川崎汽船は伊藤忠商事など6社共同でアンモニア燃料船を開発する
川崎汽船は11日、伊藤忠商事など6社でアンモニアを燃料とする商用船を共同開発すると発表した。
二酸化炭素(CO2)を排出しない次世代燃料として注目が集まるアンモニア船の実用化に向けて、各社の強みを持ち寄り早期の開発につなげる。
10日付で6社間の覚書を結んだ。
参画するのは2社のほか、三井E&Sと日本製鉄系のNSユナイテッド海運、日本シップヤードと独フォルクスワーゲン(VW)傘下の船舶用エンジンメーカー、MANエナジー・ソリューションズを加えた計6社。
2028年までの早期にアンモニア燃料船の実用化を目指す新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援事業の一環として取り組む。
MANが開発中のアンモニアを燃料とするエンジンを搭載した載貨重量20万トン級の大型ばら積み船を、日本シップヤードが建造することを前提とする。
三井E&Sがエンジンの製造や周辺システムを設計。川崎汽船とNSユナイテッド海運が船の運航管理やデータ収集を担い、伊藤忠はアンモニア燃料の供給に関する情報を共有する。
アンモニアは燃焼させてもCO2を排出しない「ゼロ・エミッション燃料」として世界的な期待を集める。
その一方で毒性があるため、アンモニアの生産から港湾への輸送、船への供給といった安全なサプライチェーン(供給網)の構築が重要になっている。
日経記事2024.04.12より引用
富士フイルムはバイオ薬の受託生産で世界4位
富士フイルムは2028年までにがん治療などに使うバイオ医薬品の生産能力を5倍に高める。
約7000億円を投じて米国などに新たな設備を設け、製薬会社からの受託生産を増やす。医薬品は開発費が高騰しており、製薬大手は負担を減らすために生産を外部に委託しつつある。薬の生産分野で日本企業の存在感が高まってきた。
12日、米ノースカロライナ州の工場に12億ドル(約1800億円)を投じて新たな生産設備を設けると発表した。
欧州や日本の拠点でも設備を増やし、28年までに世界での生産能力を約75万リットルまで引き上げる。
バイオ医薬品は遺伝子組み換えや細胞を培養する技術を使う。
がん細胞を狙い撃ちして治療できるなど従来型の薬に比べて副作用を少なくできる。世界の製薬大手やスタートアップ企業が開発を競っており、一つの薬を生み出すのに数百億〜数千億円の開発費がかかる。
生産面でも細胞を大量に培養する大規模な設備が必要で投資がかさむ。
製薬会社はコストを抑えるために生産を外部に委託しつつある。半導体やデジタル家電と同様に開発と生産を分業する動きだ。
経済産業省によると、富士フイルムはバイオ医薬品の受託生産で世界4位。生産能力の増強で首位のスイス・ロンザや韓国サムスングループに対抗する。
日本の製薬産業は「メガファーマ」と呼ばれる欧米大手に新薬の開発で水をあけられている。
生産面では世界での重みが増しつつあり、AGCやテルモなども受託生産の設備を増やしている。医薬品の量産技術は新型コロナウイルスのワクチンのように経済安全保障に直結する。
日本企業が最先端の生産技術を持つことで有事の医薬品の安定供給にもつながる。
富士フイルムは29年3月期にバイオ医薬品の受託生産事業の売上高を前期比2.6倍の5000億円に引き上げる計画だ。参入した11年からの投資額は計1兆円を超えることになる。
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富士フイルムは米ノースカロライナ州で建設中のバイオ薬製造受託拠点に追加投資を決めた
富士フイルムは12日、製薬会社から医薬品の製造を受託する事業の能力増強に12億ドル(約1800億円)を投じると発表した。
米国の拠点に新たに生産設備を設ける。バイオ製薬企業からの旺盛な需要に対応する。
ノースカロライナ州ホーリースプリングス市に建設中の工場に追加投資する。同拠点については既に20億ドル以上の投資を発表済みだ。
28年までに同拠点での生産能力を32万リットルと従来計画から倍増させる。
がん治療などに使われる「抗体医薬品」と呼ばれるタイプの薬の生産設備を設ける。
化学合成でつくる経口薬など従来型の薬と比べ、高い治療効果が期待される分野だ。世界大手やスタートアップが開発に力を入れている。
富士フイルムはバイオ薬の開発や製造を受託する「CDMO」の世界大手。増産へ投資する競合のスイス・ロンザや韓国サムスンバイオロジクスなどに対抗する狙いがある。
同社はこれまでにも日欧などで生産能力の増強に向けた投資を公表している。米国への追加投資を含め、28年までに約7000億円を投資する。
グループ全体の生産能力は約75万リットルと、足元から5倍に高まる見通しだ。11年の事業参入以来の累計投資は1兆円を超える見通しだ。
新薬関連などで減損損失を計上した
アステラス製薬は12日、2024年3月期の連結純利益(国際会計基準)が前の期比97%減の30億円になったと発表した。従来予想から550億円下方修正した。
神経系の希少疾患治療薬の研究開発が想定より遅れていることや、販売が苦戦する腎性貧血治療薬の将来販売計画を見直した結果、減損損失を計上した。
事前の市場予想の平均(QUICKコンセンサス)は36%減の635億円で、修正後の純利益は市場予想を約605億円下回った。
神経系の希少疾患「フリードライヒ運動失調症」患者を対象とした治療薬候補「AT808」について資産価値を見直し、無形資産の減損損失約400億円を計上した。
当初計画から開発が遅れていることや、競合薬の開発状況などを考慮した。
日本と欧州で販売している腎性貧血治療薬のエベレンゾについても競合薬が多く登場してきた結果、販売が低迷している。
同治療薬の将来の販売計画を見直し、無形資産の減損損失約160億円を計上した。加えて、抗がん剤の開発計画の更新などに伴う条件付き対価に関わる公正価値の変動額約80億円も、その他の費用として計上した。
売上高にあたる売上収益は3%増の1兆5620億円と、従来予想を据え置いた。
適応症の拡大などで主力の前立腺がん向け治療薬「イクスタンジ」や尿路上皮がん向け治療薬「パドセブ」の販売が伸びた。アステラスは25日に24年3月期決算の発表を予定している。