晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

梁石日(ヤン・ソギル) 『血と骨』

2009-01-25 | 日本人作家 や
小説の本質とは、当然のことながら、物語の筋がきちんと書けている
のと、作中の登場人物に共感し、喜んだり、怒ったりできることだと
思うので、つまり、人物をきちんと描けてこその共感といえるのです
が、これが主人公が殺人鬼であったり、どうしようもない最低な人物
だったりしても、この場合は共感というものは持てないのですが、し
かし、どんなに人物に嫌悪していたとしても「こいつの生き様を見届
けてやる」と読ませきることができていれば、それは良い小説といえます。

この小説の主人公、在日朝鮮人の金俊平は、図体大きく、喧嘩強く、
凶暴で、酔えば暴れ、というようなヤクザも逃げ出すような男。

気に入った女がいれば力ずくでものにする、その女とのあいだに子供
ができたとしても、家庭を顧みるような優しさは持ち合わせていない。

とにかく、他人から様々な恩恵は受けるのですが、それに感謝し、
恩返ししようなどとは、露ほども思えないのです。

彼の非人間性も酷いのですが、当時の日本における在日朝鮮人に対する
扱いもこれまた非人道的なものがあり、だからプラマイゼロというわけ
ではないのですが、一分の同情くらいは向けることができる、かな。

善悪は別にして、圧倒的な存在感。

彼や彼の家族を助ける同郷や近所の人たちの存在は、この小説を読んで
いる中で、ホッとさせてくれます。
絶望的な境遇で生まれ育つと、このような凶暴性を持つ人間が育つのも
むべなるかな、とはいうものの、周りの互助精神は保たれているのです。

強烈な作品です。怒りと悲しみを込めて読み進みました。

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