ニデックはAI半導体が成長をけん引する市場を開拓する(画像は米グーグルのデータセンター)=AP
ニデックは中国の電気自動車(EV)市場を軸とした成長戦略を見直す。価格競争で利益が確保できない市場への投資を抑制し、中国のEV部品に代わる成長市場を開拓する。
AI(人工知能)半導体を使ったデータセンター向け装置を年間200億円の事業に育てる。アフリカなどのグローバルサウスに空調関連の工場も建設する。
2025年3月期はデータセンターのサーバーに組み込む画像処理半導体(GPU)などの水冷装置の販売に力を入れる。
AI半導体を使ったサーバーはデータ処理量が増加し発熱しやすいため、高い冷却能力が求められる。サーバー大手から月1000台程度の水冷装置を受注し、年間200億円の売上高を目指す。
現在はファンが風を送る空冷式の装置を提供している。配管やポンプで水を循環させる水冷式の装置は冷却能力が高く、空冷式より2〜3割節電できる。
ニデックは装置内に重要部品を2つずつ配置。片方で水漏れがおきても、もう片方の部品が稼働してサーバーが故障しないよう設計した。
省エネ機器の導入でデータセンターの消費電力量を抑えたい米IT(情報技術)大手などの需要を開拓する。
ニデックの小部博志社長兼最高執行責任者(COO)は「AI半導体を使うサーバーに積極投資する(米アップルなどの)『GAFAM』や米テスラを間接的に支える」と話す。
AI半導体は米エヌビディアが23年に新製品の投入を発表して以降、注文が殺到して注目を集めている。台湾の調査会社トレンドフォースによると、AIサーバーの世界市場は22年の85万台から、26年に236万台まで拡大する。
ニデックは足元の需要が低迷しているハードディスクドライブ(HDD)向けのモーター工場があるタイで水冷装置を生産する。大規模な投資をせずに新事業を育成し、投資効率を高める。
グローバルサウスにも投資する。永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は1月下旬の記者会見で、「ニデックが20年前に中国進出した時と同じ雰囲気がある」と述べ、来期以降はインドとアフリカに注力する方針を示した。
26年3月期にもニデックとして初のアフリカ工場の建設を検討する。エアコンの省エネ性能を高める主要部品に使われるモーターを生産する見通し。ニデックはエアコン用モーターで世界シェア首位。
インドでもエアコン向けを念頭に同国5番目の工場建設を検討中で、新興国の経済成長をテコに規模の拡大を目指す。
2023年4〜12月決算を発表するニデックの永守CEO(1月24日、東京都千代田区)
足元では中国市場向けのEV部品事業の損切りを進めている。構造改革費用の計上により24年3月期の同事業の営業損益は600億円近い赤字を見込む。
永守氏は「中国のEV部品に傾注しすぎたのが失敗だった」と話す。EV部品の販売は中国一辺倒を改め、日米欧市場の開拓に力を注ぐ。
23年4〜12月期は事業で得られる営業キャッシュフローが前年同期比1100億円増の2042億円となり、4〜12月期としては過去最高だった。
老朽化が進む電力インフラの更新需要を背景に米国などで産業用モーターが伸びている。1月下旬に見直した後の今期の予想連結純利益は過去2番目の水準だ。EV部品事業をのぞけば堅調な事業が多く、費用対効果の高い投資を進めて仕切り直す。
日経記事 2024.02.09より引用