実は、私の専門のど真ん中なので、少し詳しくお話ししたいと思います。 金融の話h文系の専門のように思いますが、実は技術者・研究者がそれを見据えて研究開発を行っている成果が新しい金融の道を切り拓いています。
一国の政府が発行する通貨をフィアット・カレンシー(押しつけ通貨)と呼びます。また、コンピューターネットワーク上で流通するデジタル通貨を、クリプト・カレンシーと呼びます。 最近はやりのビットコイン(仮想通貨)もクリプト・カレンシーの一つです。
クリプトとは、暗号技術のCryptograhyの略です。
一昔前は、コインを鋳造したりお札を輪転機で印刷し、それで個人は給料をお札でもらっていました。
しかし、半導体・コンピューター技術の発達とともに、お金はデーター化され、コンピューター上で流通するようになっています。
実は、技術者たちはそれを見越して約半世紀前から開発を行ってきたのです。 それには今日注目されている半導体の細線化、そして細線化の遅れをパッケージ技術で補うというのは、約半世紀前から同じことをやっているのです。
半導体の黎明期
実は1925年代にすでにドイツに固体素子の仮発が行われていましたが、話がややこしくなるのでここでは日米で教科書にもあるレベルの公式情報に基づいて、ATTのベル研究所でウィリアム・ショックレーが1947年12月にパイポーラトラとランジスタを試作したのが最初とします。
1954年 TI社がSi-Trのコマーシャル・ビジネスを始めます。
1957年 フェアチャイルド社が設立されます。
この頃から半導体の技術はまだまだなので、セラミック基板
上に半導体と抵抗やコンデンサなどの受動部品と呼ばれる電
子部品を実装したモジュールがRCAで開発されます。 今日で
いうハイブリッドICの始まりです。
1958年 フェアチャイルド社Si-ICの開発に成功します。
1960年 IBM社がTrの全自動製造を開始。
1961年 フェアチャイルド社がSi-ICのコマーシャルビジネスをスタート。
1960年代 ICの開発・商業化競争が始まります。
1968年 インテルが設立(フェアチャイルドの技術者ゴードン・ムーア)
1969年 AMDが設立(フェアチャイルド社のマーケッティングジェリー・サ
ンダース)
すなわち、フェアチャイルド社が半導体の学校と言われる所以
です。ゴードン・ムーア、ジェリー・サンダースともにフェアチャ
イルド出身で、インテルとAMDの半導体ベンチャー企業をそれぞれ
設立したのです。
1970年代 半導体の微細化競争による性能向上。 配線幅がしょぼくて、今
日のようにCPUが1chipにできないので、分割してセラミック(ア
ルミナ多層基板)状に実装するモジュールがIBMで開発されます。
1979年 IBMが大型コンピューター(メインフレームと呼びます)4300シリ
ーズで、22層で、50mmx50mmのアルミナ多層基板上に,9chipが実装
されたモジュールを搭載。 9ケのチップは機能が違うのではなく、
線幅がしょぼいので、CPUをただ9つに分割したというもの。
この頃から、産業用に大型コンピューターが使われ、銀行間のネッ
トワークも視野にいれた研究開発が始まります。 データがお金な
ので信頼性は非常に厳しい仕様です。
1982年 IBMで、308Xシリーズ開発成功し、銀行間のネットワークに採用。
32層,90mmx90mmのアルミナ多層基板上に118-133chipが搭載された
大型コンピューターで、発熱が大きいので、液体ヘリウムで冷却。
こうして、デジタル通貨が始まり、皆さんの給料なども口座に振り
込まれるようになります。 メモリーも間違いのない、信頼性の高
いものが要求されました。
更なる高速化が要求されますが、システム全体の中に占める信号の
遅延がパッケージが50%以上占めるようになったので、半導体を
いくら高速化してもいみがなくなり、新しいパッケージ基板が要求
されるようになりました。
アルミな基板の焼結温度は1500℃なので、金・銀・銅のような配
線に適した金属は融点を越えてしまうので使用できません。
よって従来から配線材料にはタングステンやモリブデンのような
セラミック(抵抗発熱材料)が使われてきました。
また、アルミナの誘電率は8と大きく、高速化には向きません。
ここでIBMが解決する貯め、900℃で焼結するガラスセラミックを
基板材料に、配線材料にはインピーダンス(抵抗)の 小さい
金・銀・銅を使うことを考え、スーパーコンピューターに採用し
ました。 いうまでもなく、分布回路定数という電気回路の設
計技術も必要になります。
1982年 IBMのスーパーコンピューターにはガラスセラミック基板と金銀銅
の電気抵抗の小さい配線材料、さらには誘電率もアルミナの半分く
らいの4のガラスセラミックを開発。 さらにSiチップをフリップチ
ップで実装できるようにガラスセラミック多層基板の線膨張係数をSi
チップのそれと合わせるように設計されたスーパーコンピュータ
ーが実用化されました。
この素晴らしい概念がIBMから発表されると、それを研究し真似?し
て日本の大手コンピューターメーカーが続々とスーパーコンピュー
ターを1980年代に開発、実用化しました。
IBM ES9000シリーズ
NEC ACOS3900シリーズ
富士通 M-1800、VP-2000シリーズ
日立 M180シリーズ
内が言いたかったのかと言えば、文系の政治学者や評論家などがあれこれ分かったように言っていますが、技術者サイドでは数十年前から今日を推定(予測)して準備していますよということです。
ちなみに、音楽のCDにしても市場にでる30年前から世界のエレクトロニクスメーカーが集まり、仕様の規格会議をやっています。
将来を予測するには、科学技術の視点も如何に重要であるか知って頂ければ幸いです。
大英帝国の繁栄もプレートテクニクス(大陸移動)が最も大きく影響していたのです。 これについては別途紹介します。 科学技術の知識がないと予想できません。