北へふたり旅(17)
「折れたみたい」妻がつぶやく。
「お・・・折れた!。ホントか。どこだ!」
「手首。いうことをきかないの。ぜんぜんダメ」
手首をささえた妻が、カートの後部座席へ座り込む。
手首は腫れていない。色も変わっていない。
しかし。折れたという右手は、妻の左手のうえでぐったりのびている。
「だって君、2打目を打ったじゃないか。たったいま」
「打った瞬間はっきりわかったの。かんぜんにダメだって」
「い・・・痛くないのか!」
「う~ん・・・しびれているからよくわかんない」
尻餅をついたとき、右手がとっさに身体をかばったらしい。
そういえば妻の右手が地面をたたいたのを、見たような気もする。
そうと解れば躊躇している暇はない。
呼び出しのマイクを握る。
「けが人が出ました。至急対応をお願いできますか」
「はい。場所はどこでしょうか?」
「ナンバー3のモンスター回廊。2打地点です。
斜面で滑りました。
転倒したさい、右の手首を骨折した可能性があります」
「わかりました。すぐお迎えに行きます。
そのまま前進していただいて、4ホール目のティグランドで合流しましょう」
4ホール目は打ち下ろしのショートホール。
そこでプレーヤーのカート道路と、コース整備用の作業道が交わっている。
クラブハウスからやって来る、いちばんの近道になる。
タオルを冷水で浸し、患部へ当てる。
氷をいれたミネラル水が、こんなところでやくに立つとは思わなかった。
事態に気付いて12歳年下美女と、ライバルの美女が飛んできた。
「だいじょうぶ?」
「わたしの打ったボールのせいで、怪我させちゃったみたい。
ごめんね、ママ。痛くない、大丈夫?」
12歳年下美女が、くしゃくしゃの顔で妻を覗き込む。
「だいじょうぶ。あなたは気にしないで。
斜面で足を滑らせたわたしが悪いんだから。」
「でも・・・わたしがミスしたせいで、こんなことになっちゃった。
わたしのせいでママに、痛い思いをさせちゃったのよ・・・」
「もう救助を呼んだ。
その先の交差地点へ、クラブハウスから救援がやって来る。
君たちは気にしないで、プレーをつづけてくれ」
ゴルフ場の対応は早かった。
わたしたちのカートが合流地点に着く前に、救助のカートが姿を見せた。
「ほら。救助のカートがやってきた。
君たちは気にしないで、プレーをつづけてくれ」
「だって・・・」
「みんなで病院へ行っても仕方ないだろう。
いいからプレーをつづけてくれ。
あとで連絡をいれるから」
(18)へつづく
「折れたみたい」妻がつぶやく。
「お・・・折れた!。ホントか。どこだ!」
「手首。いうことをきかないの。ぜんぜんダメ」
手首をささえた妻が、カートの後部座席へ座り込む。
手首は腫れていない。色も変わっていない。
しかし。折れたという右手は、妻の左手のうえでぐったりのびている。
「だって君、2打目を打ったじゃないか。たったいま」
「打った瞬間はっきりわかったの。かんぜんにダメだって」
「い・・・痛くないのか!」
「う~ん・・・しびれているからよくわかんない」
尻餅をついたとき、右手がとっさに身体をかばったらしい。
そういえば妻の右手が地面をたたいたのを、見たような気もする。
そうと解れば躊躇している暇はない。
呼び出しのマイクを握る。
「けが人が出ました。至急対応をお願いできますか」
「はい。場所はどこでしょうか?」
「ナンバー3のモンスター回廊。2打地点です。
斜面で滑りました。
転倒したさい、右の手首を骨折した可能性があります」
「わかりました。すぐお迎えに行きます。
そのまま前進していただいて、4ホール目のティグランドで合流しましょう」
4ホール目は打ち下ろしのショートホール。
そこでプレーヤーのカート道路と、コース整備用の作業道が交わっている。
クラブハウスからやって来る、いちばんの近道になる。
タオルを冷水で浸し、患部へ当てる。
氷をいれたミネラル水が、こんなところでやくに立つとは思わなかった。
事態に気付いて12歳年下美女と、ライバルの美女が飛んできた。
「だいじょうぶ?」
「わたしの打ったボールのせいで、怪我させちゃったみたい。
ごめんね、ママ。痛くない、大丈夫?」
12歳年下美女が、くしゃくしゃの顔で妻を覗き込む。
「だいじょうぶ。あなたは気にしないで。
斜面で足を滑らせたわたしが悪いんだから。」
「でも・・・わたしがミスしたせいで、こんなことになっちゃった。
わたしのせいでママに、痛い思いをさせちゃったのよ・・・」
「もう救助を呼んだ。
その先の交差地点へ、クラブハウスから救援がやって来る。
君たちは気にしないで、プレーをつづけてくれ」
ゴルフ場の対応は早かった。
わたしたちのカートが合流地点に着く前に、救助のカートが姿を見せた。
「ほら。救助のカートがやってきた。
君たちは気にしないで、プレーをつづけてくれ」
「だって・・・」
「みんなで病院へ行っても仕方ないだろう。
いいからプレーをつづけてくれ。
あとで連絡をいれるから」
(18)へつづく