月の裏側〜reprise〜

捻くれ者が音楽を語ったらどうにも収拾がつかなくなった件。マニアックな作品紹介と自分自身の音楽関係の思い出話を中心に。

NO.138 PANTA「PANTAX’S WORLD」

2023-03-17 00:16:12 | 頭脳警察、PANTA関連
久しぶりにPANTAの自伝「歴史からとびだせ」を読み返してみました。
 
JICC出版から出版されたこの書は、
 
PANTAが自分の事を赤裸々に語ったもので、なかなか読み応えがあります。

この本によりますと、自分自身と頭脳警察とのギャップが大きくなりすぎ、

結局、頭脳警察を解散する事を決意します。

で、頭脳警察の末期にはすでにソロ活動の準備をしていたようで、
 
なかなかしたたかだったりします。

キティレコードに誘われたりしていたらしいのですが、
 
ビクターが新しく発足する「フライングドッグ」というレーベルの第1弾にと
 
いう事で残留となりました。

PANTAは、この時色々とコンサート巡りをしていたようです。

この時の日本のロックが軟弱にしかみえなかった様で、
 
ソロは「KISS」のようなラブバラード路線を考えていたようですが、

路線を変更し、まるでナタで切ったようだと称されるような
 
ハードなアルバムとなりました。
 
 
何といっても、まず1曲目の「屋根の上の猫」が最高にカッコイイです。

PANTAのソロの曲では、1.2を争う名曲だと思っています。

相手との同化という究極の愛の姿の歌で、
 
聴く者を圧倒する激しいロックです。 

ライブで演奏された時のテンションの高さはハンパなかったです。

後に大槻ケンヂさんもカバーしています。

 

 
他にも「三文役者」や「ロックもどき」といった佳曲もありますが、

やはり圧巻は「マーラーズパーラー」。10分近い大作ですが、

意味のあるのかないのかわからない、一種の言葉遊びのような曲ですね。

意味があるようでないようで、もしかしたら深い意味があるかもだけど、
 
本当は全く意味がないのかもしれない。
 
まあそんな感じの単語の羅列が続きます。

ボブ・ディランの「ライク・ア・ローリングストーン」に近いものかも。
 
橋本治さんが「秘本世界生玉子」という本の中で
 
「PANTAX'S WORLD論」というのを発表していますが、

その中で「私説マーラーズ・パーラー」という事で語っていたりします。 

このアルバムでのアレンジは、ちょっとフォークっぽいものですが、

後にライブで演奏したロックバージョンはメリハリがあって、
 
こちらの方が好みです。
 
 

 

このアルバムの特徴は、多くの人が参加していて

分厚い音になっている事ですね。ソロデビュー前のチャー、

ウェストロードブルースバンドの塩次伸二さん、

サウストゥサウスの井上茂さん、元スモーキーメディスンの佐藤準さん、

元FTBの和田ジョージさん、

そしてメンフィスホーンズに対抗して作ったというパンタックスホーンズ。

総勢20人を超える人が参加しています。

(パンタックス・ホーンズに、後にライブで共演する事になる板谷博さんが

参加している事は、解説をみて知りました) 

ホーンセクションは今回限りですが、ロック路線は次作にも続きます。


NO.134 頭脳警察「最終指令自爆せよ」1991.2.27

2023-02-27 00:58:14 | 頭脳警察、PANTA関連

2月7日に予定されていた頭脳警察のライブ、本来はシーナ&ロケッツとの

ジョイント予定だったもので、亡くなられた鮎川誠さんの追悼ライブと

なるはずのものでしたが、PANTAが緊急入院したため、

残念ながら中止となってしまいました。

PANTAは重度の肺炎だったようで、一時は危篤状態だったとの事。

幸いにして一般病棟に移ったようで、とりあえずは危機を脱しました。

 

PANTAX'S WORLD | PANTA・頭脳警察オフィシャルサイト (brain-police.com)

 

肺癌と診断された上での肺炎なので、今後は歌えるのかどうか

という事になります。やるせない気持ちで一杯です。

そのせいか、最近じっくりと聴く機会が少なくなっていた

PANTA、頭脳警察の関連のものを聴きたくなってきましたので、

暫くの間、PANTA、頭脳警察関連のものを多めに上げることになりそうです。

 

久々に取り出してみたのは、90年代に再結成した時の頭脳警察の

ラストライブ。今から32年前になりますか。

頭脳警察の再結成を知ったのは、当時購読していた

ミュージックマガジン誌にて。当初はそれ程興味はなかったのですが、

レンタル屋でCDを見つけて借りてきた再結成時のアルバム

「頭脳警察7」を聴いてかなり衝撃を受けました。

 

再結成後の頭脳警察のライブ映像は、「万物流転」がありますが、

これはドキュメント映画のように作りこまれた感じで、

臨場感は低いです。(演奏自体のテンションは高いです)

それに対してこの渋谷公会堂のビデオは、画質こそよくないですが、

ライブならではの緊張感は良く伝わってきます。

70年代の曲から再結成後の曲まで、バランスよく演奏されています。

特筆すべきは、70年代に劇団の音楽用に作られ、

ライブ後に発売されたアルバム「歓喜の歌」に収録された

「最終指令自爆せよ」。ラストライブに相応しい選曲かな。

そして70年代のラストアルバム最後の曲である「あばよ東京」。

最後のインスト部分のテンションが高い隠れた名曲ですが、

ここでも演奏されています。70年代の演奏にも負けてないですね。

 

 

