「日本をダメにしたB層の研究」
適菜収著
B層とは「マスコミ報道に流されやすい『比較的』IQが低い人たち」(本書P46)。これは著者の造語ではなく、「2005年の郵政選挙の際、自民党が広告会社スリードに作成させた企画書『郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)』による概念です。」(P47)この文書そのものは不採用になったそうですが、当時の小泉自民党は、実際にこの層をターゲットに絞ってマスコミを最大限に活用したイメージ戦略を展開していきました。
この「B層」とは何かを解説し、そのB層を自らの利益のために利用する卑劣な人間を批判したのがこの本です。
読みやすいし、基本的に笑える本だと思います。少なくとも僕は笑いながら読みました。
哲学者である著者の文章は断定的で挑発的。書かれていることに思い当たる人は不快になる書き方を敢えてしている節がありますけど、内容は冷静な分析に基づいています。
批判のやり玉に挙げられているのは反原発デモ、事業仕分け、民主党(特に原口一博)、小沢一郎、橋下徹などなどですが、そういった人間を増長させのさばらせている「B層」の浅はかさ、幼稚さを何とかしたい、というのが著者の本意だと思います。
「こんな連中を権力の中枢に押し込んだのは有権者です。(中略)彼らは被害者顔(づら)していますが、騙されたほうも相当悪い。要するに、いかがわしいものを見抜く身体感覚が麻痺しているのです。」(P129)
日頃、政治のニュースに接していて「大事なのは『民意』じゃなくて『現状で最善の政策』じゃないのかなあ」と感じている方には、面白く読める本だと思います。
あ、「だからマスコミは信頼できない。信頼できるのはネットだけ」と思ってる方、それもB層の特徴です。
「B層は大手メディアが報道しない『真実』を知っているという。ネット上には『真実の情報』が流れているそうです。欧州の極秘会議の議事録を、なぜか引きこもりのネットオタクが知っているという間抜けな状況に対して、疑問に思わないのがB層です。」(P52)
大事なのは、色々なことをきちんと勉強し、その上で自分の頭で考える、ということではないでしょうか。
でも、それは意外と難しいんですよね。