないから、商標権侵害になることもなかった。

② しかし、「音の商標」制度が導入された場合…問題が生じる。
  商標の定義に「音」を含めると、上記は「音の商標」の使用に該当するため、
  登録文字商標に類似する音の商標を使用する行為として、当該文字商標についての商標権侵害
  となりうる。
  つまり、文字商標と音の商標の抵触関係が生じる可能性がある。

③ 対応の方向性として、
  文字商標とこれを読み上げた「音」の商標とは互いに類似し得ることを前提として
  登録を拒絶すべき(11号)であるとしたうえで、
  (a)文字商標を音声的に発する行為を文字商標の使用とし、「音」の商標を
   書き起こした文字を使用する行為を「音」の商標の使用行為とする
  (b)新制度施行前から文字商標を音声的に発生していた行為について、継続的使用権を
   認める
  (c)文字商標の商標権の効力は「音」の商標に及ばず、また、「音」の商標の
   商標権の効力は文字商標に及ばないものとする
  といった方向性の提示がされており、素案としては(c)が適切とされている。


…(a)は、ないよねー。表題のようなのも商標権侵害になっちゃうってことだもの。
「音」の商標も、もともと言語的要素を含むものもそうでないものもあるし。
言語的要素がなくても、無理やり文字にする(鼻歌化?)こともあるし。
範囲が不明確すぎる。

このテーマは、議事要旨をみていると委員の方々も
「議論が判りにくいので具体例を示して考え方を整理して欲しい」
とコメントしている。
大事なところだと思う。

しかし、
文字商標の音声的使用は、「音」の商標の使用にはなりうるが文字商標の使用とはならない
ということを明確にしておけば、特段問題は生じないのではないだろうか??
登録商標使用の抗弁も効かなくなるし。…って、そんな単純な問題じゃないのだろうか?

ともあれ、
保護対象(カテゴリ?)が増えることと、
権利範囲の拡張(使用概念の拡張は権利範囲の拡張に直結する)とは
きっちり分けて考えないと、かえって係争が増えることが懸念される、と思う。

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