自分が持っているのはビデオテープで発売されたものですが、

後日DVD化もされていて、買っておけばよかったと後悔。


NO.111 頭脳警察「頭脳警察3」

2022-12-17 00:06:20 | 頭脳警察、PANTA関連

頭脳警察に関する記事も暫く書いていなかったので、

久しぶりに引っ張ってきました。今回は「3」です。

 

ファーストが発売中止、セカンドが発売1か月で回収、発禁となり、

流石に懲りたのか今回はまともに発売させようと頭脳戦を仕掛けてきました。

レコ輪に提出する歌詞をわざと過激な歌詞にして、修正した振りをして

本来の歌詞を通す等、これで何とか3枚目にして

初めて流通に乗せる事が出来たわけです。

 

「ふざけるんじゃねえよ」や「嵐が待っている」は、多くの人が抱いている

これぞ頭警というべき攻撃的な曲。

特に自分の思い通りにならない苛立ちを歌った「ふざけるんじゃねえよ」は

自分でも好きな曲ですね。

 

 

今作では攻撃的な曲ばかりでなく、「光り輝く少女」のような

メロディアスな曲もあったり、「前衛劇団モータープール」のように

フランク・ザッパを彷彿させるような変態的な曲もあったりと

バラエティに富んでいます。しかしながら、やりたい事を何も考えずに

詰め込んだ感じになってしまい、トシと衝突して結局暫くの間、

トシは頭脳警察を離れることになってしまいます。

折角無事に発売出来たのに、ターニングポイントになってしまったのは

皮肉な事です。トシの参加していない次の2作分は、

やや精彩を欠くように感じられます。

 


NO.64 頭脳警察「会心の背信」

2022-07-17 01:08:43 | 頭脳警察、PANTA関連

6月に発売されていた頭脳警察のライブアルバム「会心の背信」、

発売されていたのを知らなかったので、今更ながら注文して聴きました。

2020年9月に長野で行われた無観客のシークレットライブ、

本来は長野のライブハウスで行われる予定でしたが、

ライブハウスがコロナの影響で閉鎖される事態に。

急遽、都内で無観客で収録される事になったのですが、

PANTAの現地で収録したいとの強い希望で、長野で収録、

ライブ配信されました。

PANTAとトシとサポートに澤竜次さんの最低限のメンバーでの演奏、

まるで学園祭に出演するような気持だったという事です。

実際、1990年の復活の時に朝霧の米軍基地跡でライブ収録した翌日、

世間では即位の礼が行われている中、同志社大学での集会で

ライブを行っています。

その時に使っていたグレコのセミアコレスポールをあえて意識的に

使ったとの事です。

 

選曲は、冒頭から革命3部作に「ふざけるんじゃねぇよ」と

かなり尖ったものです。おそらく、多くの人が望んでいる

頭脳警察の曲が並んでいるとは思います。

ミスもあるものの、まだまだ歌い続けるぞという気迫を感じられます。

 

頭脳警察最新アルバム「会心の背信」2022年6月10日発売! - YouTube

 

何故、ロシア情勢がまだ落ち着かないこの時期に、

革命3部作を演奏したライブ盤なのか。

コロナ過の中で、まともなライブ活動が出来ない状況なので、

PANTAが病気療養中の今、頭脳警察について総括したいのではないか

と思っています。

おそらく、PANTAの復帰は来年以降になりそうなので、

頭脳警察としての最終章があるかもしれません。

PANTA自身、曲単位でダウンロードされる現在、

もう「クリスタルナ八ト」のようなコンセプトアルバムは

作られることは殆どなくなるだろうと思っていますし、

コロナ過でライブもまともに出来ない状況なので、

一度音楽は原点に戻るべきだと考えているようです。

それこそ、レコードが発明される以前にリセットされるべきだと。

音楽はタダで聴ける状況に危機感を感じているようですね。

先の事は誰にもわからない。もしかしたら

未来はAIが新しい音楽を作っているかもと。

来年の復帰後に何をしてくれるかを楽しみにしています。

う~ん、全然感想になってないや。

 

頭脳警察 - 日本語ロックの革新者がその真髄を凝縮させた、配信というライブに対する背信行為の実況録音盤 - インタビュー | Rooftop (rooftop1976.com)

 


NO.63 PANTA「PISS」

2022-07-14 23:08:45 | 頭脳警察、PANTA関連

PANTAの80年代に発売されたアルバムの中には、アナログとCDとでは

若干違うものがいくつかあります。

前回書いた「クリスタルナハト」も、アナログでは

モノクロのジャケでしたが、初回のCDではカラーのジャケになっています。

 

 

 

再発されたCDでは、アナログ盤のジャケに統一されています。

そして今回紹介する「PISS」も、アナログ盤では全身が写っている

ジャケですが、初回CDでは上半身アップの別フォトになっています。

 

 

このジャケが気に入っていたので、以前ライブを見に行った時に、終了後のサイン会で

サインしてもらいました。

 

「クリスタルナハト」ですべて出し切った後に発売されたアルバムですが、

この時は、ルースターズの花田裕之さんが参加しています。

重さを感じる「クリスタルナハト」に対してこちらはストレートな

ロックアルバムです。花田さんとの共作のタイトルナンバーの「PISS」が

いいですね。そして以前にも書いたように、松原みきさんとのデュエットの

「ONE NIGHT LOVER」がいい味を出していて泣けてきます。

 

このアルバムを出した後は、昭和から平成への激動を抜けて頭脳警察復活に向け、

しばし沈黙を守る事になります。