お能、能楽って知ってはいても観たことがないものの典型ですね。何が嫌いと言うわけでもないけれど、なにがなんでも観てみたいという意欲がわかないものの一つでした。魅力に乏しく敷居が高く、「とっつきにくいもの」の代表格ですらありそうですね。
子供の頃よく観たチャンバラ映画で、サムライの宴席で能が舞われている場面を観た記憶があります。般若の面をかぶっているのが実は「悪者」で、能を舞いながら主役の「善い者」に近づいて、これから起こる一波乱の前触れの役割を演ずるのがよくあるパターンだったと記憶しています。般若の面が気持ち悪かったのと、般若が暗示する一波乱にハラハラドキドキした記憶が頭の隅に残っていて、能を遠ざけてきたのかもしれません。
歌舞伎・文楽と並んで日本の三大芸能の一角を占め、ユネスコ世界無形文化遺産第一号に認定された能楽の「なんたるか」を教えてくれる「能楽のススメ」なる勉強会に行ってみました。異文化交流をライフワークにすると大見得を切った私としては、日本文化の基本の基本たる能楽のことも知らないでは済まされまいとの自覚と、残された時間はあまりないから早いうちに観るものは見ておこうという、より切羽詰った動機に後押しされた、殊勝な行動だったと分析しています。
観世流能楽師、シテ方の小島英明さんが講師兼進行役として、ユーモアを交えたトークで平明に説明してくれたこと、能の音楽である囃子の演奏を担当する囃子方も思っていた以上に若い人ばかりで、歯切れ良い説明と演奏が説得力あったこととがあいまって、これまでは遥か遠い存在であった能が一挙にその距離を縮めて、「へえ~。結構面白そうじゃん。」のレベルに近づいてきました。翁の面なんて要らないくらいに高齢の能楽師ばかりかと思っていたら、実に多くの若い人たちが能を支えている現実には正直驚かされました。
小島英明さんは、敷居の高いと思われがちな能楽をもっと身近に感じてもらおうと、その普及活動に力を入れている新進気鋭の能楽師です。
(http://www.geocities.jp/noh_kjm/profile.html )
①能の歴史 ②能舞台の構造 ③能楽師の構成 ④番組表の見方 ⑤能の曲の種類 ⑥能の流れ ⑦能面・能装束につい ⑧能の囃子について
上の内容をトーク、実演を含めて約2時間弱でカバーし、休憩のあとは京都五条大橋での弁慶と牛若丸の出会い「橋弁慶」が演じられました。番組のストーリーの大筋が分かっているのに加え、前半の講義で得た予備知識もあったので、リラックスして橋弁慶を楽しむことができました。他の番組だったらどうだったろうか?
恥ずかしながら、勉強会で新たに次のことを学びました。
①主役を演じる「シテ方」と、演能におけるコーラス「地謡」とはまったく別の訓練を受けた別の役かと思ったら、地謡はシテ方の役割分担の一つ。仕舞と謡を習い、シテを演じない番組では地謡としてまたは後見として番組に参加する。
②大きく分けて「シテ方」「ワキ方」「狂言方」「囃子方」の四役からなり、それぞれ専門の役割分担を持ち、他の役を兼ねることはない。そのいずれもが「能楽師」である。現時点で登録されている能楽師1700人のうちシテ方は約1100人。
演能の後、最後のプログラムは矢来能楽堂の総桧の舞台でのワンポイントレッスンです。勿論コーチは小島先生。立ち居振る舞いのベースは「すり足」で、その基本要領は「出っ尻鳩胸、膝を緩やかに折るも前傾せず」。なんてこたぁない、ドライバーのアドレスポスチャーそのものでした。
スパインアングルを大事にしてスイングプレーンを意識する癖がついている私は、ゴルフだめになったら能楽に転向するかな? ノー!??