晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宇江佐真理 『大江戸怪奇譚 ひとつ灯せ』

2018-06-07 | 日本人作家 あ
この前の前の投稿で「宇江佐さんの未読本は少しずつ
読んでいく」と書いておきながら、さっそく。

まあ、全部読み終えたとしても、初めのころに読んだ
作品はあまり覚えてないので、再読でもすればいいの
です。

再読したくなる作家(作品)と、1回読んでもういいや
と思う作家(作品)って、あるのです。
「自分との相性」がありますから、再読しない作品でも
世の中では名作と呼ばれるものもあったりします。

相変わらずどうでもいい前置きですが、『ひとつ灯せ』
は、サブタイトルに(怪奇)とあるように怪談です。
といっても、稲川淳二さん的なのとはちょっと違って、
「長い間生きてたら理屈では解明できないことってある
よね」といった、不思議な出来事を、大人たちが語る、
そんな話。

料理茶屋「平野屋」の主、清兵衛は、五十三歳になり、
隠居します。すると具合が悪くなり、友人の甚助が見
舞いに来ても「もうわしはだめだ」と言います。

すると甚助、いきなり般若心経を唱えだし「ここはお
前が来るところではない」と(見えない何か)に叫び、
「これで大丈夫、明日には床払いできるよ」と言うと
清兵衛は翌朝、体が軽く感じ、ご飯も平らげて散歩に
も出られるように。

清兵衛は死神を追っ払ってくれた甚助に御礼に伺うと
甚助は清兵衛に、ある(遊び)に誘います。それは、
世間でいう酒だ女だといった遊びではなく、怖い話を
ひとりずつ話していく会。といっても「百物語」のよ
うな本格的なものではなく、不思議な話を酒の肴に話
す程度のもの。

興味を持った清兵衛は甚助に付いて行くと、菓子屋の
主、浄瑠璃の師匠、町医者、論語の先生、北町奉行所
の同心と、そこら辺の町家の連中とは違います。
ちなみに甚助は蝋燭問屋。

さて、本日の話は、医者の山田玄沢。ある藩での奇妙
な話から始まり、次いで論語の先生が似たような話を
します。ですが、清兵衛は、面白くはありましたが、
別に恐ろしくは感じませんでした。

ですが、家に戻り、女房と土産にもらった菓子を食べ
ていると急にさっきの会での話が頭に浮かび、清兵衛
は恐怖に震え・・・

みんなそれぞれいい年の大人で、経験も豊富。そんな
人たちが集まってあんな話やこんな話をしていくので
すが、清兵衛は、つまらないことで菓子屋の主の恨み
を買うことに・・・

といったような、これといって大事件も起きない地味
な作品ではありますが、これが「地味」というよりは
「滋味」といった感じで、心に豊かで深い味わいがじ
んわりと沁み込んでいくよう。
コメント
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