22日に夜の部を見てきました。2階席3列目上手側です。
①神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)
お舟…片岡孝太郎
六蔵…市川猿弥
新田義峯…坂東薪車
傾城うてな…市川春猿
頓兵衛…坂東弥十郎 他
福内鬼外(ふくうちきがい)作。
この人、実は有名な蘭学者 平賀源内のペンネームです。
合戦後、足利家に追われる身となった新田義峯は、傾城のうてなを連れて、お舟に一夜の宿を請います。お舟は断りますが、義峯を一目見て心を奪われ、宿を許します。しかしそこは義峯の兄・義興を殺した頓兵衛の家だったのです。
義峯に恋するお舟は二人を逃がし、身代わりに父・頓兵衛の刀にかかりますが、落人を捕まえた合図の太鼓を打てば、義峯を追った人々も囲みを解き、その間に二人は逃げられるだろうと考え、太鼓を必死で打ちます。
頓兵衛はなおも舟で義峯の後を追いますが、頓兵衛によって殺された義興の恨みの一矢が放たれ、最期をとげるのでした。
感想
薪車さんと春猿さん、スラッとしていて美男美女カップルです
春猿さんは、猿之助さんのスーパー歌舞伎での印象が強かったので、今回拝見して、「とっても魅力的な方だなぁ」と思いました。他のお役も見てみたいです。
頓兵衛は「金のためなら何でもやってやる」って感じの、強欲の固まりのような人です。髪も眉毛も髭も皆モジャモジャで、顔も「悪」という字が見えてきそうなお化粧です。
一番印象に残っているのは、刀のツバを鳴らしながらの頓兵衛の動きです。「蜘手鮹足(くもてたこあし)」という動きだそうです。あの独特の動きは言葉では説明できませんが、「蜘手鮹足」とは上手くつけたなと思います。まさにその通りです。
最期は矢が喉に突き刺さり死んでしまいますが、あの矢はどうやって刺さったんでしょうか?全然分かりませんでした
この舞台の主役は、なんと言ってもお舟の孝太郎さん。
見せ場がとても多いです。
義峯に一目惚れしてコロッと態度が変わる所や、連れのうてなへの素っ気ない態度、義峯に「ようおいでなさりましたなぁ」と何度も言って嬉しさを表す所は、娘らしくとても可愛かったです
かと思えば、好きな人を命を捨ててまで守るという芯の強さも持っていて、大きな役だなと思いました。
孝太郎さんは初役だったそうですが、ピッタリの役だったのではないでしょうか?
②仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
〈落人〉
早野勘平…片岡仁左衛門
腰元おかる…坂東玉三郎
早野勘平は主君の一大事に居合わせなかったことを恥じ、腹を切ろうとしますが、恋人のおかるに止められます。
その二人が、おかるの実家である京都山崎へ向かう道中を描く舞踊劇です。
感想
仁左衛門さんと玉三郎さん、やっぱり美しい
錦絵とは良く言ったものです。
桜が咲いて、菜の花が咲いて、富士山も見え、その中に美しい男女。
舞台がパーッと華やかなだけに、2人のもの悲しい感じが際だっていました。
でも最後の花道での「おかる、おじゃ」「あーい」は、幸せいっぱいに見えました。
〈五.六段目〉
早野勘平…片岡仁左衛門
女房おかる…坂東玉三郎
斧定九郎…片岡愛之助
千崎弥五郎…市川段治郎
不破数右衛門…坂東弥十郎
与市兵衛女房おかや…坂東竹三郎 他
おかるの実家に身を寄せる勘平は、山崎街道でかつての同士 千崎弥五郎に会い、仇討ち資金の調達を約束します。
一方、おかるの父 与市兵衛は、その資金をおかるを祇園に売ることで得ようとし、その前金50両を手にしますが、山賊の斧定九郎に殺され金を奪われます。
そこに偶然通りがかった勘平が、定九郎を猪と間違えて撃ってしまいますが、懐の50両に気付き、悪いこととは知りながらそれを弥五郎に渡します。
家へ帰った勘平は自分が撃ったのが与市兵衛だと早合点し、そこへやって来たかつての朋輩の弥五郎と数右衛門に追いつめられ、腹を切ります。しかしその直後、与市兵衛の傷が刀傷だったことから勘平の疑いは晴れ、仇討ちの連判状に名を連ねることを許され、安堵して息を引き取るのでした。
感想
実に良くできた話だなと思います。究極の悲劇ですね
愛之助さん扮する定九郎、今でも目に焼き付いています。
昨年の4月の浪花花形歌舞伎でこの演目を見たのですが、定九郎はあんまり記憶に残っていません。その時は鴈治郎さんでした。もっと殺す時に揉みあっていたような気がします。
今回の定九郎は、与市兵衛を殺し、セリフも「50両」のったった一言。すぐに勘平に鉄砲で撃たれて死んでしまいますが、まさしく悪の華で、ゾクゾクしてしまいました。下手すると、勘平よりも目立ってしまう役なのではないでしょうか?
