村田製作所が開発した世界最小のMLCCは長辺でも0.16ミリメートルと目では見にくい大きさだ
村田製作所は25日、2027年度までの中期経営計画を発表した。3年前に発表した前回の中計では20%以上としていた最終年度の売上高営業利益率の目標を18%以上に引き下げた。
主力の積層セラミックコンデンサー(MLCC)でアジア勢との価格競争が激化するとみて、シェア重視で対抗する構えだ。
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「ボリュームゾーンへの対応を強くコミットするため、営業利益率の目標を従来の20%からいったん18%に修正した」。中島規巨社長は25日に東京都内で開いた説明会で、中計の目標数値について、こう語った。
村田製の24年度の連結売上高は前期比4%増の1兆7000億円、営業利益は39%増の3000億円になる見通し。営業利益率見通しは17.6%だ。
27年度には売上高を2兆円強に伸ばしたうえで、利益率を「18%以上」にする目標だ。スマホ向けMLCCが好調だった21年度には23.4%の利益率を記録したことを考えると「控えめ」な目標だ。
MLCCは電子機器の内部で電気の流れを安定させる直方体の部品だ。小さいものだと長辺も1ミリメートル未満で、最新のスマートフォンには1台あたり1000個ほど入っている。
市場規模は2兆円程度と電子部品の中でも大きな製品分野で、村田製は世界シェアの4割を握るトップメーカーだ。
新しい中期経営計画について説明する中島社長(25日、東京都千代田区)
「ナンバーワンの地位をより強固にしたい」。中島社長はシェア向上への意欲も語った。村田製は24年度の自社のMLCCのシェア(金額ベース)を40%としているが、これを30年度に43%に引き上げる目標も公表した。
一見すると地味な目標だが、村田製の関係者は「これまで技術重視でシェア目標はあえて公表してこなかったことを考えると大きな方針転換だ」と語る。
背景にはMLCC市場の構造変化がある。村田製のほか太陽誘電やTDKなど日本勢で高いシェアを持つが、韓国サムスン電機や台湾のヤゲオも存在感を高めている。さらに、
中国でも政府が投資を奨励するなど現地メーカーを育成している。アジアのライバルが普及価格帯で存在感を高めていることに対抗する必要が出てきたかたちだ。
村田製は9月に長辺が0.16ミリメートルと世界最小のMLCCを開発したと発表した。AI(人工知能)対応などで高機能化するスマホやウエアラブル端末への採用をにらみ、25年中にも約10年ぶりに新世代品を投入する構えだ。
微細化で先行する村田製の技術力は「アジア勢より5年ほど先行している」(調査会社オムディアの大庭光恵氏)と評価される。
25日の株式市場では前週末比3〜4%高で推移していた村田製株は中計の資料が適時開示された午後3時以降に上げ幅を縮小し、終値は前週末比1円50銭高の2563円50銭とほぼ変わらずだった。控えめな利益率目標などが影響したとみられる。
中島社長は「AIや自動運転、高速通信などの技術進歩で30年度に向けて電子部品市場が拡大する」と語る。30年度には売上高2兆5000億円を目指し、改めて「20%以上」の利益率目標も掲げる。
今回の中計では次世代通信規格の「6G」に対応した高速通信技術「XBAR(エックスバー)」やデータセンター向け電源装置などMLCC以外の事業の強化策も盛り込んだ。
一方で、23年度に減損損失を計上したリチウムイオン電池事業の売却可能性を問う質問に対しては、中島社長は「常にそういう目線でみている」と語った。スマホ市場の成長で高収益を謳歌した村田製が、次の時代の勝ち筋を固められるのか。市場は注視している。
(新田栄作)
村田製は9月に長辺が0.16ミリメートルと世界最小のMLCCを開発したと発表した。AI(人工知能)対応などで高機能化するスマホやウエアラブル端末への採用をにらみ、25年中にも約10年ぶりに新世代品を投入する構えだ。微細化で先行する村田製の技術力は「アジア勢より5年ほど先行している」(調査会社オムディアの大庭光恵氏)と評価される。
25日の株式市場では前週末比3〜4%高で推移していた村田製株は中計の資料が適時開示された午後3時以降に上げ幅を縮小し、終値は前週末比1円50銭高の2563円50銭とほぼ変わらずだった。控えめな利益率目標などが影響したとみられる。
中島社長は「AIや自動運転、高速通信などの技術進歩で30年度に向けて電子部品市場が拡大する」と語る。30年度には売上高2兆5000億円を目指し、改めて「20%以上」の利益率目標も掲げる。
今回の中計では次世代通信規格の「6G」に対応した高速通信技術「XBAR(エックスバー)」やデータセンター向け電源装置などMLCC以外の事業の強化策も盛り込んだ。一方で、23年度に減損損失を計上したリチウムイオン電池事業の売却可能性を問う質問に対しては、中島社長は「常にそういう目線でみている」と語った。スマホ市場の成長で高収益を謳歌した村田製が、次の時代の勝ち筋を固められるのか。市場は注視している。
(新田栄作)
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