弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【商標】弘前は「一般に」知られていない…?

2018年01月12日 08時21分03秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
今日は冷えている湘南地方。出勤中に氷が張っているのを今季初めてみました。

さて、今日はこんな記事。

(日本経済新聞より引用)
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商標「弘前」 中国当局、弘前市の異議認めず

中国で「弘前」の文字が商標登録申請され、青森県弘前市などが中国商標局に異議申し立てをしていた問題で、同局が異議を認めない裁定をしていたことが10日、分かった。

(中略)
中国商標法は「一般に知られた外国地名は商標登録できない」と定めているが、同局は「弘前」は一般に知られていないとして異議を認めなかったという。

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(引用終わり)

確かに、中国の商標法では「公知な外国地名は登録できない」旨定めている(第10条第2項)。
ここでいう「公知」は、日本の特許法でいうところの「公知」とは意味合いが異なる点に注意が必要。
日本の「公知」=守秘義務を持たない人間が一人でも知れば、という意味だが
中国の「公知」=実際に公衆に知られているかその可能性が高い、という意味なので、度合いとしてかなり異なる。
(この点、「一般に知られた」よりは実際はもう少し周知性が求められている、といえる)

ちなみに日本の商標審査基準において「地名」に関しては以下の通り規定されている。

2.商品の「産地」、「販売地」、役務の「提供の場所」について
(1) 商標が、国内外の地理的名称(国家、旧国家、首都、地方、行政区画(都道府県、市町村、特別区等)、州、州都、郡、省、省都、旧国、旧地域、繁華街、観光地(その所在地又は周辺地域を含む。)、湖沼、山岳、河川、公園等を表す名称又はそれらを表す地図)からなる場合、取引者又は需要者が、その地理的名称の表示する土地において、指定商品が生産され若しくは販売され又は指定役務が提供されているであろうと一般に認識するときは、商品の「産地」若しくは「販売地」又は役務の「提供の場所」に該当すると判断する。
(2) 商標が、国家名(国家名の略称、現存する国の旧国家名を含む。)、その他著名な国内外の地理的名称からなる場合は、商品の「産地」若しくは「販売地」又は役務の「提供の場所」に該当すると判断する。


つまり、
・国家名か著名な地理的名称なら有無を言わさず登録の対象外、
・そこまでいかなくとも、何等かの地理的名称からなり、それが商品の販売地ないし役務の提供地と一般に認識するときは登録の対象外、
という二段構え。

なので、ヘンな仮定だが、仮に日本の基準と同様の基準が中国にもあったとしたならどうだろう…?
「弘前」は「日本の地理的名称」にあたるが「著名な地理的名称」とまでは言えない、と思われる(少なくとも一般の中国人には)。
また今回の指定商品(コーヒー,茶,菓子など)の産地であると一般に認識されるといえるまでの事情は、もしかしたらないかもしれない。
やはり、登録が維持されてしまうのではないだろうか。

本件のような地名の冒認的登録は昔からあるが、
そろそろ事後的な対処ではなく先手を打つことを考えた方が良いのかもしれないなー、と思います。
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