月の裏側〜reprise〜

捻くれ者が音楽を語ったらどうにも収拾がつかなくなった件。マニアックな作品紹介と自分自身の音楽関係の思い出話を中心に。

NO.106 陳信輝&ヒズフレンズ「SHINKI CHEN」

2022-11-30 00:18:51 | 日本のロック

70年代の日本のニューロックの紹介はずいぶん間が空いてしまいましたが、

また少しずつ書いていこうかなと。

 

ニューロックの時期の重要ギタリストである陳信輝さんが、

パワーハウス、フードブレインの次に71年初頭に発表したのが、

このソロアルバムです。メンバーとしては、柳ジョージさんが

ボーカルとベースで参加、フードブレインでも共演した柳田ヒロさんが

キーボード、パワーハウスで共演した野木信一さんがドラム、

1曲だけルイズルイス加部さんとジョン山崎さんがゲスト参加しています。

 

全編、陳信輝さんと柳ジョージさんによるオリジナルナンバーが

演奏されますが、1曲目から実験的要素の強いナンバーで、

媚びることをしないブルージーなナンバーで占められています。

派手な曲もなく、渋い曲ばかりのアルバムを

大手のポリドールがよく発売してくれたと思いますね。

ちなみに当時、日本のロックに一番理解があったと思われるのは

まだ出来たばかりのワーナーパイオニアで、

同じ71年に柳田ヒロさんのソロ、フラワートラヴェリンバンド、

スピード・グルー&シンキ、トゥーマッチ等、

ニューロック史上の重要作を立て続けに発売しています。

この辺りは機会見て書こうと思います。

 

当然な結果ですが、当時は殆ど売れていなかったと思います。

マニアな人が買っていた位でしょう。

おかげで当時の帯付きレコードの美品なら6桁価格になる

レア盤となってしまいました。

80年代の終わりにCD化された時も、日本国内よりも

海外で評判になったという話があるくらいです。

内容的にも良かったので、当然だったかもしれません。

ジャケのセンスも日本にはなかなかないもので、

その辺りも再評価されてもいいのではないかなと。

 

 


NO.85 フードブレイン「晩餐」

2022-09-20 00:28:02 | 日本のロック

某タワーレコード3枚で20%オフの最後を飾るのがこのアルバム。

NO.28でも少し書いたフードブレインの作品です。

80年代の終わり位、まだようやくCDがレコードに取って代わる頃、

ポリドールから「日本ロックの逆襲」というシリーズで

名盤と言われるものがCD化されています。

(その割にはラインナップに遠藤賢司さんとか

シロー、ブレッド&バターとか入っていましたが)

自分が探し始めたのが、発売してからしばらく経っていたので、

すでに新品がどこにも売っていないタイトルも出てきていました。

その中でどうしても見つからなかったのが、布谷文夫さんの

「悲しき夏バテ」とこのフードブレインの「晩餐」でした。

(悲しき夏バテ」に関しては、後年に紙ジャケで再発した時に購入)

フードブレインは、色々な中古屋に行く度に探していましたが、

なかなか見つからず、かなり後になって偶然発見し確保しました。

それだけに思い入れは強いアルバムですね。

 

そんなアルバムですが、以降何度となく再発しています。

今回購入したのは、MQA-CD+UHQCDのハイレゾ対応版で、

買い替えするに値すると判断して購入を決めました。

メンバーに関しては、NO.28でも書きましたが、

スーパーグループに相応しいメンバーです。

「晩餐」に関しましては、ボーカルをやる人がいないという事で

すべてインストゥルメンタルとなっています。

メンバーそれぞれがエゴむき出しでひりつく様なプレイを期待していたのですが、

実験的要素が強い曲が多くなっています。

陳信輝さんが、当時フランク・ザッパを好んでいたようなので、

その影響が強かったのかもしれません。

前衛的な作品なので聴く人を選びますが、

ロック史に残る作品なのは間違いないでしょう。

 


NO.80 カルメンマキ ・ ブルースクリエイション

2022-09-04 09:56:29 | 日本のロック

「悪魔と11人の子供達」とほぼ同時期に発売されたのが、

「カルメンマキ/ブルースクリエイション」です。

カルメンマキさんは元々ロック志向が強かったようで、

「時には母のない子のように」以降のアイドル的な扱いには

納得していなかったようです。

それでも「アダムとイブ」というアルバムではコンセプトアルバムにも

挑戦したりしています。

当時は、アル・クーパーやジミ・ヘンドリックス、

ジャニス・ジョプリン等の影響が強かったとの事。

そんな中、ブルースクリエイションとの共演が多くなり、

一緒にアルバムを制作することになりました。

発売当時のライナーによると、レコード会社が押し付けたものではなく、

自主的な行動だったという事です。今後もレコーディングを

続けるという事が記載されていますが、残念ながら叶わぬ夢となりました。

 

アルバムはカバー3曲、オリジナルが5曲の構成です。

1曲目の「アンダースタンド」は、フォークジャンボリーでも歌われた

ハードなナンバー。当時から得意だったようです。

オリジナルナンバーは、メロウな曲が多いです。

個人的には、もっとハードなナンバーがあっても良かったと思いますが、

「空しい心」でしっとりと歌うマキさんもまた悪くないですね。

後半は、トラディショナルなナンバーをハードなアレンジに仕立て直した

母のない子」が個人的にはお気に入りかな。

竹田さん、ギター弾きまくっています。

 

