この時期は、読書しながらお菓子とあったかい飲み物がいいですね。サバランに砂糖抜きのミルクティー、またはどら焼きにほうじ茶。
そんな乙女チックな一面を垣間見せたところで。
井上靖さんです。この作品は国語のテストなどでも採用されているそうで、それで知っているという方も多いのでは。なんでも小学生の課題図書に選ばれているそうで、つまり読書感想文ですね。でもこれ、小学生が読んでもあんまりピンと来ないんじゃないですかね。
タイトルの『しろばんば』とは、おそらく(雪虫)のことで、北海道では雪虫がフワフワと飛ぶとそろそろ雪の季節になるという晩秋の風物詩的な存在ですが、物語の舞台である温暖なイメージの伊豆でも見られるんだとちょっとびっくり。
主人公の洪作は、五歳から(おぬい婆さん)と、土蔵に住んでいます。婆さんといっても、洪作の実の祖母ではなく、もともとは洪作の曽祖父の妾で、曽祖父の孫娘がおぬい婆さんの養女になります。この曽祖父の孫娘というのが洪作の母。ではなぜ洪作がおぬい婆さんと一緒に住んでいるかというと、洪作の父親が軍医で、娘つまり洪作の妹が生まれて、上のお兄ちゃんを一時期(預けた)ということになっていますが、おぬい婆さんにとってみれば洪作の面倒を見るということは愛人の本家に住まわせてもらう格好の理由というわけ。本家の家族の住む家は(上の家)と呼んでいて、上の家には洪作の実の祖父母や洪作の叔母(母の妹)や従兄弟が住んでいます。両親と妹は、洪作の住む伊豆から遠く離れた愛知県の豊橋に住んでいます。
本家から見ればおぬい婆さんは妾の分際で土蔵にちゃっかり住み着いてあろうことか洪作を人質に取っている憎らしい存在で、おぬい婆さんも負けじと「躾のなってない○○」といったふうに悪意の形容詞付きで、洪作に毎日毎日上の家の人たちの悪口を吹き込みます。
そんな、けっして良い家庭環境とはいえない状況下で過ごす洪作ですが、けっこうスクスクノビノビと育っています。もっとも、洪作の住む伊豆の山村のような土地柄だと密接なコミュニティ(ムラ社会)が形成されて、周囲の大人が子どもたちの成長を見守っている全員親戚のような状態で、さらに、洪作の叔母にあたる上の家に住むさき子は洪作の通う小学校の教師で、校長は洪作の伯父にあたります。こんな環境ではグレたくてもグレられません。
洪作の家族が住む豊橋までおぬい婆さんと出かける話、運動会の話、さき子と同僚の教師との恋愛話、上級生が神隠しにあった話、「帝室林野管理局」の家族との話、椎茸栽培をしている祖父の話、バス対馬車の話、洪作が猛勉強をする話とその家庭教師の話、そして終わりでは洪作が引っ越す話となっています。
今まで井上靖さんの作品はいくつか読んできましたが、けっこう「かため」な印象だったのですが、この作品は、思わずくすっと笑ってしまう、どことなくユーモラス。
前に読んだ「あすなろ物語」も、主人公の少年が血のつながってない老婆と土蔵に住んでいますね。しかも舞台も伊豆。ですが作者いわく「あすなろ物語は」創作で「しろばんば」は自伝的、なんだそうです。
そういえば、後半で石川さゆりさんの「天城越え」でお馴染みの「浄蓮の滝」が出てきて「おー」となりました。ちなみにこの滝の近くに「伊豆の踊子」の像があるらしいのですが、川端康成の小説ではこの滝は出てきませんよね。
そんな乙女チックな一面を垣間見せたところで。
井上靖さんです。この作品は国語のテストなどでも採用されているそうで、それで知っているという方も多いのでは。なんでも小学生の課題図書に選ばれているそうで、つまり読書感想文ですね。でもこれ、小学生が読んでもあんまりピンと来ないんじゃないですかね。
タイトルの『しろばんば』とは、おそらく(雪虫)のことで、北海道では雪虫がフワフワと飛ぶとそろそろ雪の季節になるという晩秋の風物詩的な存在ですが、物語の舞台である温暖なイメージの伊豆でも見られるんだとちょっとびっくり。
主人公の洪作は、五歳から(おぬい婆さん)と、土蔵に住んでいます。婆さんといっても、洪作の実の祖母ではなく、もともとは洪作の曽祖父の妾で、曽祖父の孫娘がおぬい婆さんの養女になります。この曽祖父の孫娘というのが洪作の母。ではなぜ洪作がおぬい婆さんと一緒に住んでいるかというと、洪作の父親が軍医で、娘つまり洪作の妹が生まれて、上のお兄ちゃんを一時期(預けた)ということになっていますが、おぬい婆さんにとってみれば洪作の面倒を見るということは愛人の本家に住まわせてもらう格好の理由というわけ。本家の家族の住む家は(上の家)と呼んでいて、上の家には洪作の実の祖父母や洪作の叔母(母の妹)や従兄弟が住んでいます。両親と妹は、洪作の住む伊豆から遠く離れた愛知県の豊橋に住んでいます。
本家から見ればおぬい婆さんは妾の分際で土蔵にちゃっかり住み着いてあろうことか洪作を人質に取っている憎らしい存在で、おぬい婆さんも負けじと「躾のなってない○○」といったふうに悪意の形容詞付きで、洪作に毎日毎日上の家の人たちの悪口を吹き込みます。
そんな、けっして良い家庭環境とはいえない状況下で過ごす洪作ですが、けっこうスクスクノビノビと育っています。もっとも、洪作の住む伊豆の山村のような土地柄だと密接なコミュニティ(ムラ社会)が形成されて、周囲の大人が子どもたちの成長を見守っている全員親戚のような状態で、さらに、洪作の叔母にあたる上の家に住むさき子は洪作の通う小学校の教師で、校長は洪作の伯父にあたります。こんな環境ではグレたくてもグレられません。
洪作の家族が住む豊橋までおぬい婆さんと出かける話、運動会の話、さき子と同僚の教師との恋愛話、上級生が神隠しにあった話、「帝室林野管理局」の家族との話、椎茸栽培をしている祖父の話、バス対馬車の話、洪作が猛勉強をする話とその家庭教師の話、そして終わりでは洪作が引っ越す話となっています。
今まで井上靖さんの作品はいくつか読んできましたが、けっこう「かため」な印象だったのですが、この作品は、思わずくすっと笑ってしまう、どことなくユーモラス。
前に読んだ「あすなろ物語」も、主人公の少年が血のつながってない老婆と土蔵に住んでいますね。しかも舞台も伊豆。ですが作者いわく「あすなろ物語は」創作で「しろばんば」は自伝的、なんだそうです。
そういえば、後半で石川さゆりさんの「天城越え」でお馴染みの「浄蓮の滝」が出てきて「おー」となりました。ちなみにこの滝の近くに「伊豆の踊子」の像があるらしいのですが、川端康成の小説ではこの滝は出てきませんよね。