三菱商事は「ケンタッキーフライドチキン」を運営する日本KFCホールディングスの全保有株式を売却する
三菱商事が「ケンタッキーフライドチキン」を運営する日本KFCホールディングスの全保有株式を売却する検討に入った。
近く売却先を決めるための1次入札を実施する。三菱商事が約35%を出資する日本KFCの中長期の成長は見込みにくい。海外の投資家を中心に資本効率の向上を求める声が高まるなか、事業の収益性を見極めて稼ぐ力を高める。
日本KFCは東証スタンダードに上場し、時価総額は約900億円。三菱商事が筆頭株主で社長も出している。全保有株を売却した場合、数百億円規模になる見通しだ。
近く実施する1次入札には外資系ファンドのほか、外食大手などが応札するとみられている。三菱商事は28日、「決定した事実はない。当社としてグループ会社の成長戦略は常に検討している」とコメントした。
日本KFCは1970年に三菱商事と米KFC(現米ヤム・ブランズ)が設立。
2007年に三菱商事の子会社になった。ヤム社と資本関係を解消したが、ブランドや一部商品を共通にするフランチャイズチェーン(FC)契約を結んでいる。
原材料価格の上昇を受けて主力商品を段階的に値上げし、既存店売上高は好調に推移。24年3月期の連結業績は、売上高で前期比10%増の1100億円、純利益で53%増の38億円を見込んでいる。
ただ、事業展開が国内にとどまる契約で、中長期で大幅な成長を見込めない。昨年12月末の国内店舗数は日本マクドナルドの4割程度だ。
三菱商事は足元の業績に加え、資本効率の改善を意識している。25年3月期までの中期経営戦略で「循環型成長モデル」を掲げ、資産売却を加速。
成長性などの観点から入れ替え候補の事業をリスト化し、各営業グループに入れ替え目標を割り当てた。営業グループが入れ替え計画を策定し実行に移している。
背景にあるのが、東京証券取引所による資本効率の改善要請だ。東証はPBR(株価純資産倍率)が低い上場企業に資産効率の改善に取り組むよう要請している。
23年前半まで1倍を割っていた三菱商事のPBRは2月28日時点で1.5倍に急浮上。時価総額は13兆円を超えて商社トップを走るが、PBRはなお、伊藤忠商事(1.8倍)に届いていない。
商社株は米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が買い増していることで、世界の投資家から関心が高まっている。資本効率は海外投資家も注目する指標で、海外投資家から継続的にマネーを呼び込む上で重要だ。
小売り事業の資本効率は金属資源や天然ガスといった資源事業や自動車・モビリティ事業などに比べ相対的に低く、てこ入れが課題になっていた。
グループ別の総資産利益率(ROA)をみると、日本KFCを含む食品産業が23年3月期で3%、ローソンなどのコンシューマー産業が同0.6%と、会社全体の平均(5%)より低い。
こうした中、三菱商事は今月6日に50.1%出資するローソンをKDDIとの折半出資の共同経営に移行すると発表。KDDIがローソンにTOB(株式公開買い付け)を実施し、ローソンは上場廃止になる。
日本KFCを巡っては米ヤム社との契約条件を巡る交渉が難航しているとの見方もある。複数の関係者によると、契約を更新するタイミングが迫るなか、ヤム社が契約条件の見直しを求めているようだ。条件が悪化した場合に「現状の収益が維持できない可能性がある」(関係者)という。
日経記事 2024.02.28より引用