 

最後もトラディショナルなブルースナンバーの「セントジェイムス病院」で

締めくくられます。派手な曲は少ないですが、

聴きどころも多く、歴史的な共演としての価値も高いと思います。

オリジナル盤の帯付きは、かなりのレアものという事です。

そういうことで売れ行きとしては…だったようです。

 

残念ながらブルースクリエイションは、1972年に解散、

後にメンバーが変わってクリエイションとして再出発することになります。

そしてマキさんに竹田さんが才能のあるギタリストとして紹介したのが、

春日博文さん。これがきっかけで、カルメンマキ&OZが

結成されることになります。


NO.79 ブルースクリエイション「白熱のブルースクリエイション」  

2022-08-30 21:30:35 | 日本のロック

「悪魔と11人の子供達」のアルバムの発売の直後、

ブルースクリエイションの強力なライブ音源が残っています。

1971年8月、岐阜県中津川で行われた

第3回全日本フォークジャンボリーにおけるライブ音源です。

1969年に始まった全日本フォークジャンボリーは、

年々規模が大きくなり、第3回に至っては、フォークのみならず

ロックやジャズのアーチストも参加し、メインステージに加え、

フォークとロックのサブステージも設置されました。

サブステージで吉田拓郎さんが「人間なんて」を2時間近く演奏したという

伝説もありました。そして聴衆の一部がステージを占拠したりして

後味の悪い終わり方をして、フォークジャンボリーは終焉を迎えます。

全日本フォークジャンボリーに関しては、URCレコードが秘蔵音源を

大量に保管しているようで、販売権が移る度に少しずつ発表されています。

フォークジャンボリーに関しては、またいずれ記事にしたいです。

 

話がそれましたが、この時のブルースクリエイションの音源ですが、

「悪魔と11人の子供達」からはタイトル曲のみ、後はカバーと

アルバム未収録曲になります。冒頭の「ROLLING STONE」は

マディーウォーターズのカバーになりますが、ヘヴィーなロックアレンジで

なかなか聴きごたえあります。最後に収録されている「TABACCO ROAD」も

カバーですが、好んで演奏されていたようですね。後のクリエイションでも

演奏されています。

 

 

そして特筆すべきは、ゲストでカルメン・マキさんが参加している曲が

ある事です。カルメン・マキさんは、「時には母のない子のように」の

ヒット後のアイドル的な活動に嫌気がさしていたようで、

ロックの世界に飛び込むことになります。

ブルースクリエイションとはよく共演したとの事です。

そしてアルバムを作る事にもなるのです。

ブルースクリエイションとカルメン・マキさんの貴重なライブ、

このアルバムでは、マイナーなグループのカバー曲である

「アンダースタンド」のみですが、シャウトするマキさんの

ボーカルとギターを弾きまくる竹田さんに圧倒されます。

 

 

ここには収録されていませんが、この時のマキさんがゲスト出演した

音源は、これもブルースのカバーである「セントジェイムス病院」が、

「ニューロックの夜明けURC編」等に収録されています。

 

 

70年代初期の日本のロックのライブ音源はなかなか少なく、

良質な音質で演奏も優れたこの音源は、なかなか貴重で価値があるかと。

この手の音源は、もっと発掘されるといいですね。


NO.78 ブルースクリエイション「悪魔と11人の子供達」

2022-08-26 23:37:03 | 日本のロック

学生時代、あるレコード店で見かけたレコードは、

悪魔が描かれたジャケットで非常にインパクトがありました。

帯は無かったですが、それでも数万円の値が付いていたと思います。

これがブルースクリエイションの「悪魔と11人の子供達」

との出会いでした。いつかどんな音か聴いてみたいと思っていましたが、

後にCD化していることを知り、大型店まで買いに行ったものでした。

 

1stがブルースのカバーばかりだったのに対し、

メンバーを一新して作られたこのアルバムは、ハードロック寄りの

英語詞のオリジナルナンバーばかりとなります。

すべてギターの竹田和夫さんによるものです。

 

1曲目から「原爆落とし」なる物騒なタイトルの曲から始まりますが、

これはプロレスの技からとったものです。

B面の「脳天杭打ち」もプロレス技からです。

昔のプロレス技の日本語名は何か物騒な名前が多いですね。

ジャーマンスープレックスホールドが原爆固め、

ムーンサルトプレスが月面水爆など。今は殆ど使われませんが、

使ったら批判浴びるでしょうね。 

また有名な話ですが、竹田さんが後に結成するクリエーションが

アメリカの兄弟タッグのファンク兄弟の入場テーマ曲である

「スピニング・トゥ・ホ-ルド」を手掛けることになります。

 

日本ロック史に残る名盤とは思いますが、残念なのは、ボーカルが

所々発音があまりよくなく、カタカナ英語に聴こえる部分がある所ですか。

曲がいいだけに惜しいですね。竹田さんのギターが縦横無尽に

引きまくっているだけに勿体ない。

ではボーカルが別の人だったらどうなっていたか?

それはまた次回に書こうかと思います。