晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『長い長い殺人』

2010-07-09 | 日本人作家 ま
今まで、トータル何冊宮部みゆきの作品を読んできたかわかりませんが
(本棚を見ればわかるけど面倒くさいのです)、しかしすごいのは、どれ
ひとつとして「ハズレ」の作品がない、ということ。

まあ、人によって向き不向きもあるでしょうけど、この『長い長い殺人』は、
ある意味、冒険心にあふれた、といいますか、着眼点が斬新といいますか、
物語の語り手は、登場人物の「財布」なのです。そう、お金とかカードを
入れておく財布。

一人称が財布、ということで、その持ち主の金銭事情がもっとも当事者とも
いえる財布によって語られてゆくのです。
金銭事情だけではなく、よもやまのプライベートな、あるいは「事件」(タイトル
に「殺人」とあるだけに)を目撃する財布。自分に入ってくるお金は、はたして
きれいな金なのか、汚い金なのか。

第1章は、刑事の財布。娘も成長し、薄給なのに無理をして買った家のローンで
毎日が「きゅうきゅう」の生活。もうボロボロになった財布を持ち、仕事に出かけ
ます。新しい財布を買えばいいのにとの妻の言葉にも、身分不相応な家を買った
ばかりに貧乏風情だなと皮肉を言います。

ひき逃げの犯行現場に到着し、目撃者の談を嘘と見抜く老練の刑事・・・

それから、物語は、ひき逃げされ死亡した男の妻、男が通ってたスナックの
ホステス、妻の愛人、愛人の婚約者、その婚約者の甥、等々の登場人物の
財布が語り手となって、一連の殺人事件をなぞっていきます。

あれ、なんだかこの展開、どこかで読んだことがあるな、という既視感があり、
それは、同じ作者の「模倣犯」なんだ、と。
具体的にどこらへんが展開が似てるのか、とぢらもあるいは片方しか読んでない
という方のために明かすことはできませんが、その、なんというか、「策士、策に
溺れる」とだけ書いておきましょうか。

コメント
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