おはようございます!
雨も上がり気持ちの良い天気の@湘南地方です。
さて今日は、昨日から同業者も結構コメントしている標記の件=ユニクロ-アスタリスクのセルフレジ特許訴訟。
(DIAMOND onlineより引用)
==============================
ユニクロ・セルフレジ特許訴訟「泥沼化」の内情、今度はGUも提訴へ
「GUの店舗に行ったら、セルフレジがユニクロと同じ形態に変わっていたんです。うちが特許権侵害行為差し止めの仮処分を求めている、あのレジです。店員さんに聞いたら、『5月20日に設置しました』と。ファーストリテイリングさんが何を考えているのか全く分からなくて、頭を抱えました」
そう嘆くのは、セルフレジの特許侵害についてファストリと争っているアスタリスク社の鈴木規之社長だ。
ファストリが全国に設置しているセルフレジは、商品のICタグを読み取り、かごをレジのくぼみに置いただけで決済できる。アスタリスク社は19年1月にこの仕組みと同様のセルフレジに関する特許を取得しており、同年9月、ユニクロに対して特許権侵害行為差し止めの仮処分を求めて東京地裁に申し立てた(詳細記事:https://diamond.jp/articles/-/217080)。
これに対しファストリは、特許そのものが無効であると主張して特許庁に無効審判を請求し、審理が進行中だ。さらにその後、ファストリはアスタリスクのセルフレジに関する別の特許も含めて計5件の無効申請を行う徹底抗戦ぶりだ。
「あれから毎日ファストリさんとの訴訟の資料作りをしている気がします」と鈴木社長は苦笑する。
==============================
(引用終わり)
ステータスどうなんだろう?と思って該当案件のファイル情報(審決の予告)をJ-Platpatで開こうとしているけど、
なんとも動きが重たい…。知財クラスタの方々みんな関心を持ってみているのね。
なので諦めて経過と周辺情報からだけでコメント。
[無効審判について=事実関係]
・「審決の予告」が出た=少なくとも一部のクレームについてこのままだと無効審決がでる見込み。
被請求人には(再度の)訂正の機会がある(無効審判中で一旦訂正請求をし認められているが訂正後クレームも請求項3以外は無効との判断が示されている)。
・周辺情報(記事、他の方のツイートなど)からは、“請求項3は無効にできず残った(本件特許の請求項数は4)”
→ユニクロのレジが請求項3記載の要件
=前記シールド部は、
前記電波を吸収する電波吸収層と、
前記電波吸収層の外側に形成され、前記電波を反射させる電波反射層と、
を備える
を満たすのか(つまり、生き残った特許の侵害になるのか)は、ユニクロのレジの仕様次第。
[この状況でユニクロが対象レジの実施をし続けている点について]
終局的に無効or非侵害の確信があるのであれば、非難にあたることではないように思う。
(まあ係争対象物については、「傷口を広げない」ために実施を取りやめるのが一般的だとは思うけど)
記事にあるような、中小企業の体力を見越した長期化戦術、というのはちょっとバイアスがかかった見方にも思える。
“現状は、特許侵害は大企業の「やり得」”との指摘は、さすがに言い過ぎではないだろうか?
[審決の予告(特許法第164条の2)について]
あと、
“ただし、知財の専門家の間では、審決の予告を出す特許庁の意図は、当事者に和解の可能性を探らせる効果があると判断した場合だと考えられている。”
というのもミスリーディング。
もともと「キャッチボール現象」(=無効審決→審決取消訴訟→訂正審判→訂正認容で実体審理せず差戻→改めて審判→無効審決→…、という、特許庁と裁判所との行ったり来たりになる現象)の解消のため審取訴訟係属時に訂正審判ができないように法改正されたのと同時に設けられたのが「審決の予告」。
つまり、
“ここで訂正しとかないともう訂正の機会はないよ”というある意味での最後通告が「審決の予告」。
164条の2第1項の語尾は「しなければならない。」であって、裁量規定ではなく「判断」の余地はない…誰だ、この「知財の専門家」?
