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【知財記事(特許)】ワクチンに特許制限

2020年05月20日 09時02分08秒 | 実務関係(特・実・意)
おはようございます!
今日は急に「肌寒い」くらいの、@湘南地方です。

今朝は2000年代J-POPでスタート。今は「ポリリズム」が流れています。

さて、今日はこんな記事

(日経電子版より引用)
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ワクチンに特許制限
安く広く普及目指す WHO採択、米は慎重姿勢

新型コロナウイルスのワクチン開発競争が激しくなるなか、実用化後にワクチンを世界各地へ公平に普及させる仕組みづくりが課題として浮上してきた。世界保健機関(WHO)は19日、ワクチンを最初に開発した企業の特許権に制限をかけ、安くワクチンを供給することなどで協調をめざす決議案を採択した。ただ製薬企業にとっては「ドル箱」になるだけに、開発で先行する米国などの慎重姿勢は強い。
(以下略)
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(引用終わり)

特許制度自体、「保護」と「利用」の調和の観点から設計されているもの。
ここでいう調和、平たく言えば、

“先行投資して研究開発してんのに勝手にマネされたら採算取れない”→“んじゃ研究開発やめて他社のベンチマークしとこ”
→→こんな企業ばっかり増えたらだれも新しいもの/便利なことを生み出さなくなっちゃうじゃん!?
…はい。新しいものを最初に考えた人には期間限定で独占権与えまーす。
その間に独占販売するなり他社にライセンスするなりして投資回収してくださーい。
その代わり、考えた新しいことは技術の進歩のためにオープンにしてね。


という制度(語弊はあると思う)。

ただ医薬品の場合、常にこの理屈が優先するわけではない。
今回のような感染症の蔓延はまさにそう。

記事でいうところの「世界貿易機関(WTO)協定で認められている」「強制実施権」の規定(TRIPS協定)は、ここの第31条に記載されている以下の通り。

第31条 特許権者の許諾を得ていない他の使用

加盟国の国内法令により,特許権者の許諾を得ていない特許の対象の他の使用(政府による使用又は政府により許諾された第三者による使用を含む。)を認める場合には,次の規定を尊重する。
(注)「他の使用」とは,前条の規定に基づき認められる使用以外の使用をいう。

(f) 他の使用は,主として当該他の使用を許諾する加盟国の国内市場への供給のために許諾される。


国内法で対応するのは…93条で良いのかな?

(公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)
第九十三条 特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
2 前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、経済産業大臣の裁定を請求することができる。
3 第八十四条、第八十四条の二、第八十五条第一項及び第八十六条から第九十一条の二までの規定は、前項の裁定に準用する。


そうか、86条2項準用で、実施権設定の対価についても裁定の対象になるのか。

これまで日本国内でこの規定が適用されたことは、無いんじゃないだろうか?(知ってたら教えてください偉い人)
制度の建付けとしては、「実施をしようとする者」が「許諾について協議を求め」ることが前提で(協議前置)、
協議不成立/不能の場合に裁定請求が可能になる、と。

特許権者の利益(少なくとも、第三者による利用可能性とのバランス)は、公共の利益という別の要素が加味されることで
そのバランスが修正される、ということ。

…でも、実際にこの規定が適用される場面が訪れたとして、
特許権者(おそらく海外の製薬会社)との関係で協議→裁定と移行して
通常のロイヤリティよりも著しく低率なロイヤリティで裁定された場合、、、すんなり丸く収まるとは思えないのだが。。
国同士のパワーバランスの中、どう泳ぐかが国として文字通り「死活問題」になりかねない。

まあ、そういう先鋭的な状況に陥らないようにするために、WTOとしても“雰囲気づくり”をしている、と理解するのが適切なのかな、と。

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