トランプ前大統領㊧とバイデン大統領の支持率は拮抗する=ロイター
【ワシントン=飛田臨太郎】
米国のトランプ前大統領が5月30日に有罪の評決を受けた後の複数の世論調査が発表になった。米ABCテレビの調査では無党派層の52%が「立候補をやめるべきだ」と回答し、投票しない意向を示した。1年前の調査と同水準で、現時点では大きな変化はみられない。
共和党のトランプ氏と民主党のバイデン大統領の対決となる11月の米大統領選は接戦となる見込みで、無党派層の動向が勝敗を左右する。
米ABCテレビは5月31日から6月1日に実施した。1年前の2023年6月に実施した世論調査でも、無党派層のおよそ半数がトランプ氏は立候補をやめるべきだと答えていた。
23年6月の調査は、同年春に米ニューヨーク州の大陪審がトランプ氏を起訴した後だった。起訴後と、今回の有罪評決後の無党派層の反応はほぼ同じ程度だったことになる。
5月30〜31日に実施したロイター通信の世論調査では共和党支持者のうち10%がトランプ氏に投票する可能性が低くなったと回答した。
評決前の各種世論調査でも1割程度の共和支持者はトランプ氏に投票しない可能性を示唆していた。
トランプ氏の主張と距離を置く共和穏健派が投票を棄権すれば、選挙戦に影響を及ぼすが、現時点では広がりはみられない。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は6月3〜4日に、4〜5月に調査したおよそ2000人に改めて接触した。トランプ氏への支持率は47%で、バイデン氏(46%)との差は1ポイントだった。前回は3ポイントの差があったが縮んだ。
NYT以外の各社の調査でも、両候補への支持率に大きな変化はなかった。米NBCテレビは「有罪評決後の初期の世論調査から得られた結論は、全体的な政治環境はあまり変わっていないということかもしれない」と総括した。
一方、NYTの調査からは小さな変化が垣間見える。
トランプ氏とバイデン氏のいずれも嫌いな「ダブルヘイター」と呼ばれる有権者のうち、これまでトランプ氏に投票すると答えていた人の5分の1以上が離反した。
バイデン氏に移る人と未定の人の割合は均等に分かれた。
今後1〜2週間で有罪評決後の米主要メディアの世論調査がでそろう見通しだ。
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※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
この世論調査が示唆していることは、バイデン陣営が大統領選挙で勝利するには、選挙の争点を、トランプ氏の大統領としての資質の評価にしていくことであり、トランプ陣営が勝利するには、有権者を経済や移民などのバイデン政権の評価にしていくことでしょう。
本選に向けてのバイデン陣営の選挙広告が、トランプ氏が有罪判決を受けたことや、元ポルノ女優と不倫をしていたことを繰り返し訴えるようなメッセージが、今から想像できます。
トランプ氏に対する有罪評決が、米国の有権者の態度にどう影響するか。
接戦になる可能性が高い11月の米大統領選の行方で、カギを握る要素の1つである。
記事で整理されている通り、ここまでのところ、有罪評決の影響は「中立ないしバイデン氏に若干の追い風」といったところだろう。
この裁判に決着がついたわけではなく、大きな影響が出ていないことに違和感はあまりない。
米国民には、物価の高騰、移民流入問題、ガザ戦争に対する米国の姿勢、妊娠中絶の権利など、いくつもの関心事がある。
それらの中で最も関心が高いのは、相変わらず物価の高騰のようである。バイデン氏の経済政策ゆえに起こったわけではないが、最大の弱点になっている。
2024年に実施されるアメリカ大統領選挙に向け、現職のバイデン大統領やトランプ氏などの候補者、各政党がどのような動きをしているかについてのニュースを一覧できます。
データや分析に基づいて米国の政治、経済、社会などに走る分断の実相に迫りつつ、大統領選の行方を追いかけます。
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日経記事2024.06.07より引用