[有効無効の結論はまだ出ていない]
また、
“知財高裁は「後知恵による特許性の否定」を排除しており、特許が審決で無効とされる割合は減っている。”との一般論を述べている(それはそのとおり)が、
本件はそう言ったトレンドの中にあって一部無効との判断が「審決の予告」で示されている。
記事は総じて、“権利化された特許は全て有効、或いは権利者の主張は全て正しい、との前提で他社は事業をしなければならない”という先入観で書かれているようにも読める。
コンプライアンスって、そういうことではないんじゃないかと。
ユニクロ側にも色んな算段があるのかもしれない。
それが全て“大企業のエゴ”だと見立てるのはちょっと乱暴というか、不自然に思える。
この記者の方は(他と比べると)比較的良く勉強をしているほうだと思うのだけど、率直に言えば「バランスを欠いた」見方に見えてしまう。
雨も上がり気持ちの良い天気の@湘南地方です。
さて今日は、昨日から同業者も結構コメントしている標記の件=ユニクロ-アスタリスクのセルフレジ特許訴訟。
(DIAMOND onlineより引用)
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ユニクロ・セルフレジ特許訴訟「泥沼化」の内情、今度はGUも提訴へ
「GUの店舗に行ったら、セルフレジがユニクロと同じ形態に変わっていたんです。うちが特許権侵害行為差し止めの仮処分を求めている、あのレジです。店員さんに聞いたら、『5月20日に設置しました』と。ファーストリテイリングさんが何を考えているのか全く分からなくて、頭を抱えました」
そう嘆くのは、セルフレジの特許侵害についてファストリと争っているアスタリスク社の鈴木規之社長だ。
ファストリが全国に設置しているセルフレジは、商品のICタグを読み取り、かごをレジのくぼみに置いただけで決済できる。アスタリスク社は19年1月にこの仕組みと同様のセルフレジに関する特許を取得しており、同年9月、ユニクロに対して特許権侵害行為差し止めの仮処分を求めて東京地裁に申し立てた(詳細記事:https://diamond.jp/articles/-/217080)。
これに対しファストリは、特許そのものが無効であると主張して特許庁に無効審判を請求し、審理が進行中だ。さらにその後、ファストリはアスタリスクのセルフレジに関する別の特許も含めて計5件の無効申請を行う徹底抗戦ぶりだ。
「あれから毎日ファストリさんとの訴訟の資料作りをしている気がします」と鈴木社長は苦笑する。
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(引用終わり)
ステータスどうなんだろう?と思って該当案件のファイル情報(審決の予告)をJ-Platpatで開こうとしているけど、
なんとも動きが重たい…。知財クラスタの方々みんな関心を持ってみているのね。
なので諦めて経過と周辺情報からだけでコメント。
[無効審判について=事実関係]
・「審決の予告」が出た=少なくとも一部のクレームについてこのままだと無効審決がでる見込み。
被請求人には(再度の)訂正の機会がある(無効審判中で一旦訂正請求をし認められているが訂正後クレームも請求項3以外は無効との判断が示されている)。
・周辺情報(記事、他の方のツイートなど)からは、“請求項3は無効にできず残った(本件特許の請求項数は4)”
→ユニクロのレジが請求項3記載の要件
=前記シールド部は、
前記電波を吸収する電波吸収層と、
前記電波吸収層の外側に形成され、前記電波を反射させる電波反射層と、
を備える
を満たすのか(つまり、生き残った特許の侵害になるのか)は、ユニクロのレジの仕様次第。
[この状況でユニクロが対象レジの実施をし続けている点について]
終局的に無効or非侵害の確信があるのであれば、非難にあたることではないように思う。
(まあ係争対象物については、「傷口を広げない」ために実施を取りやめるのが一般的だとは思うけど)
記事にあるような、中小企業の体力を見越した長期化戦術、というのはちょっとバイアスがかかった見方にも思える。
“現状は、特許侵害は大企業の「やり得」”との指摘は、さすがに言い過ぎではないだろうか?
[審決の予告(特許法第164条の2)について]
あと、
“ただし、知財の専門家の間では、審決の予告を出す特許庁の意図は、当事者に和解の可能性を探らせる効果があると判断した場合だと考えられている。”
というのもミスリーディング。
もともと「キャッチボール現象」(=無効審決→審決取消訴訟→訂正審判→訂正認容で実体審理せず差戻→改めて審判→無効審決→…、という、特許庁と裁判所との行ったり来たりになる現象)の解消のため審取訴訟係属時に訂正審判ができないように法改正されたのと同時に設けられたのが「審決の予告」。
つまり、
“ここで訂正しとかないともう訂正の機会はないよ”というある意味での最後通告が「審決の予告」。
164条の2第1項の語尾は「しなければならない。」であって、裁量規定ではなく「判断」の余地はない…誰だ、この「知財の専門家」?
[有効無効の結論はまだ出ていない]
また、
“知財高裁は「後知恵による特許性の否定」を排除しており、特許が審決で無効とされる割合は減っている。”との一般論を述べている(それはそのとおり)が、
本件はそう言ったトレンドの中にあって一部無効との判断が「審決の予告」で示されている。
記事は総じて、“権利化された特許は全て有効、或いは権利者の主張は全て正しい、との前提で他社は事業をしなければならない”という先入観で書かれているようにも読める。
コンプライアンスって、そういうことではないんじゃないかと。
ユニクロ側にも色んな算段があるのかもしれない。
それが全て“大企業のエゴ”だと見立てるのはちょっと乱暴というか、不自然に思える。
この記者の方は(他と比べると)比較的良く勉強をしているほうだと思うのだけど、率直に言えば「バランスを欠いた」見方に見えてしまう。