この本に収録されている短編「柘榴坂の仇討」が映画化されるようで、
まだ読んでないや、ということで、さっそく買ってきました。
全6話の短編なのですが、すべて時代は明治初期で登場人物は元武士。
鎌倉、室町、江戸と続いてきた武家政権が終わり、新しい時代に変わって、
まあいつの世にも機を見るに敏な人もいたわけで、一方、武士であること
が生きる”よすが”で、そう簡単に「明日から武士じゃありませんよー」
と言われたところでハイそうですかと肯けるわけじゃありません。
そんな時代の変化に翻弄される元武士のお話。
「椿寺まで」では、日本橋の商人、小兵衛が店の小僧の新太をつれて
八王子に反物を買い付けに行く道中からはじまります。
この道では”追いはぎ”が多発していて、小兵衛たちも追いはぎに
やられそうになりますが、小兵衛は返す刀で追い払います。
江戸から甲州街道を八王子方面に行くと最初の宿はたいてい府中ですが、
小兵衛と新太は手前の布田で一泊します。
新太はずっと、役立たずの自分を買い付けの供にした理由が分からなかった
のですが、ここで小兵衛から、「お前を連れてきたのにはわけがある」
と言われ・・・
「箱館証文」では、工部小輔(明治の中央官庁、工部省の上のほうの役職)
の大河内厚が主人公。大河内のもとに、「警察官、渡辺一郎」と名乗る
男がたずねてきます。すると渡辺、「大河内伊三郎どの」と大河内の旧名
を知っているようで、さらに、千円をもらいに来た、と。
元徳島藩士、大河内伊三郎と、渡辺と名乗る元武士の中野伝兵衛の間に
交わされた約束とは・・・
「西を向く侍」では、幕府の天文方、成瀬勘十郎が主人公。新政府になり、
出仕を待っていますが、もう5年が経ちます。なかなか声がかからない中、
政府は、旧暦から西洋式の暦に変更することに決めます。これに納得の
行かない勘十郎は文部省に直談判に・・・
「遠い砲音」では、近衛砲兵隊中尉の土江彦蔵が主人公。官舎に住まず、
今でも”殿さま”のもとで暮らしています。”殿さま”とは毛利家の
分家大名で、今では下屋敷住まいで、仕えているのは彦蔵とその息子のみ。
彦蔵は新しい時間単位に馴染めずに遅刻ばかり。ミニウト(分)、セカンド
(秒)などややこしいのですが、砲兵は空砲を撃って時間を知らせる重要な
役割であって、早く慣れなければならなず・・・
「柘榴坂の仇討」では、元彦根藩井伊掃部頭(かもんのかみ)御駕籠回り近習、
志村金吾が主人公。江戸城に登城するときに殿様が乗る駕籠の横に付く役。
安政七年三月、雪の日の朝、登城しようとした途中、刺客に襲われます。そう、
これが「桜田門外の変」で、あの時、金吾は駕籠の横にいて何もできず、国元
の両親は自害し、御録預かりになります。せめて水戸の刺客を仇討でもしなけ
ればとしていたところ幕府は倒れ、明治政府に。あれから13年過ぎて、金吾
は生き残りを探すのですが、政府から「仇討禁止令」が・・・
そして表題作「五郎治殿御始末」は、「私」と曾祖父の話。「私」には曾祖父
の記憶はほとんどないのですが、一度、曾祖父が小刀で栗の皮を剥いていた
ときに近づこうとした「私」をきつく叱ったのです。すると
「わたしはおまえの年頃に、いちど死に損なった」と言ったのです・・・
曾祖父、半之助は、桑名藩の家来、岩井家の生まれで、父は幕府軍として北越の
戦いで死に、母は旧尾張藩の出で実家に戻って、残されたのは半之助とその祖父
のみ。祖父は残った旧藩士の整理を終えて、半之助を母のところに連れて行く
ことに。そして祖父は・・・
読んでいて、なんとなく「ダンス・ウィズ・ウルブズ」を思い出しました。
建物から文化風習までそれまであったものを片っぱしから”ぶっ壊して”いった
感のある明治新政府ですが、それまで700年も続いた武家政権を否定する
にはそこまでしなければならなかったという新政府側の心中もわからないわけ
ではありませんけどね。