熱演が光っていたのはおかるの母親役の竹三郎さん
母親として妻として姑としての気持ちが入り乱れていました。
祇園へ売られていくおかるに、「祇園ではお客のために髪を切ったり、指を切ったりするらしい。髪は切っても伸びるが、指は…(涙)」セリフはちゃんと覚えていませんが、そうなんですよね。昔の遊女は「私はあなたのもの」という証に、髪を切ったり指を切ったりしたそうです。恐ろしい世界です…
さて勘平ですが、昨年見た時は、誤って舅を殺してしまった言い訳をするため切腹した勘平に、涙があふれてボロボロでしたが、今回は勘平の「侍に戻りたい」という気持ちを強く感じ、最後は「侍に戻れて良かった」という気持ちを感じました。
番付のインタビューで仁左衛門さんが、「お客さんが勘平の悲しみを引きずったままでも困る」とおっしゃっています。
4月の時は思いっきり引きずりました。
今回は涙は出ませんでしたが、「勘平、侍に戻れて良かったね」という気持ちになりました。
4月は上方風、今回は東京風の型だそうで、その違いもあるのかもしれません。
次回見ることがあれば、どちらの気持ちになれるのか、楽しみです
③春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)
曽我五郎…市川猿弥
曽我十郎…市川段治郎
静御前…市川春猿
曽我五郎、十郎に静御前が絡み、七草行事を題材に踊る長唄舞踊です。
感想
どうも今回は春猿さんに魅了されます。なぜでしょう?
理由はまだ分からずにいます。
舞踊は苦手なため、理解は出来ていませんが、終わりにふさわしい、清々しい舞踊で、眠ることもなくしっかりと見させて頂きました。
もっと舞踊を勉強しようと思います。
昼夜を通して、力の入る演目が多く、堪能しました。
同じ演目でも、型や演じる役者さんによって、私自身の感じ方も違ってくる事に面白さを感じました。この面白さに気付いたら、ますます歌舞伎にはまってしまうんでしょうね。
①神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)
お舟…片岡孝太郎
六蔵…市川猿弥
新田義峯…坂東薪車
傾城うてな…市川春猿
頓兵衛…坂東弥十郎 他
福内鬼外(ふくうちきがい)作。
この人、実は有名な蘭学者 平賀源内のペンネームです。
合戦後、足利家に追われる身となった新田義峯は、傾城のうてなを連れて、お舟に一夜の宿を請います。お舟は断りますが、義峯を一目見て心を奪われ、宿を許します。しかしそこは義峯の兄・義興を殺した頓兵衛の家だったのです。
義峯に恋するお舟は二人を逃がし、身代わりに父・頓兵衛の刀にかかりますが、落人を捕まえた合図の太鼓を打てば、義峯を追った人々も囲みを解き、その間に二人は逃げられるだろうと考え、太鼓を必死で打ちます。
頓兵衛はなおも舟で義峯の後を追いますが、頓兵衛によって殺された義興の恨みの一矢が放たれ、最期をとげるのでした。
感想
薪車さんと春猿さん、スラッとしていて美男美女カップルです
春猿さんは、猿之助さんのスーパー歌舞伎での印象が強かったので、今回拝見して、「とっても魅力的な方だなぁ」と思いました。他のお役も見てみたいです。
頓兵衛は「金のためなら何でもやってやる」って感じの、強欲の固まりのような人です。髪も眉毛も髭も皆モジャモジャで、顔も「悪」という字が見えてきそうなお化粧です。
