晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『だいこん』

2013-01-26 | 日本人作家 や
たまに疑問に思うのですが、文庫本で、一冊が600ページを超える、
けっこう分厚いのがあるのに、両方が200ページちょっとしかない
上下巻というのもあったり、どちらにメリットがあるとも言い難い
ですが。

そんな、文庫にして600ページを越す長編作品の『だいこん』。しかし、
読み終わってみると、いやいや、さらに同じ量の下巻も出してくれ、と
思ってしまうこと請け合い。別に終わらせ方に不満があるわけではあり
ませんが、続きがすごく気になります。

江戸の中期、浅草の大工、安治と妻みのぶの間に、女の子が産まれます。
名前は「つばき」。つばきの下の子は、さくら、かえでと3人娘。

浅草で人気の一膳飯屋「だいこん」の女あるじ、さくらは、浅草の店を
たたんで、何の縁もない深川で、新しい飯屋をはじめようとします。
これにはあるいきさつがあるのですが、それはさておき、普請を見ていた
つばきの前に渡世人が来ます。なんでも深川を仕切る「閻魔堂の弐蔵」
の下っ端で、挨拶に来い、と連れて行かれます。
そこで弐蔵と顔を合わせるつばきでしたが「伸助おじさんでしょ?」と。
一方、弐蔵も「つばき坊か?」などと。このふたりの関係は・・・

安治は棟梁からの信頼も厚い、良い腕の大工なのですが、ひょんなこと
から博奕で借金を作ってしまい、働いても働いても借金の利息分で月の
稼ぎのほとんどが消えて、当然暮らしもきびしくなり、母みのぶは幼い
かえでとまだ赤ん坊のさくらを近所に預けて、蕎麦屋で働くことに。

このとき、かえでがみのぶの働く姿を見て、自分も将来は飲食関係で
働くのだ、と決意します。

借金取りの伸助は、雨続きで大工仕事が休みになると安治の稼ぎが無い
ので、仕事を斡旋に来たり、その他、何かとこの家族を心配します。
が、幼いかえでにとって、”おじさん”が家に来ると、たちまち父母の
機嫌が悪くなる(借金取りということをよく分かってない)ので、本能的
に「この人キライ」となるわけですが、ある日など、「お前なんかタコだ」
(両手の小指が無いので指が八本だから)と言って伸助をキレさせたり
します。

ある年の大火事で、江戸の一帯が甚大な被害に遭い、伸助の組は解散、これで
安治の借金は棒引きとなります。

水が引いて、男たちは後片付け、女たちは炊き出しをして、みのぶとかえで
は炊き出しに参加します。
そこで、かえでの炊いたご飯がとても美味しいと評判になり、火の見番の
食事を任されることに。

もともと腕の良い大工の安吉の稼ぎで、借金さえなければ家族が食べていくに
充分なので、火の見番の調理の給金は貯めることに。そして相当な額になると、
かえでは浅草に一膳飯屋を開くことに。店にする物件の裏庭は畑ができるくらい
広く、ここで大根を植えることに。漬物にもおかずにも最適な大根。ということ
で、お店の名前を「だいこん」にします。

酒は出さず、安価で食べ放題というシステム、そしてもちろん飯の味が好評で
売り上げはぐんぐん伸びていきます。
人手が欲しくなり、母みのぶはご近所さんにお願いしようとしますが、かえでは
断固反対します。その理由は、余計な感情が入ると人を使いにくい、ということ。
さらに「ひとってわからないから」と。まだ十代とは思えない怜悧なかえで。

ここからかえでは新しいビジネスに次々と着手していき、かえでの人柄もあって、
それらが成功。ですが、かくかくしかじかで繁盛していた浅草の店をたたんで、
深川に移ってくるのですが、どうなることやら・・・

ところで、弐蔵こと”伸助おじさん”は、かえでが新しい店を開く際に、みかじめ
料的なものを、と考えていたのですが、かえでの口からとんでもない大物の名前が
出てきて、参りました、と諦めます。逆に、何かトラブルがあったらいつでも助け
てやる、とまで。
その”大物”とは、山本一力作品にたびたび登場する、今戸の芳三郎。ここにも
出てきたか、というくらい頻繁に出てきますね。

女性が主人公で、少女期から大人に、つよくたくましく生きる、まるで朝ドラのよう。
いやじっさい朝ドラでやってほしいくらい。深川に移転した「だいこん」がこれから
どうなるのか。
コメント
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