弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(著作権)】私的録音録画補償金

2019年06月03日 07時43分17秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
気温は高くないもののなんとなくジメジメとした空気…ぼちぼち梅雨入りですかね。


(事務所の前の紫陽花)

さて、今日はこんな記事

(朝日新聞DIGITALから引用)
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スマホやPC本体に「著作権料上乗せを」国際組織が決議

私的な録音、録画をする主たる機器がパソコンやスマートフォンに変わってきたことを受け、それらの売価にあらかじめ著作権料の上乗せを――。著作権団体の国際組織が31日、日本政府に向けたそんな決議をしたことを発表した。現在の「私的録音録画補償金」は一世代前のMDレコーダーなどが対象で近年はほとんど補償金が入っていない。時代に合わせて対象を広げるべきだとする内容だ。

決議をしたのは、日本音楽著作権協会(JASRAC)など121国・地域の団体が加盟する著作権協会国際連合(CISAC)。日本では35年ぶりの開催となる総会でとりまとめた。
(以下略)
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(引用終わり)

まずは法律の建付けから。

著作権は「権利の束」。
勝手に○○されない権利、が列挙されている。例えば「複製権」は「勝手に複製されない権利」。

で、特定の場面ではその各種権利が及ばない旨を、「著作権の制限」のセクションで限定的に規定している。
その冒頭にあるのが、多くの方がご存知な「私的使用のための複製」(第30条)。
その規定における“個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内”というのがどこまでなのか、というのがしばしば議論になるけど、
今回はそこではなく、第2項。

2 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。


デジタル方式の録画・録音だと指摘でも大量に行うことができるため、当初予定されているよりも著作者の経済的利益を損なわれると考えられるために設けられた規定。
とはいえ、個々の消費者が補償金を支払うことは現実的ではないため、デジタル記録媒体やデジタル記録機器を購入するときに補償金に相当する費用を(知らず知らず)支払っている。

今回の記事は、この補償金支払いの対象にスマホやPC本体も含めるべし、というもの。

消費者感情としては、どんな建付けだろうが負担が増えることに変わりはないからあまり歓迎できるものではないが、
著作物の創作者と使用者のバランス、という関係で捉えた場合には、確かにそのルートに「課金」することにも一応の合理性はあると思う。
ただ、記事の続きの中でも触れているが
1)スマホやPCを買っても録音/録画に使わない人もいること
2)有償のコンテンツを購入している人からは「二重取り」になること
はどう整理するのか。

というか、条文上は確かに「機器」ではあるんだけど、「アプリ」に課金する形の方が上記問題の両方を解決することになるのでは?
著作権のこのテの話になるといつも思うのだけど、
“どさくさ紛れに取れるところからはみんな取ってやれ”
というスタンスであるかのように感じてしまう。

利用者が応分の負担をする、ということを考えたとき、条文の文言を四角四面に捉えるのではなく合目的的に解釈してこそ管理団体としての信頼も得られるのではないかなと思うのだが、どうだろう?
もちろん、権利者への還元が目に見える形で利用者に開示されることとワンセットで。
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