上州の「寅」(42)3番レジ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/11/1d61f613b99bd1342cf1a747487e920a.jpg)
「突き当りを右。そのまま直進して2キロ。
左前方に建物が見えてくる。そこが目的地のホームセンター」
助手席へ座ったチャコがすらすらと指示を出す。
まるで何度もこの道を走った様な雰囲気だ。
「前にも来たことがあるの?。この島へ」
「ある。2回来た」
「2度も来たの?。なにか特別な用事でもあったのか?」
「普段はぼんやりしているくせに、ときどき鋭くなるわね、あんたも。
行けばわかる。そこに答えがある」
「どんな答えだ?」
「そのうちわかる。いいから前を見て運転してちょうだい。
あんたの運転は下手くそなんだから」
「そこまで言うなら君が運転すればいいだろう」
「可愛いレディは助手席が似合うの」
(ホントに18歳かこいつ。なんだか年上に思えてきた・・・)
寅が口の中で毒づく。
実際、寅の運転はたどたどしい。とにかく危なっかしい。
ようやく左に目的地のホームセンターが見えてきた。
寅がよたよたとブレーキを踏む。
よたよたは普通、足元が定まらず、足がもつれたように歩くさまを指す。
しかし寅が運転すると、なぜか車もよたよた動く。
おぼつかない動きのまま、ホームセンタの入り口を曲がっていく。
大汗をかきながら寅が、空いているスペースへ車を停める。
「安全運転だ寅ちゃんは。あたし、胃が痛くなってきた」
ドンとチャコが助手席のドアを閉める。
「だから言ったろ。君が運転したほうがはるかに速いって。
しょうがないだろう。
免許を取って以来、運転したのはこれで3回目。
最初が免許が来た日。
母を乗せてドライブしたら、あんたは2度とハンドルを握るなと言われた。
2回目が君たちを乗せて宇都宮まで餃子を食べにいったとき。
そして今日が記念すべき3回目だ」
「なるほど。よくわかりました。
じゃ4回目はないよ。安心しな。帰りはわたしが運転するから」
踵をかえしたチャコがスタスタと、ホームセンターへ消えていく。
寅があわててあとを追う。
こんなときでも寅は遅い。
本人は真剣に走っているのだが、周りから見れば早歩きにしか見えない。
「あれとこれと、それ」チャコの買い物ははやい。
ぱたぱた選んだあと、あっというまにカートへ積み込む。
「清算は3番レジのおばちゃんね」
「3番レジのおばちゃん?。なぜ?」
「訳がある。いいから3番レジで会計して」
「どんな訳があるんだ?」
「3番レジのおばちゃんの顔をよく見ておいてね」
「おばちゃんの顔をよく見る?。俺のタイプじゃないけど・・・」
「あんたの好みは関係ない。
ちゃんと顔を見て会計してちょうだい。あとで感想を聞きますから」
(43)へつづく
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「突き当りを右。そのまま直進して2キロ。
左前方に建物が見えてくる。そこが目的地のホームセンター」
助手席へ座ったチャコがすらすらと指示を出す。
まるで何度もこの道を走った様な雰囲気だ。
「前にも来たことがあるの?。この島へ」
「ある。2回来た」
「2度も来たの?。なにか特別な用事でもあったのか?」
「普段はぼんやりしているくせに、ときどき鋭くなるわね、あんたも。
行けばわかる。そこに答えがある」
「どんな答えだ?」
「そのうちわかる。いいから前を見て運転してちょうだい。
あんたの運転は下手くそなんだから」
「そこまで言うなら君が運転すればいいだろう」
「可愛いレディは助手席が似合うの」
(ホントに18歳かこいつ。なんだか年上に思えてきた・・・)
寅が口の中で毒づく。
実際、寅の運転はたどたどしい。とにかく危なっかしい。
ようやく左に目的地のホームセンターが見えてきた。
寅がよたよたとブレーキを踏む。
よたよたは普通、足元が定まらず、足がもつれたように歩くさまを指す。
しかし寅が運転すると、なぜか車もよたよた動く。
おぼつかない動きのまま、ホームセンタの入り口を曲がっていく。
大汗をかきながら寅が、空いているスペースへ車を停める。
「安全運転だ寅ちゃんは。あたし、胃が痛くなってきた」
ドンとチャコが助手席のドアを閉める。
「だから言ったろ。君が運転したほうがはるかに速いって。
しょうがないだろう。
免許を取って以来、運転したのはこれで3回目。
最初が免許が来た日。
母を乗せてドライブしたら、あんたは2度とハンドルを握るなと言われた。
2回目が君たちを乗せて宇都宮まで餃子を食べにいったとき。
そして今日が記念すべき3回目だ」
「なるほど。よくわかりました。
じゃ4回目はないよ。安心しな。帰りはわたしが運転するから」
踵をかえしたチャコがスタスタと、ホームセンターへ消えていく。
寅があわててあとを追う。
こんなときでも寅は遅い。
本人は真剣に走っているのだが、周りから見れば早歩きにしか見えない。
「あれとこれと、それ」チャコの買い物ははやい。
ぱたぱた選んだあと、あっというまにカートへ積み込む。
「清算は3番レジのおばちゃんね」
「3番レジのおばちゃん?。なぜ?」
「訳がある。いいから3番レジで会計して」
「どんな訳があるんだ?」
「3番レジのおばちゃんの顔をよく見ておいてね」
「おばちゃんの顔をよく見る?。俺のタイプじゃないけど・・・」
「あんたの好みは関係ない。
ちゃんと顔を見て会計してちょうだい。あとで感想を聞きますから」
(43)へつづく