NATO加盟国などを招いた夕食会で談笑する韓国大統領の尹錫悦(ユン・ソンニョル)夫妻(左)
とウクライナ大統領のゼレンスキー夫妻(10日、ホワイトハウス)=AP
【ワシントン=藤田哲哉】
韓国がウクライナ侵略で需要が高まる欧州への武器輸出の拡大に力を入れる。
韓国大手企業がルーマニアと自走砲などの契約を結んだほか、訪米中の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が欧州などの首脳らと会談し、トップセールスを展開した。
9日にルーマニア国防省と契約したのは、韓国防衛産業大手ハンファ・エアロスペースだ。自走砲「K9」54両、弾薬運搬装甲車「K10」36両など計1兆3千億ウォン(約1500億円)規模を供給する。
K9はすでにポーランド、ノルウェー、フィンランド、エストニアなどが導入を決めている。
輸出契約を通じてルーマニアはK9自走砲の9番目の輸出国になった。
ハンファ・エアロスペースの関係者は「K9は寒冷地でも耐えられるように設計されているが、地域によってはカスタマー設計もする」と説明し、顧客の要望に柔軟対応する構えだ。
韓国が欧州各国への武器輸出を強化することを踏まえ、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は記者会見で「防衛産業を含め、韓国とはどのような形で協力を拡大できるか模索している」と述べた。
その上で「韓国には先端防衛産業がそろっている。技術とサイバー領域で協力できる潜在力がある」との意向を示した。
尹氏はNATO首脳会議出席のため米国を訪れ、10日にチェコ、フィンランド、スウェーデン、カナダなど加盟各国の首脳らと相次いで会談した。
フィンランドのストゥブ大統領との会談では北朝鮮の非核化に向けて両国が緊密に連携していくことで一致。尹氏は「防衛産業、原発のような分野で相互協力を拡大していくことを望む」と伝え、ストゥブ氏も「関係強化に向けて積極的に動く」と応じた。
スウェーデンのクリステション首相との会談でも防衛産業での協調を求め、クリステション氏は「防衛産業でパートナーシップを強化できるよう協力する」と述べた。
尹氏はバイデン米大統領がホワイトハウスで開いた夕食会でウクライナのゼレンスキー大統領ともあいさつを交わした。一部の韓国メディアはゼレンスキー氏から尹氏に武器支援の要請があった可能性があると報じている。
カナダのトルドー首相は自国の国防力増強に関連し「防衛産業分野で韓国との互恵的な協力関係を検討していく」と説明。
両首脳は北朝鮮とロシアが締結した包括条約について深い憂慮を示し、国連安全保障理事会決議違反の軍事協力に対し、断固として対応していくことを確認した。
2025年にはカナダが主要7カ国(G7)議長国になり、韓国がアジア太平洋経済協力会議(APEC)議長国となるため、議長国同士で緊密に協力することも申し合わせた。
韓国の防衛装備品の輸出額は21年が約72億5000万ドルだったが、22年は約173億ドル、23年は約135億ドルと膨れ上がり、24年は約200億ドルに達する見通しだ。
27年までに世界第4位の武器輸出国を目指す韓国は貿易赤字解消や経済成長のため、さらなる武器輸出の拡大をめざす。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、19〜23年の累計で韓国は世界10位の輸出規模。輸出先はポーランド、フィリピン、インドの順で多い。23年単年では、ポーランド向けが9割を占めた。
金正恩(キム・ジョンウン)総書記のもと、ミサイル発射や核開発などをすすめる北朝鮮。日本・アメリカ・韓国との対立など北朝鮮問題に関する最新のニュースをお届けします。
日経記事2024.07.11より引用