北へふたり旅(5)
「落とし穴がある?」
「いろいろ引かれます。
家賃、保険、税金、水道光熱費などで、まず5万円がひかれます。
住民税は2年目以降、ドンとあがります。
それを見越して一年目から、高めに徴収されます」
「5万円ひかれると残りは14万2千円。まだ余裕はあるな」
「食費と雑費で、4万円くらい消えます。
ここまでで、102,654円。
この金額がとりあえず、実習生の手元に残ることになります」
「月10万円か。
3年間35ヶ月はたらいて、350万円が手元へのこる計算だ。
待てよ。まだ負債がある。
出国時に背負った借金の100万円と、管理団体の初期費用の40万がある。
これらを清算すると、残りは210万。
なんだか微妙な金額になってきたなぁ」
「引き算はまだつづきます。
家族のいるベトナムへ送金しなければいけません。
月に3万円ずつ送ると35ヶ月で、105万円が手元から消えます。
家を建てるために貯金していればいいのですが・・・
たぶん便利に使ってしまうでしょう」
「踏んだり蹴ったりだな、実習生も・・・。
となると手元に残るのは115万円。ずいぶん少なくなってきたなぁ」
「帰国するときの土産代も馬鹿になりません。
携帯電話やパソコンを買っていくと、30万から50万が消えてしまいます」
「なんだい。そうなると3年後の実習生に残るのは、50万から80万だ。
悲惨になってきたなぁ。
いったいなんのため、汗水たらして日本で働いたんだ」
「いまのケースは、恵まれた例です。
最低賃金以下の時給700円や、600円で働かされたケースもあります。
むしろ、そういう例のほうがおおいかもしれません」
「いろいろ問題になっているからね。
実習生をとりまく実態は」
「ベトナム出身の女性実習生が、厚生労働省へ手紙を書きました。
勤務時間は8時から5時、残業は5時半から9時半まで。
そのあとも仕事があり、そのときは服を手で縫います。
毎月の給与明細はありません。
わたしの基本給は6万円。
残業は時給400円。給料は月に12万円。
ベトナムでサインした契約書では、基本給は食費別で8万5,000円でしたが、
実際の給料は6万円です。
ベトナムの送り出し機関に電話したけれど、電話に出なかった。
ベトナムで契約した給料と違います。
監理団体からは「ベトナムの会社のことはわからない」と言われた。
道理にあわないので、この手紙を書きました。
氷山の一角です。こんな話は・・・」
(6)へつづく
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「落とし穴がある?」
「いろいろ引かれます。
家賃、保険、税金、水道光熱費などで、まず5万円がひかれます。
住民税は2年目以降、ドンとあがります。
それを見越して一年目から、高めに徴収されます」
「5万円ひかれると残りは14万2千円。まだ余裕はあるな」
「食費と雑費で、4万円くらい消えます。
ここまでで、102,654円。
この金額がとりあえず、実習生の手元に残ることになります」
「月10万円か。
3年間35ヶ月はたらいて、350万円が手元へのこる計算だ。
待てよ。まだ負債がある。
出国時に背負った借金の100万円と、管理団体の初期費用の40万がある。
これらを清算すると、残りは210万。
なんだか微妙な金額になってきたなぁ」
「引き算はまだつづきます。
家族のいるベトナムへ送金しなければいけません。
月に3万円ずつ送ると35ヶ月で、105万円が手元から消えます。
家を建てるために貯金していればいいのですが・・・
たぶん便利に使ってしまうでしょう」
「踏んだり蹴ったりだな、実習生も・・・。
となると手元に残るのは115万円。ずいぶん少なくなってきたなぁ」
「帰国するときの土産代も馬鹿になりません。
携帯電話やパソコンを買っていくと、30万から50万が消えてしまいます」
「なんだい。そうなると3年後の実習生に残るのは、50万から80万だ。
悲惨になってきたなぁ。
いったいなんのため、汗水たらして日本で働いたんだ」
「いまのケースは、恵まれた例です。
最低賃金以下の時給700円や、600円で働かされたケースもあります。
むしろ、そういう例のほうがおおいかもしれません」
「いろいろ問題になっているからね。
実習生をとりまく実態は」
「ベトナム出身の女性実習生が、厚生労働省へ手紙を書きました。
勤務時間は8時から5時、残業は5時半から9時半まで。
そのあとも仕事があり、そのときは服を手で縫います。
毎月の給与明細はありません。
わたしの基本給は6万円。
残業は時給400円。給料は月に12万円。
ベトナムでサインした契約書では、基本給は食費別で8万5,000円でしたが、
実際の給料は6万円です。
ベトナムの送り出し機関に電話したけれど、電話に出なかった。
ベトナムで契約した給料と違います。
監理団体からは「ベトナムの会社のことはわからない」と言われた。
道理にあわないので、この手紙を書きました。
氷山の一角です。こんな話は・・・」
(6)へつづく