記者団の取材に応じるデンマークのフレデリクセン首相㊥(コペンハーゲン、16日)=ロイター
【ブリュッセル=辻隆史】
デンマーク首相府は15日、フレデリクセン首相が同日トランプ次期米大統領と電話で協議したと発表した。
トランプ氏が獲得に意欲を見せるグリーンランドの売却を拒否する方針を直接伝えた。
トランプ氏は7日、デンマーク領のグリーンランドが安全保障や経済面での要衝になるとみて、購入に向け軍事力や経済的な手段の行使を排除しない考えを表明した。
フレデリクセン氏は約45分間の電話協議のなかでトランプ氏に対し、グリーンランドの将来は現地の住民が決めるべきだと改めて主張した。グリーンランド自治政府のエーエデ首相は「売り物ではない」などと反発している。
一方でフレデリクセン氏は、北極圏の安全保障体制の強化に向けて米国と協力を広げる考えも伝達した。
北極圏の海域では温暖化で氷がとけ、船舶の運航が増える。ロシアや中国が進出を強めており、米国は警戒する。
同氏はトランプ氏との協議後、地元メディアに「グリーンランドに対する米国の関心の高さを確認した」と語った。
フレデリクセン氏はトランプ氏に対し、デンマーク企業が米国の経済や雇用に貢献しているとも強調した。デンマークには玩具大手レゴや製薬大手ノボノルディスク、風力発電設備のベスタスなどが本拠を置く。
トランプ氏はデンマークが購入の申し出を拒否すれば関税を課す可能性を示唆している。デンマーク側は安保や経済面での協力拡大を前面に打ち出し、グリーンランドに関わる問題への深入りを避けたい考えだ。
デンマーク政府は16日、同国の経済界幹部を集めた会合を開き、今後の対応を話し合った。
日経記事2025.1.17より引用