晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

野沢尚 『恋愛時代』

2010-07-02 | 日本人作家 な
この作品は、江戸川乱歩賞受賞作「破線のマリス」の前に書かれた作品で、
あとがきの池上冬樹さんの解説にもあったのですが、テレビや映画の脚本家
、つまり「映像畑の人間」が書く小説はドラマのノヴェライズのような脆弱さ
を予想していたが違った、とあり、なるほど確かにたっぷりと読ませる筆の力
を感じました。

衛藤はる、26歳。スポーツジムのインストラクター。そして早勢理一郎、34歳。
渋谷の書店で働いております。このふたりは2年前まで夫婦だった…結婚生活わずか
1年半という短い結婚生活を終えます。原因は数あれど、直接は、はじめての子ども
が死産で、悲しみに打ちひしがれるはるを残し「仕事が」と言って理一郎は病院から
消えます。

息子の墓参りに今年も顔を合わせ、そのまま食事に繰り出すふたり。しかし、
話すことといえば憎まれ口。そして、お互いが幸せになるよう、それぞれが
ふさわしい再婚相手を見つけようじゃないかと約束。

はるの妹の大学生しず夏、理一郎の幼なじみで産婦人科医(はるの死産に立ち会った)
海江田は、そんなふたりを「意地の張り合い」と冷めた目で見ています。
外から見れば、まだふたりは愛し合っていて、また元通りになればいいのに、と
思っているのですが、当人同士の亀裂は深いのです。

そんな中、理一郎の書店にひとりの男が来ます。はると理一郎の結婚式の時にいた
式場の係、永富でした。ふたりが離婚したと聞き、じつははるさんに興味があったと
言う永富。というのも、式の直前、理一郎は永富にはるの事を洗いざらい話していた
のでした。

そうして永富とはるを引き合わせた理一郎。一方、はるはスポーツジムで再会した
故郷長崎の小学校時代の友達、かすみを理一郎に紹介します。

はたしてふたりの恋の行方は・・・それともふたりは意地の張り合いをやめて
「モトサヤ」に戻るのか・・・

正直、恋愛小説のたぐいは、過去に読んだ、ある海外の恋愛小説で懲りている
(ぶっちゃけ、面白くなかったというか、自分には向いてないと思った)ので、
タイトルでずばり「恋愛時代」ですから、どうなのかなあ、と思っていたのですが、
杞憂も杞憂、冒頭書いたように、筆の力でぐいぐいと引き込まれ、人物描写も
お見事、セリフまわしも「さすが脚本家」だけあって上手だし、そして、不意打ち
食らったかのように、いきなり泣ける場面が来たりして、読むものを飽きさせない
素晴らしい作品です。

もし、恋愛小説は苦手、そのジャンルは手を出さない、という方がいらっしゃったら、
『恋愛時代』はそんじょそこらのヤワな作品ではありませんので、ぜひ騙されたと
思って読んでみてください。

コメント
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