一番印象に残っているのは、刀のツバを鳴らしながらの頓兵衛の動きです。「蜘手鮹足(くもてたこあし)」という動きだそうです。あの独特の動きは言葉では説明できませんが、「蜘手鮹足」とは上手くつけたなと思います。まさにその通りです。
最期は矢が喉に突き刺さり死んでしまいますが、あの矢はどうやって刺さったんでしょうか?全然分かりませんでした
この舞台の主役は、なんと言ってもお舟の孝太郎さん。
見せ場がとても多いです。
義峯に一目惚れしてコロッと態度が変わる所や、連れのうてなへの素っ気ない態度、義峯に「ようおいでなさりましたなぁ」と何度も言って嬉しさを表す所は、娘らしくとても可愛かったです
かと思えば、好きな人を命を捨ててまで守るという芯の強さも持っていて、大きな役だなと思いました。
孝太郎さんは初役だったそうですが、ピッタリの役だったのではないでしょうか?
②仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
〈落人〉
早野勘平…片岡仁左衛門
腰元おかる…坂東玉三郎
早野勘平は主君の一大事に居合わせなかったことを恥じ、腹を切ろうとしますが、恋人のおかるに止められます。
その二人が、おかるの実家である京都山崎へ向かう道中を描く舞踊劇です。
感想
仁左衛門さんと玉三郎さん、やっぱり美しい
錦絵とは良く言ったものです。
桜が咲いて、菜の花が咲いて、富士山も見え、その中に美しい男女。
舞台がパーッと華やかなだけに、2人のもの悲しい感じが際だっていました。
でも最後の花道での「おかる、おじゃ」「あーい」は、幸せいっぱいに見えました。
〈五.六段目〉
早野勘平…片岡仁左衛門
女房おかる…坂東玉三郎
斧定九郎…片岡愛之助
千崎弥五郎…市川段治郎
不破数右衛門…坂東弥十郎
与市兵衛女房おかや…坂東竹三郎 他
おかるの実家に身を寄せる勘平は、山崎街道でかつての同士 千崎弥五郎に会い、仇討ち資金の調達を約束します。
一方、おかるの父 与市兵衛は、その資金をおかるを祇園に売ることで得ようとし、その前金50両を手にしますが、山賊の斧定九郎に殺され金を奪われます。
そこに偶然通りがかった勘平が、定九郎を猪と間違えて撃ってしまいますが、懐の50両に気付き、悪いこととは知りながらそれを弥五郎に渡します。
家へ帰った勘平は自分が撃ったのが与市兵衛だと早合点し、そこへやって来たかつての朋輩の弥五郎と数右衛門に追いつめられ、腹を切ります。しかしその直後、与市兵衛の傷が刀傷だったことから勘平の疑いは晴れ、仇討ちの連判状に名を連ねることを許され、安堵して息を引き取るのでした。
感想
実に良くできた話だなと思います。究極の悲劇ですね
愛之助さん扮する定九郎、今でも目に焼き付いています。
昨年の4月の浪花花形歌舞伎でこの演目を見たのですが、定九郎はあんまり記憶に残っていません。その時は鴈治郎さんでした。もっと殺す時に揉みあっていたような気がします。
今回の定九郎は、与市兵衛を殺し、セリフも「50両」のったった一言。すぐに勘平に鉄砲で撃たれて死んでしまいますが、まさしく悪の華で、ゾクゾクしてしまいました。下手すると、勘平よりも目立ってしまう役なのではないでしょうか?
