日本の推理小説は、完全に偏見ですがおおまかに2種類に
分けられると考えられ、それは松本清張以前か以後。
「社会派」というジャンルが確立されてから、良くも悪くも犯人
の背後というか、犯罪に至った要因をしっかりと描くことによ
って、忌まわしい過去や時代背景といった現代社会の歪みを
鮮明にするのです。
ところが、アメリカのサスペンスでは、全部とはいいませんが
犯人の全貌はラストあたりにようやく分かってきて、それまで
は正体不明、思考不明のとにかく頭のアレな猟奇的殺人が
次々と発生して、その犯人の背景などはあまり説明されてい
ないものが多いのです。
例を挙げれば「羊たちの沈黙」であったり「ボーン・コレクター」
といったところ。犯行の動機は懸命な捜査で判明するのです
が、そこに至った部分が描けてない。
(もっとも、「羊たちの沈黙」に登場するレクターは続編で、人食
いになった素地というか忌まわしい少年時代が描かれています)
『犯人に告ぐ』も、それまでの日本の推理小説の主流である、
「犯人側をきちんと描く」のではなく、犯人の顔が見えないサス
ペンス要素が盛り込まれ、しかしそれでいて、犯人と警察の対
立構図のアイデアが面白く、展開も飽きさせずにタネあかしを
小出しにする巧みさ(意地悪!と言いたくもなりますが)もあり、
これは久しぶりに出会った傑作です。
端役のあまり仕事の出来ない警官が出てくるのですが、そんな
彼が最終的に大手柄となるあたりが、どんでん返しの筋書きと
いってしまえばそれまでなのですが、なんだか作者の推理小説
にかける愛情、人の良さみたいなものが伺えた気がします。
分けられると考えられ、それは松本清張以前か以後。
「社会派」というジャンルが確立されてから、良くも悪くも犯人
の背後というか、犯罪に至った要因をしっかりと描くことによ
って、忌まわしい過去や時代背景といった現代社会の歪みを
鮮明にするのです。
ところが、アメリカのサスペンスでは、全部とはいいませんが
犯人の全貌はラストあたりにようやく分かってきて、それまで
は正体不明、思考不明のとにかく頭のアレな猟奇的殺人が
次々と発生して、その犯人の背景などはあまり説明されてい
ないものが多いのです。
例を挙げれば「羊たちの沈黙」であったり「ボーン・コレクター」
といったところ。犯行の動機は懸命な捜査で判明するのです
が、そこに至った部分が描けてない。
(もっとも、「羊たちの沈黙」に登場するレクターは続編で、人食
いになった素地というか忌まわしい少年時代が描かれています)
『犯人に告ぐ』も、それまでの日本の推理小説の主流である、
「犯人側をきちんと描く」のではなく、犯人の顔が見えないサス
ペンス要素が盛り込まれ、しかしそれでいて、犯人と警察の対
立構図のアイデアが面白く、展開も飽きさせずにタネあかしを
小出しにする巧みさ(意地悪!と言いたくもなりますが)もあり、
これは久しぶりに出会った傑作です。
端役のあまり仕事の出来ない警官が出てくるのですが、そんな
彼が最終的に大手柄となるあたりが、どんでん返しの筋書きと
いってしまえばそれまでなのですが、なんだか作者の推理小説
にかける愛情、人の良さみたいなものが伺えた気がします。