インテルのゲルシンガーCEOは12月1日付で退任を発表した=ロイター
【ニューヨーク=川上梓】
米インテルは2日、パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)が1日付で退任したと発表した。
業績低迷を受けて経営体制を刷新し、立て直しを急ぐ。最高財務責任者(CFO)のデビッド・ジンスナー氏と製品責任者であるミシェル・ジョンストン・ホルトハウス氏が暫定的な共同CEOに就いた。
取締役会は今後、新たなCEOを選任する。取締役会議長のフランク・イヤー氏が新CEO選任までの間、暫定的な執行委員長となる。
ゲルシンガー氏は21年からインテルを率いてきた。就任直後から開始した半導体の受託生産事業が苦戦し、顧客獲得が進まない中で市場シェアが縮小。人工知能(AI)市場の開拓も遅れたことで業績が低迷していた。
2024年7〜9月期決算は最終損益が166億3900万ドル(約2兆5000億円)と過去最大の赤字となった。新型コロナウイルス下の特需を見込んで過剰投資した半導体の製造設備の損失や従業員の15%削減を柱としたリストラ費用の計上が響いた。
退任したゲルシンガー氏は2日、「厳しい決定を下した挑戦的な年だった。世界中の同僚に永遠に感謝する」との声明を発表した。退任発表を受け、インテルの株価は2日の市場外取引で一時5%上昇した。
インテルは半導体の製造と設計をともに手掛ける米国唯一の企業だ。
バイデン米政権は11月26日、同社が米国の複数の州で投資する半導体工場への補助金が最終決定したと発表していた。先行投資がかさみ、インテルの業績が低迷する中、立て直しに向けて早期に補助金を受ける重要性が高まっていた。
経営不振で他社からの買収や出資に関する観測も浮上していた。
9月には米クアルコムがインテルに買収を打診したことが明らかになったほか、米投資会社アポロ・グローバル・マネジメントがインテルに最大50億ドルの出資を打診したと報じられた。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
ゲルシンガー氏は就任以来、インテルを技術開発と事業モデルの両面で大胆に変革させようとしました。
「米政府支援に基づく生産拠点拡充」「製造委託事業立ち上げ」「TSMC対抗の新製造プロセス導入」「NVIDIA対抗のAIチップ開発」を同時並行で進めたのです。
ただし、いずれも巨額の投資を要する施策です。
ここに先端CPU需要の鈍化が直撃し、投資と収益のバランスが崩れました。施策はいずれも道半ばで、新製造プロセス(2nm相当の18A)も現時点で良品率に課題を抱えているといいます。
次期暫定CEOの1人はCPU/GPUなど製品の責任者で、今後は製品分野へのリソースの集中が進むことになりそうです。
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日経記事2024.12.02より引用