熱演が光っていたのはおかるの母親役の竹三郎さん
母親として妻として姑としての気持ちが入り乱れていました。
祇園へ売られていくおかるに、「祇園ではお客のために髪を切ったり、指を切ったりするらしい。髪は切っても伸びるが、指は…(涙)」セリフはちゃんと覚えていませんが、そうなんですよね。昔の遊女は「私はあなたのもの」という証に、髪を切ったり指を切ったりしたそうです。恐ろしい世界です…
さて勘平ですが、昨年見た時は、誤って舅を殺してしまった言い訳をするため切腹した勘平に、涙があふれてボロボロでしたが、今回は勘平の「侍に戻りたい」という気持ちを強く感じ、最後は「侍に戻れて良かった」という気持ちを感じました。
番付のインタビューで仁左衛門さんが、「お客さんが勘平の悲しみを引きずったままでも困る」とおっしゃっています。
4月の時は思いっきり引きずりました。
今回は涙は出ませんでしたが、「勘平、侍に戻れて良かったね」という気持ちになりました。
4月は上方風、今回は東京風の型だそうで、その違いもあるのかもしれません。
次回見ることがあれば、どちらの気持ちになれるのか、楽しみです
③春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)
曽我五郎…市川猿弥
曽我十郎…市川段治郎
静御前…市川春猿
曽我五郎、十郎に静御前が絡み、七草行事を題材に踊る長唄舞踊です。
感想
どうも今回は春猿さんに魅了されます。なぜでしょう?
理由はまだ分からずにいます。
舞踊は苦手なため、理解は出来ていませんが、終わりにふさわしい、清々しい舞踊で、眠ることもなくしっかりと見させて頂きました。
もっと舞踊を勉強しようと思います。
昼夜を通して、力の入る演目が多く、堪能しました。
同じ演目でも、型や演じる役者さんによって、私自身の感じ方も違ってくる事に面白さを感じました。この面白さに気付いたら、ますます歌舞伎にはまってしまうんでしょうね。
2月4月は薪車さんも観られるので、とても楽しみです♪
がんばれ薪車~!!^^
はじめてお邪魔します。スキップと申します。
愛之助さんの斧定九郎、本当に印象的でしたよね。
あの「五十両~」の声、今も耳に残っています。
また遊びに来させてください。今後ともよろしくお願いいたします。
薪車さん、大きな役をされるようになりましたね。
スラッと綺麗で、本当にこれから楽しみです。
若手の方が、どんどん良い役をされるのは、こちらもウキウキしますね。
スキップさんへ
こんばんは。コメントありがとうございます。
私もいまだに定九郎の声が耳に残っています。
どこから出してるんだろうというような、地響きのような声でしたね。
素顔のニコニコ愛之助さんからは想像ができない声でした。
こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。
この一月は五・六段目を江戸・上方どちらでも観ることができたんですね~。
るみさんのおかげで、松竹座・仁左衛門さんの勘平をうかがい知ることができました。
浅草では中村兄弟の、昼夜役代わりでした。
どちらの勘平もほんとに良かったです。
どちらかというと、七之助さんがclassic、勘太郎さんがmodernな感じに思えます。(自刃が侍としてか、一人の男としてだったか、という感じ・・・)
同じ型をしっかり見につけられた上で、、勘平役者がどう演じたいかで、違った五・六段目になる。これも、この演目の良くできたところだとつくづく感じました。
ふたつの個性の五・六段目に、飽きることがありませんでした。
しかし、この演目、観るほうも、とても気持ちが入ってヘトヘトに疲れてしまうのもまた事実・・・
>番付のインタビューで仁左衛門さんが、「お客さんが勘平の悲しみを引きずったままでも困る」とおっしゃっています。
お正月公演ということで、仁左衛門さんなりに思うところがおありだったのかもしれませんね。
>次回見ることがあれば、どちらの気持ちになれるのか、楽しみです
これがまた、歌舞伎の大きな楽しみの一つですよね!
浅草の中村兄弟の勘平とおかるもすごく興味がありました。
そうですか、クラシックとモダン
私が見たものとは一味違う仮名手本忠臣蔵ですね。
この演目は、色々な役者さんで見てみたいと思う一つです。
亀鶴さんの定九郎、見たかったです