まだ読んでないや、ということで、さっそく買ってきました。
全6話の短編なのですが、すべて時代は明治初期で登場人物は元武士。
鎌倉、室町、江戸と続いてきた武家政権が終わり、新しい時代に変わって、
まあいつの世にも機を見るに敏な人もいたわけで、一方、武士であること
が生きる”よすが”で、そう簡単に「明日から武士じゃありませんよー」
と言われたところでハイそうですかと肯けるわけじゃありません。
そんな時代の変化に翻弄される元武士のお話。
「椿寺まで」では、日本橋の商人、小兵衛が店の小僧の新太をつれて
八王子に反物を買い付けに行く道中からはじまります。
この道では”追いはぎ”が多発していて、小兵衛たちも追いはぎに
やられそうになりますが、小兵衛は返す刀で追い払います。
江戸から甲州街道を八王子方面に行くと最初の宿はたいてい府中ですが、
小兵衛と新太は手前の布田で一泊します。
新太はずっと、役立たずの自分を買い付けの供にした理由が分からなかった
のですが、ここで小兵衛から、「お前を連れてきたのにはわけがある」
と言われ・・・
「箱館証文」では、工部小輔(明治の中央官庁、工部省の上のほうの役職)
の大河内厚が主人公。大河内のもとに、「警察官、渡辺一郎」と名乗る
男がたずねてきます。すると渡辺、「大河内伊三郎どの」と大河内の旧名
を知っているようで、さらに、千円をもらいに来た、と。
元徳島藩士、大河内伊三郎と、渡辺と名乗る元武士の中野伝兵衛の間に
交わされた約束とは・・・
「西を向く侍」では、幕府の天文方、成瀬勘十郎が主人公。新政府になり、
出仕を待っていますが、もう5年が経ちます。なかなか声がかからない中、
政府は、旧暦から西洋式の暦に変更することに決めます。これに納得の
行かない勘十郎は文部省に直談判に・・・
「遠い砲音」では、近衛砲兵隊中尉の土江彦蔵が主人公。官舎に住まず、
今でも”殿さま”のもとで暮らしています。”殿さま”とは毛利家の
分家大名で、今では下屋敷住まいで、仕えているのは彦蔵とその息子のみ。
彦蔵は新しい時間単位に馴染めずに遅刻ばかり。ミニウト(分)、セカンド
(秒)などややこしいのですが、砲兵は空砲を撃って時間を知らせる重要な
役割であって、早く慣れなければならなず・・・
「柘榴坂の仇討」では、元彦根藩井伊掃部頭(かもんのかみ)御駕籠回り近習、
志村金吾が主人公。江戸城に登城するときに殿様が乗る駕籠の横に付く役。
安政七年三月、雪の日の朝、登城しようとした途中、刺客に襲われます。そう、
これが「桜田門外の変」で、あの時、金吾は駕籠の横にいて何もできず、国元
の両親は自害し、御録預かりになります。せめて水戸の刺客を仇討でもしなけ
ればとしていたところ幕府は倒れ、明治政府に。あれから13年過ぎて、金吾
は生き残りを探すのですが、政府から「仇討禁止令」が・・・
そして表題作「五郎治殿御始末」は、「私」と曾祖父の話。「私」には曾祖父
の記憶はほとんどないのですが、一度、曾祖父が小刀で栗の皮を剥いていた
ときに近づこうとした「私」をきつく叱ったのです。すると
「わたしはおまえの年頃に、いちど死に損なった」と言ったのです・・・
曾祖父、半之助は、桑名藩の家来、岩井家の生まれで、父は幕府軍として北越の
戦いで死に、母は旧尾張藩の出で実家に戻って、残されたのは半之助とその祖父
のみ。祖父は残った旧藩士の整理を終えて、半之助を母のところに連れて行く
ことに。そして祖父は・・・
読んでいて、なんとなく「ダンス・ウィズ・ウルブズ」を思い出しました。
建物から文化風習までそれまであったものを片っぱしから”ぶっ壊して”いった
感のある明治新政府ですが、それまで700年も続いた武家政権を否定する
にはそこまでしなければならなかったという新政府側の心中もわからないわけ
ではありませんけどね。
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